【連載】ベトナム便り(堀庸師)

第1回 ベトナムと彫刻、日本庭園

堀 庸師

私は青春の一時期を旧ユーゴスラビアで過ごしました。その後民族紛争が起き多くの国家に分裂しました。そして幾つかの国には米軍基地が置かれました。彼らは独立を勝ち取ったと言っていますが、果たして本当にそうなのでしょうか。何か裏工作があったように感じますが、これが民族の自決と言うには程遠いでしょう。

ベトナムもユーゴスラビアも多くの共通点がありました。両国とも多民族国家の小国で、歴史上周りの大国から多くの侵略を受け、民族の独立の為に多くの闘いと犠牲を強いられました。ユーゴスラビアはパルチザン闘争で、旧ソ連以外では唯一自国の力でナチスを追い出した国でした。街の通りにはベトナム同様に多くの英雄の名前が刻まれました。人々は勝ち取った独立と自由を誇りに思っていました。ベトナムでも旧ユーゴスラビアでも、殆どのアセアンの国々でも、多くの人々は独立と自由の尊さを知っているはずなのに、まだそれを十分に勝ち得ていない国もあります。

紛争前のユーゴスラビアには、八十いくつものいろいろな芸術分野のシンポジウムが開かれていて、戦争中も多くが継続されました。水も電気も無いボスニアヘルツェゴビナのサラエボでもシンポジウムが開催され、それだけでなくオーケストラやアートの展覧会が開催されたと聞きました。それらは、国家間及び民族間、そして個人同士がいがみ争うのではなく、自由な独立した芸術家達が集い創作し、市民とも交流することで、友好と平和を願いアピールする場だったと言えると思います。

独立と自由は国家間及び民族間、集団間、個人間において大事なものだと思います。互いに独立し、尊重し、平等な立場で話し合い、個々や共通の利益、理想を創り上げていく土台だと思います。そしてここで日本にはなぜ米軍基地があるのか、どうしても考えなければならないと思います。日本は本当に独立していて、そして自由にものが言える国家と言えるのでしょうか。特に多くの米軍基地が置かれている沖縄の人々は、独立と自由を奪われ、土地を奪われ、虐げられているとは言えるのではないでしょうか。

今のベトナムでは、まだ多くの矛盾があります。矛盾は今後克服されていかなければならないでしょう。でも独立した自由な立場で国造りを進める事ができるこの国の人々は、幸せと言えると思います。そして外国人でありながら彫刻シンポジウムの開催を呼びかけ、参加し、日本庭園を造れる私自身も幸せだと思っています。

私はまだ沖縄には行った事はありませんが、沖縄の自然や文化や歴史にとても興味を持ち、親しみを感じてきました。そして将来、基地の無い沖縄で作品を創ってみたいとの願いが湧いてきました。

Shisa and Hibiscus

 

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堀 庸師 堀 庸師

1960年生まれ 1982年 金沢美術大学彫刻学科卒業 1989年 ベオグラード大学純粋美術学部彫刻科修士課程卒業 日本、ユーゴスラビア、ベトナムやその他各国の展覧会やシンポジウムに参加し個展も開催する。 2008年ベトナム政府から文化勲章

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