【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

岡田充氏講演録まとめ(その7):台湾有事をめぐる日本の対応

宮城恵美子

3.問われる「名誉白人」アイデンティティ

問われるのは日本の対アジア・ポジションだ。日本は外交と安保政策で米政府方針に忠実に従ってきた。日本の対米従属姿勢は、多くのアジア諸国の支持を得られないだろう。

岸田文雄首相は、経済衰退とともに影響力が薄れている日本の現状を無視して、ことあるごとに、「日本はアジアで唯一のG7メンバー」と強調している。アジアを見下す視線は、日本の近代化以降、一切変わっていません。

日本のアイデンティティが「G7」メンバーという「名誉白人」的虚像であるならば、日本の現実は「中国に次ぐ二番手」に過ぎないということになる。この自己認識と他者認識とのギャップを埋めなければ、アジアでの対中抑止や包囲戦略は成功しないであろう。成長著しいアジアの中で、日本再生へ向けたチャンスも逃すだろう。

Map of Japan. Detail from the World Atlas.

 

4.我々の選択

戦争を前提にした「有事シナリオ」の策定は、まさに外交敗北を意味する。2020年3月、新型コロナ・パンデミックで日本中が打撃を受けている最中、同年4月に予定されていた中国の習近平国家主席の訪日はコロナを理由に延期された。

習国家主席の来日が延期されて以降、対中外交は一切手つかずのままとなった。有事シナリオを作るだけではだめだ。中国の軍事力強化の意図と我々の意図を擦り合わせ、できるだけ可能な限り共通認識を得ることこそが肝要である。中国の脅威を煽り、軍事抑止するだけでは軍拡競争を招くのを意味する「安保のジレンマ」に陥る。

安全保障とは共通の敵を作って包囲することではない。現実にアジアと世界で圧倒的な市場と資金力を持つ中国を包囲することなど不可能である。外交努力から中国と共存し、地域安定を確立する道を探ることこそ我々の選択の道だと思う。

具体的には、第1に、中国敵視を停止すること。第2に、「一つの中国」政策を再確認をすること。第3に、首脳相互訪問の再開と幅広い安全保障対話を進めていくことが重要である。これが対中外交によって獲得する平和の道の第一歩だと思う。これなくして戦争シナリオが独り歩きすることを止めることはできないと思う。

【その7含む全体的な宮城の感想】

「平和はそこに有るのではなく作るもの」。コスタリカのカレン・オルセン元大統領夫人に面会した時にうかがった言葉である。誠に真実だ。

連日、辺野古新基地建設強行、琉球弧全体を軍事ミサイルで要塞化する基地建設ラッシュ、自衛隊ミサイル部隊大量配備と進行している。宮古、石垣、与那国で住民は戦争を起こす政府と闘っているが、戦争反対の声を潰そうと公明党や戦争好きな自民党を取り込んで政権の横暴が続いている。

日本政府は安保関連三文書を国会で審議せずに閣議決定した。敵基地攻撃能力として、トマホーク(1機約3億円らしい)を500機購入するという。イギリスは60数機と言われているトマホークを日本はその約10倍近くも保有するそうだ。軍事費予算43兆円については、うち1兆円を国民からの税金徴収で賄うという案と、43兆円は国債を発行する案がある。戦前、国家予算を超える戦時国債によって軍事力を増強した。

誰が儲かるか。米国などのロッキー社を代表とする軍需産業や金融資本である。米国を中心とする資本家の為に、日本国民すべてを枯淡の苦しみの中に投げ入れる。そして武器であふれる日本に変えようとしている。国際的な霊感商法だ。統一教会では壷1つ数百万円、本1冊数千万円という金を日本人から献金させていた。今、日本全体が兵器の霊感商法の真っただ中にあることに気付いてほしいと思う。

「子供の貧困」と言われて久しく、庶民の暮らしをこれ以上困窮させてはならない。そもそも「台湾有事」論は、2021年3月の米議会で「6年以内」に中国が危ないと、根拠無しに米将校が述べたことにある。2027年は人民解放軍100周年にあたる。記念だから武力行使する理由にはならない。台湾企業は中国で数百社も活動しており、経済を止める理由はない。

また、2027年頃に経済規模で中国が米国を上回ると言われている。米の経済力1位の地位が危うくなるから、その前に中国を叩いて弱体化しておこうという考え方だ。私も同感である。米の身勝手な欲望から「中国脅威」を煽り、日本を戦争の主役に仕立てて、米覇権を維持する。しかも米国の若者の血は流さず、金は日本が持つ。

岸田政権は米国作「戦争シナリオ」の脚本に乗って走っている。戦場は琉球列島で沖縄戦の再来になる。再び日中戦争を日本によって引き起こすべきではない。米の霊感商法の洗脳から脱して平和を創っていこうではないか。

 

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宮城恵美子 宮城恵美子

独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。

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