【特集】参議院選挙と改憲問題を問う

総選挙〝反共キャンペーン〞の裏を読む 「共産党アレルギー」とは何か?

足立昌勝

・「反共キャンペーン」が奏功した背景

枝野氏は、今回の選挙を政権交代選挙と位置づけ、選挙中さかんに「政権交代」を叫んだ。志位氏も同じである。

しかし、反共キャンペーンを前に、両者が「政権交代」を叫べば叫ぶほど、国民は不安になったのではないか。自公側は、もし政権交代が実現すれば、立共合意にあるように、立民主体の政権に共産が閣外協力するという「容共政権」が日本で初めて誕生する、とも強調していた。

繰り返すが、なぜ共産党の政権協力が悪いことなのか、誰もその理由を述べていない。にもかかわらず、反共キャンペーンがここまで奏功したのはなぜなのか。

多くの国民が“共産党政権”のイメージとして、中国や朝鮮民主主義人民共和国の例を思い浮かべるのであろう。それらの国では、基本的人権が保障されず、強力な国家権力に牛耳られ、虐げられている人々が存在している・・・・・・とのイメージだ。また、かつてのソビエト連邦も想起されるのかもしれない。

このような“共産党像”をイメージしていたとするならば、国民の中に共産党アレルギーが蔓延してもおかしくない。

特に、地方や農村では、共産党アレルギーは都会以上に強烈である。都会では、社共共闘が実現し、そのもとで知事等を誕生させてきた経験がある。東京における美濃部亮吉都知事(1967〜69年)、京都における蜷川虎三府知事(1950〜78年)がその代表だ。それに対し、地方や農村の多くでは、現在でも自民党の圧倒的優位の下で保守王国が形成され、他党の追随を許さない側面がある。

このような現象を、そこに住む有権者の意識の問題にすることは簡単である。しかし、徳川時代における藩主や、明治維新の廃藩置県下における旧藩主の知事としての採用などの歴史を見れば、保守王国は、支配層が形成してきたことがわかる。

その下で生まれた、先祖代々の保守政権への依存体質は、今後も容易に変わることはないだろう。

とくに、農村の大部分は自作農であり、先祖代々の農地を所有している。しかも、自民党政権下では、「農地法」によって、産業資本から農民の農地が厳格に守られている。

そんな保守政権の下で住民に植え付けられた「共産党は怖い政党である」というイメージは、簡単に払しょくできるものではない。
植え付けられた共産党アレルギーは、相も変わらず続くことになり、共産党が政権に加わることは絶対に認められない出来事と、その地域の有権者には映るのであろう。

今回の選挙では、自公を中心とした反共キャンペーンにより、地方や農村における有権者が持つ共産党アレルギーが目を覚まし、自公政権に多少、批判的な人でも、立民から維新へと投票先を変えたのではないだろうか。

だとすれば、日本に成熟した民主主義を確立するためには、地方や農村から共産党アレルギーを払しょくする必要があるだろう。

日本の地方や農村における保守化現象と共産党アレルギーの解明は、現代的視点からなされなければならない。

立憲民主党は衆院選での敗北の責任をとり辞任した枝野氏に代わって、泉健太代表が誕生した。泉代表は「政策立案政党」を掲げ、「国民の思い、国民の願いを政策提案の形にさせて」いくという。

しかし、忘れてならないことは、「立憲民主党は野党である」ということだ。すなわち、政府案への徹底した批判の中からこそ、新たな政策は誕生するのである。「対決するところは対決する」「批判するところは批判する」という基本姿勢こそが大切であり、その立場からの意識改革を目指すべきである。

(月刊「紙の爆弾」2022年2月号より)

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足立昌勝 足立昌勝

「ブッ飛ばせ!共謀罪」百人委員会代表。救援連絡センター代表。法学者。関東学院大学名誉教授。専攻は近代刑法成立史。

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