【連載】平成・令和政治史(吉田健一)

第1回 竹下登内閣期(1987年11月~89年6月)~宇野内閣期(89年6月~89年8月)

吉田健一

2.自民党政治改革委員会と『自民党政治改革大綱』
当初、政治改革委員会の設置が決まった時点で、自民党内の大勢が選挙制度改革まで具体的な視野に入れていたわけではありませんでした。

自民党内に新設された「政治改革委員会」は総裁直属機関として発足しました。後藤田正晴が会長に就任し、政治資金のあり方や選挙制度の見直しなど、法改正を伴う根本的課題を議論することとなっていきます。自民党政治改革委員会の陣容が固まったのは、89年1月12日で、「平成」になってまだ5日目のことでした。

政治改革委員会の事務局長には竹下派の左藤恵元郵政相が就任し、事務局次長には、前年末に改革の具体案を党首脳に提言した「ユートピア政治研究会」の世話人であった武村正義衆院議員(安倍派)と森山真弓参院議員(河本派)が起用されることも決まりました(読売89.1.13)。

『政治改革大綱』は、政治資金の収入面と支出面の全般的な見直しを中心に、選挙制度の抜本的改革、国会議員の資産公開を含めた政治倫理の確立や党改革、国会改革など、さまざまな角度からの政治改革のプランが盛り込まれた内容となっていきます。

そして、選挙制度の改革は、中長期的の課題一本となり、衆院定数を公選法に定めた「471」以下に削減し、将来的には小選挙区比例代表制に移行すること、参院の比例代表制も抜本改革することが盛り込まれます(朝日89.5.20)。

しかし、この『政治改革大綱』は実際には、自民党内で長い時間をかけての党内で各級議員の論議を集約した結果、まとめられたというものではありませんでした。『大綱』は事実上、89年1月末から5月末までの4ヶ月程度で、後藤田を中心とする40人程度の議員による議論でまとめられました。

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吉田健一 吉田健一

1973 年京都市生まれ。2000 年立命館大学大学院政策科学研究科修士課程修了。修士(政策科学)。2004 年財団法人(現・公益財団法人)松下政経塾卒塾(第22 期生)。その後、衆議院議員秘書、シンクタンク研究員等を経て、2008 年鹿児島大学講師に就任。現在鹿児島大学学術研究院総合科学域共同学系准教授。専門は政治学。著作に『「政治改革」の研究』(法律文化社、2018 年)、『立憲民主党を問う』(花伝社、2021 年)。

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