【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
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メールマガジン第56号:時評/平和を祈る二つの詩から 「武器を置く」二つの詩の間から、若い詩人に宿る強い魂「Unarmed」に感銘

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ピュアな感性と強い魂を持つ若い詩人の誕生を感じさせる詩、それが「Unarmed」だ。興味を持ったのは、故郷の宮古島からの便りだった。今年の慰霊の日に宮古島市で開かれた「戦没者追悼式」で西辺中学3年生の上原美晴さんが自作の平和の詩「Unarmed(アンアームド・非武装」を朗読したとの新聞記事だ。記事からは、誹謗中傷のバッシングから立ち上がってきた者の「強さ」を感じた。

詩は「偽善者だ/おまえが戦争に行けばいい/おまえが死んでしまえばいい/おまえが/おまえが」から始まる。上原さんが昨年、浴びせられた言葉の一部だという。

昨年の慰霊の日に、上原さんは摩文仁で開かれた「沖縄全戦没者追悼式」で平和の詩「みるく世の謳」を朗読した。動画も見たが、落ち着いた朗読でよかった。詩は人々を感動させた。その後、多くの称賛と拍手を得たが、一方では誹謗や中傷を受け、苦しんできた。

詩は次のように続く。「私の心を刺したのは/ナイフのような言葉の数々/悔しくて悲しくて痛くて痛くて」「この痛みをどう解らせてやろう/私は悪くない/あいつが/あいつらが/そんなことを考えた」。

言葉が突き刺さる。どこかで他者の所為にしたい。他へ転換したい。人はどこかで思う。「私は悪くない」と。「おまえが/あいつが」「そんな気持ちが/争いの種になるんだろうか」「そんなどす黒い雨が」「種を育ててしまうのだろうか」。

思いがけない攻撃の言葉に、「どす黒い雨」が襲いかかる。だが。彼女は負けはしない。さまざまな感情が渦巻く長い沈黙の後、力強く復活する。日本復帰50年を迎えた今年、インタビューでのおばあの言葉が救いになる。「どちらも/武器を置きなさい」。むごく辛い沖縄戦を、絶望を体験したであろう、おばあの平和を願う言葉が耳に焼き付いたという。痛みや悔しさ、悲しみを超えた境地が「武器を置く」に集約されたのだろう。

「私は弱い/沢山傷ついて 傷つけようと思った/何度も逃げて/立ち向かうことを放棄した/それでも/武器を置きたい/傷ついたから/人の痛みが分かるから/何リットルも/涙を流したから/武器を置くことを/私の強さと叫びたい」と紡ぎだす。

さらには、戦争を起こした人類へ宣言する。「人間の弱さが起こした過ち/相手を傷つけることでしか/自分を守れなかった/弱い私達の過去/だから武器を置こう」「『命どぅ宝』と言いきれる勇気を/私達の強さと叫びたい」と。詩人の大城貞俊氏は「Unarmed」を「非武装」ではなく、「武器を置く」と訳している。詩の内容からすれば、それは正しい訳だと納得できる。

便りはもう一つある。それはめでたいことだ。上原さんの詩「みるく世の謳」は、第1回ひろしま国際平和文化祭で「ひろしまアワード」音楽部門国内の部を受賞した記事だ。「どす黒い雨」の中を抜け出した、満面の笑みの写真があった(2022年9月7日付沖縄タイムスより転載)。

文責:おおしろ建(俳人)

(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン第56号」より転載)

 

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