【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

土地規制法と自衛隊の反戦デモ敵視 土地規制法廃止アクションネットワーク事務局   谷山博史さん

谷山博史

「阻害行為」の事例にみる市民運動への政府の対応

私が所属する土地規制法廃止アクションネットワーク事務局は土地規制法廃止に向けた様々な活動を行っている。今年2月22日には3回目の政府ヒアリングを公開で実施した。

ヒアリングに先立って事務局が独自に入手した政府内部文書に、国会審議でも明らかされなかった規制対象の「阻害行為」の例示がなされていたためである。特に問題視したのは、「高所からの継続的な監視・盗聴等」という例示である。

これが施行時に確定されれば市民による基地や原発の監視活動が対象となる可能性がある。嘉手納基地爆音訴訟や普天間基地爆音訴訟の原告団、航空機からの落下物から子どもたちを守るために継続的に基地監視をしている宜野湾市の母親たち、辺野古新基地建設の反対運動の先頭にたってきたヘリ基地反対協議会も規制の対象になりうる。

しかも2月6日の共同通信と読売新聞は、全国の約200か所を「特別注視区域」に指定する方向で検討に入ったという政府関係者の情報を報道している。「特別注視区域」が200か所であれば「注視区域」は優に1000か所を超える可能性がある。沖縄ではほぼ全島、本土でもかなり広範な地域の基地や原発の監視活動、平和運動が調査・監視と規制の対象になる恐れがある。

基地による被害から自分たちの命と生活を守るための市民による基地監視活動や基地に象徴される軍事化に反対する市民運動をなぜここまで監視・規制しようとするのか。そこには中国との戦争に備えて加速する「南西諸島」のミサイル基地化と、自衛隊のもつ軍隊特有の市民運動観がある。

 

背景としてのアメリカの中国封じ込め戦略と自衛隊の南西シフト

琉球列島や奄美大島、馬毛島において現在ミサイル基地建設を初めとする軍事要塞化が急ピッチで進められていることはすでにご存じの方は多いと思う。2016年には与那国島に陸自の沿岸監視隊と対空レーダーが配備され、2019年には宮古島と奄美大島にミサイル部隊と警備部隊が配備された。

石垣島にもミサイル部隊と警備部隊配備のための造成工事が2019年から始まっている。種子島西之表市の馬毛島に島嶼部侵攻対処を想定した訓練施設と兵站・起動展開拠点が計画されている。さらに沖縄本島の勝連分屯地には沖縄本島初のミサイル部隊が配備されるとともに沖縄でのミサイル部隊の本部が設置されることが決まっている。

これらはアメリカの「台湾有事」を想定した「海洋拒否戦略」、すなわち九州南部から「南西諸島」、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線の内側に中国を封じ込めたうえで、翻って攻撃部隊を第一列島線内に展開する戦略と連動して策定され、実行されている。

すべての自衛隊基地は自衛隊と米軍の共同作戦計画に基づいて米軍と共同使用される。このような大規模な軍事要塞化は住民の激しい反対が予想されていたし、現に住民の抗議・阻止活動は激しさを増している。またひとたび戦争が始まれば住民の反対を完璧なまでに封じなければならない。そのために日頃の調査・監視活動が必要となる。

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谷山博史 谷山博史

土地規制法廃止アクションネットワーク事務局、日本国際ボランティアセンター (JVC)前代表/現顧問、市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCiS)コーディネーター)、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-Net)顧問著書に「『積極的平和主義』は紛争地に何をもたらすか?!」(編著、合同出版、2015年)、「非戦・対話・NGO」(編著、新評論、2017年)、「平和学から世界を見る」(共著、成文堂、2020年)など多数。

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