【連載】沖縄の戦場化を断固拒否する(山城博治)

沖縄・再びの戦場化を拒否する運動の構築を

山城博治

・沖縄・再びの戦場化を拒否する運動の構築を

1.ロシア軍によるウクライナ侵攻の悲劇と沖縄

2月24日に開始されたロシアのウクライナ侵攻から1ヶ月が経過しますが、軍事侵攻による市民の悲劇を目の当たりにするときあらためて戦争は絶対起こしてはならない、戦場にされてはならないとの思いが胸を衝きます。ロシアの軍事侵攻はどのような背景があるにせよ侵略戦争であり、即座に停戦し撤退されるべきものです。しかし他方ロシアが世界中から沸き起こる批判を想定しないはずもなくあえて戦争に踏みだしたのは何故か、ことの真相を可能な限り明らかにしてウクライナの状況と酷似する台湾や沖縄で戦争が勃発することを止めていかなくてはなりません。

米国を中心とするNATO諸国とロシアの対立の狭間に立たされたウクライナの悲劇は、日米と中国の狭間に立つ台湾そして沖縄・「南西」諸島の明日の姿と言えなくもありません。現に日本政府は自らそのことを公言しています。政府から「戦場になる」と名指しされた沖縄・「南西」諸島に恐怖が走っています。国内で戦争の脅威が迫れば、本来なら政府は必死になって戦争を惹起させないために最善を尽くし、相手国とされる国と強固な外交関係を樹立する必要があるはずですが、東京から伝えられる言動は全く逆です。ひたすら「有事」への備えを怠るな、国会であるいはマスコミを通じて発信される政府のメッセージはそのことに尽きます。

戦場とされる島々の恐怖は政府閣僚・自民党の政治家の眼中にはないかの如しです。否むしろ、政府や一部政治家にとっては好機到来と言わんばかり嬉々として軍拡に血眼になっていると思えてなりません。岸田文雄首相は「敵基地攻撃能力の保有」「軍事費の大幅増」に言及したのみならず、現在南西諸島に配備中(計画)の射程百数十kmの対艦・対空ミサイルを直接中国本土に届く、射程1,000㎞以上の長距離ミサイルに改造することを表明しました。安倍晋三元首相や高市早苗自民党政調会長は米国の核兵器の日本配備・日米の「共同管理」の検討を表明しています。また安倍氏は憲法の存在を「空想」とののしり憲法の改悪の主張を一段と強めています。

プーチン大統領が「NATOの東方拡大」阻止と「ウクライナの中立化」を要求して軍事侵攻に踏み切ったのは、1991年のソ連邦の崩壊後旧ワルシャワ条約機構構成国家が続々とNATO入りを果たし隣国ウクライナまでもその動きを強めていることへの焦燥があったと報道解説されています。またロシア軍が原発施設を軍事攻撃している異常な映像が時折報じられていますが、ロシアがウクライナの核保有を恐れての攻撃と考えられなくもありません。

プーチン氏はウクライナのNATO加盟と一層の軍事強化そして核兵器の保有を恐れている、この間の報道経緯から分かることです。ひるがえって、今日、日米両政府が中国に対して行っていることはまさにそのことではないか。プーチン氏が恐れ先制攻撃に踏み出したように、日米両政府が中国包囲網のために張り巡らす軍事基地、長距離ミサイル配備やあるいはそれに止まらない核兵器の配備が何をもたらすか、ロシアのウクライナ侵攻はそのことを教えています。熟考されなければなりません。

しかし政府にその片鱗すら感じられません。特に腹立たしくてならないのは、岸田首相が表明した「敵基地攻撃能力保有」に基づく、中国本土にまで届く長距離ミサイルの配備計画や安倍氏や高市自民党政調会長が言う核兵器の持ち込み配備先が、これまでの経緯からそれが沖縄・「南西」諸島であることは誰の目にも明らかなことです。長距離ミサイルや核兵器までが飛び交うそんな想像すらできない悲劇の戦場をなぜ私たちが押し付けられなくてはならないのか。怒りが沸き立ちます。断じてNOです。政府・自民党の暴走を止めなくてはなりません。

2.この恐怖の亡国の防衛論はどこから来たのか

①デービッドソン元米インド太平洋軍司令官の爆弾証言の波紋

政府に沖縄に寄り添う思いがないのは今さら言うまでもないことですが、しかし政府が再び沖縄を戦場にしようと企てるなら黙ってはいられません。沖縄県民総立ち上がりとなって政府に対峙していかなくてはなりませんが、これからの沖縄の反戦平和運動を考える前に、何故、今にも戦争が勃発しそうな状況になったのかもう少し考えてみたいと思います。

昨年3月9日、米国上院軍事委員会で米インド太平洋軍フィリップ・デービッドソン司令官(当時)が「中国は6年以内に台湾に侵攻する」と爆弾証言を行ったのを機に、日米首脳会談や外務・防衛担当大臣会議(2プラス2)が相次いで開催され、「台湾有事」「中国脅威論」が拡散されてきました。

政府レベルでは日米軍事同盟体制の一段の強化が、また国民の間では過去最悪とも言える中国嫌悪感情が広がっています。何らの根拠も示さない一軍人の戯言のような証言がここまで影響力を持つ背景に、バイデン政権が泥沼の中東軍事介入から手を引いて新たな海外の脅威を中国に求めた、そのことを現地司令官の口から語らしめて世界を恐怖に追い込み、東アジア諸国とりわけ日本をその包囲網の陣形に取り込む、そのような計略が秘められていたと考えられます。現存する世界のありようを一夜にして造り変える恐るべき陰謀です。

今年は沖縄の施政権返還50年の節目の年でもありますが、日中国交回復50年の記念すべき年でもあります。この年に日本が中国との関係を強化していくことを恐れたバイデン政権が日本引きはがしに用いた巧妙な仕掛けが今回のデービッドソン証言だと言って過言ではないと思います。

司令官証言直後に行われた2021年4月16日のバイデン・菅会談以降、沖縄を含む南西諸島全域での自衛隊基地建設とミサイル網の配備が通常では考えられないスピードで進められています。それを後押しするように政府閣僚、有力政治家、自衛隊幹部OBらのとんでもない発言が繰り出されているのは先述したとおりです。米国の言うことなら無条件に唯々諾々と付き従う醜悪な保守・自民党政治の典型のような流れであり、しかもこれ以上この道を突き進んだら取り返しのつかない事態になることは明らかです。戦場の標的に見立てられた沖縄はその脅威から逃れるために声を上げていかなくてはなりません。

 

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山城博治 山城博治

1952年具志川市(現うるま市)生まれ。2004年沖縄平和運動センター事務局長就任。その後同議長、昨年9月から顧問となり現在にいたる。今年1月に設立された「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」共同代表就任。沖縄を「南西」諸島を戦場にさせないために全県全国を駆けまわって、政府の無謀を止めるため訴えを続けている。

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