世界を裏から見てみよう第92回: 山本五十六はルーズベルトに騙された?

マッド・アマノ

・「オレンジ計画」とは

「オレンジ計画」とは、1920年代から30年代において立案された、日本との戦争へ対処するためのアメリカ海軍の戦争計画だ。真珠湾攻撃はルーズベルト大統領のホワイトハウスが事前にキャッチしていたといわれている。日本サイドの暗号はすべてお見通しだったのだ。

ハワイ・オアフ島の基地には旧式のポンコツ軍艦を停泊させ、肝心の空母などはサンディエゴやほかの海域の基地に避難していたともいわれている。

さて「オレンジ計画」は、その中身も国を色分けで表現し、イギリスが「赤」、カナダが「クリムゾン」、インドが「ルビー」、オーストラリアが「スカーレット」、ニュージーランドが「ガーネット」と、いずれも赤系の色。このほか、ドイツとの戦争の「ブラック計画」、中国での戦争の「イエロー計画」などがある。これらの計画は実戦用シミュレーションというより、将兵の訓練用だった。戦艦から航空機へと戦争の主役が変わり、役に立たなくなったというが、アメリカが大戦前から日本を仮想敵国と想定していたことは間違いない。

真珠湾攻撃を扱ったハリウッド映画「トラ・トラ・トラ!」が公開されたのは、戦後25年の1970年。アメリカ人の監督のほかに深作欣二・舛田利雄の2人の日本人監督が名を連ねた。出演俳優はジョセフ・コットン、そして山本五十六役の山村聰だ。香取よりも実際の山本に近い。

1939年9月、米国の日本に対する経済封鎖に対抗し、陸相・東条英機はアメリカへの攻撃を近衛文麿首相に提言するところから映画は始まる。しかし翌年1月、米軍は日本の暗号無電を解読。「トラ・トラ・トラ!」とは「ワレ奇襲ニ成功セリ」という意味だが、あくまで奇襲を開始したということであり、攻撃が成功したというわけではない。いずれにしてもこの時、すでに日本は情報戦に負けていた。

さて、「倫敦ノ山本五十六」はこのことに触れているだろうか? 当時の近衛文麿首相から「この戦争に勝ち目はあるのか?」と問われた山本は「ぜひやれと言われれば半年や1年の間は暴れてご覧に入れるが、2年、3年となれば(勝利できるか)全く確信が持てない」と答えている。この発言は戦後、検証されたとは言い難い。日本国の命運をかけた言葉として山本の責任を追及すべきだった。生きていればA級戦犯として、巣鴨プリズンで絞首刑となったはず。NHKは続編として「A級戦犯ノ山本五十六」を制作すべきではないだろうか?

ところで、真珠湾攻撃とは何だったのか。米側の主な損害は、戦艦5隻が沈没したほか、戦艦4隻、巡洋艦・駆逐艦各3隻が損傷、航空機188機が破壊されたという。人的被害は戦死・行方不明者が2300人を超えたが、問題なのは、日本側が主要目標としていた米空母艦隊はハワイにおらず、アメリカの海軍戦力に大きな影響はなかったことだ。

・戦艦大和は無駄死にだった

そもそも、真珠湾攻撃から80年といっても、山本五十六という海軍の〝英雄〟に今スポットを当てることにどれだけの意味があるのだろうか。

巨艦巨砲時代の名残ともいえる戦艦大和は1945年4月7日、沖縄特攻作戦に向かう途上、アメリカの艦載機から完膚なきまでに攻撃され、あえなく撃沈された。乗員3332名のうち3056名が命を落とした。

総工費は当時の国家予算の6%、1億3780万円。7年がかけられ、竣工は真珠湾攻撃の8日後の12月16日。この時すでに巨艦巨砲の時代は終わりを告げていた。つまり7年前は空母型戦闘の時代を読めなかったのか。財閥と軍需産業の言いなりだったのではないか。

(月刊「紙の爆弾」2022年2月号より)

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日本では数少ないパロディスト(風刺アーティスト)の一人。小泉政権の自民党(2005年参議院選)ポスターを茶化したことに対して安倍晋三幹事長(当時)から内容証明付きの「通告書」が送付され、恫喝を受けた。以後、安倍政権の言論弾圧は目に余るものがあることは周知の通り。風刺による権力批判の手を緩めずパロディの毒饅頭を作り続ける意志は固い。

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