【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

辺野古の海を愛する船長として

金井創

いま奄美大島から与那国島にいたる南西諸島において、自衛隊ミサイル基地建設が急ピッチで進められています。沖縄県内では一足早く建設された与那国島の警備隊基地のほかに宮古島、石垣島でミサイル基地が作られつつあります。

沖縄は在日米軍基地が集中し、それだけでも様々な問題が起こっているのに、加えて自衛隊基地まで新設されてますます軍事要塞化されていくようで不安が高まります。

Image of the fence of Kadena air base in Okinawa, Japan

 

このような自衛隊基地増強と、自衛隊が米軍と一体化していく事態は連動しています。2018年には陸上自衛隊の中に「水陸機動団」という部隊が創設されました。これは自衛隊版海兵隊ともいうべき存在で、「敵地」に乗り込んで戦闘する部隊です。この部隊は現在米海兵隊が使用しているのと同じ水陸両用装甲車AAV7をすでに53輌購入して配備しています。

Los Angeles, United States – August 10, 2022: Detail of an 8×8 amphibious military tank

 

そして米軍と一体になって離島奪還訓練も行っています。さらにはいま埋め立てが進んでいる辺野古の海兵隊基地キャンプ・シュワブにこの水陸機動団の一部隊が常駐するという計画まで明らかになりました。

今までも米軍の訓練地で自衛隊が米軍と共同訓練をするのは日常的になされていますが、米軍基地に自衛隊が常駐するというのは前例のないことです。

離島奪還訓練にしても政府の説明は尖閣諸島を想定しているなどと説明しますが、実際は宮古島、石垣島に「敵」が上陸占領した場合、それをどのような作戦で奪い返すかが訓練の目的です。

その際に、それぞれの島々に暮らす約5万人をどのように住民避難をさせるのかなど、任務にないことまで明らかになっています。住民が住む島々がそっくり戦場になってしまうのです。住民を巻き込んで地上戦が繰り広げられた沖縄戦の再来です。

沖縄戦の教訓は「基地のある所に戦争がやってくる」、「戦争になったら軍隊は住民を守らない」ということでした。それはもう忘れられてしまったのでしょうか。基地があれば守ってもらえて安心どころか、戦争を呼び込んでしまうのが軍事基地です。それがいま着々と宮古島・石垣島に作られていくのですから不安でなりません。

沖縄本島でもうるま市勝連にミサイル部隊配備、南西諸島全体の司令部設置が計画されており、那覇空港にある航空自衛隊はその規模が倍増されました。

恐ろしいのはこうした基地に配備されるのが自衛隊のミサイルだけではないということです。アメリカが開発した新型の中距離ミサイルが2023年から配備され始める計画もあります。

これは射程が500km~5,000kmというもので中国本土まで届いてしまいます。しかも簡単に核弾頭に変更できるというのです。沖縄には1960年代、中国本土に照準を定めていたメースBという中距離核ミサイルが配備され、1962年のキューバ危機に際しては発射寸前まで行ってしまいました。その恐怖が再び襲ってきます。

2022年6月21~23日、オーストリアのウィーンで核兵器禁止条約の第1回締約国会議が開かれました。この条約には世界の65か国が批准し、85か国が署名しています。ドイツやオランダなど日本と同じように米国の「核の傘」のもとにある国も会議にはオブザーバー参加をしています。

ところが世界で唯一の被爆国である日本はこの条約にも賛成せず、会議にオブザーバー参加すらしませんでした。核が核を抑止できるという「核抑止論」はもはや成り立たないという世界のすう勢に対して、日本は米国との核共有、敵基地へのミサイル先制攻撃などの声が政府内で出てきて、世界的な核廃絶の動きに真っ向から対立する姿勢を示しています。

日本は世界の先頭に立って核廃絶に向けてリーダーシップを発揮すべきだと思うのですが、現実はその真逆であって残念でなりません。もはや政府に任せてはおけません。市民が中心になって核廃絶に向けて声を上げ、世界の人々と手をつなぎあっていかねばならないときだと思います。

最近、たまたまの巡り合わせでしたが、世界的に発信している人、そして地元中の地元である辺野古出身の人が船に乗って、それぞれの仕方で辺野古のことを広めていってくれる機会に遭遇し、辺野古の取り組みの広がりと深まりを実感したものです。

現場にいて、現場のことだけ見ていますと、いつの間にか私自身の視野が狭くなってしまうこともわかりました。目の前に見えていることがすべてだと思ってしまうのです。それはあまり希望を与えてくれる光景ではありません。

どんなに頑張っても工事は進んでいきます。1週間も工事が止まるのは台風が来る時ぐらいです。いつの間にか「台風頼み」もしてしまいます。被害が出ない程度に工事が止まる台風がどんどん来てほしいと願うようになっているのです。

しかし、こうして足を運び、自分の目で現場を見て沖縄県外に、世界に発信してくれる人がいるという事実は狭くなっていた視野に喝を入れるものでした。私たちは孤立していないという励ましです。

孤立していないどころか、こんなに多くの方々が関心を寄せて辺野古に目を向けて下さっているのだということがどれだけ励みとなり、勇気と希望を与えてくれるものなのか。いまそのありがたさをしみじみ実感しています。

Nago, Okinawa, Japan downtown skyline.

 

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金井創 金井創

辺野古の抗議船・「不屈」船長。1954年北海道岩内町に生まれる、1973年道立札幌西高等学校卒業、1978年早稲田大学政治経済学部卒業、1979年東京神学大学3年次編入学、1983年東京神学大学大学院修士課程修了、1983年~1996年日本キリスト教団 富士見町教会副牧師、1996~2006年明治学院学院牧師・明治学院教会牧師、2006年~現在 日本キリスト教団佐敷教会牧師、著書『生き方としてのキリスト教』(1998年)日本キリスト教団出版局、『辺野古の抗議船・不屈からの便り』(2019年)みなも書房

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