【連載】コロナ騒ぎ謎解き物語(寺島隆吉)

第8回 今だけ、金だけ、自分だけ―1人がみんなのために、みんなが1人のために―

寺島隆吉

研究所の一員である岩田さん(仮名)から、船瀬俊介『コロナとワクチン』 (共栄書房、2021)という本を読んだ感想が届き、最後は次のように結ばれていました。

「研究所のどなたか、もし船瀬俊介の本を読んだことがある方がおみえになりましたら、彼をどのように評価すべきか教えてもらえると嬉しいです」。

私はすでにこの本を読んでいたのですが、山積する仕事に精力を奪われ、なかなかこの要請に応えることが出来ませんでした。

船瀬俊介という人物の本を意識して読み始めたのは『3日食べなきゃ7割治る! 病院で殺される前に』 (三五館、2014)という本がきっかけでした。

というのは私が過労で体調を崩し、かかりつけの病院で薬をもらっても改善せず、たまたま病院の待合室でみていた新聞の広告欄に、この本の宣伝が載っていたので、買ってみる気になったからです。

以前から「断食」という治療法には興味があったのですが、実際にやってみると本当に効果がありました。 そこで船瀬俊介という人物の本を次々と読んでみるということが続きました。

そして後になって気づいたのは、かなり昔に買った本『買ってはいけない』 (週刊金曜日、1999)の執筆者のひとりが船瀬俊介だったということです。

ウィキペディアで調べると、氏は「九州大学理学部を中退し、早稲田大学第一文学部社会学科卒業。大学在学中より生協活動に携わる。 日本消費者連盟の編集者を経て、1986年独立」とありますから、 『買ってはいけない』を書くことになった理由も、なるほどと納得しました。

その後に読んだ『和食の底力番茶・ゴマ・海苔・味噌』 (花伝社、2014) 、 『 「健康茶」すごい薬効! もうクスリもいらない医者もいらない』 (ヒカルランド、2017)なども、生協活動のなかで氏が調査研究した成果が充分に盛り込まれた力作だと思いました。

とくに後者は、 『船瀬俊介の民間茶薬効事典』 (農文協、1998)の完全復刻改訂版で、東城百合子『家庭で出来る自然療法』で、東城百合子『家庭で出来る自然療法』 (あなたと健康社、1978)と共に、私たち夫婦が家庭で薬草茶・薬木茶を作るときの大きな刺激になりました。

とはいえ最近の氏の著作は粗製濫造が多くなってきたように思います。 いまコロナ騒ぎが世界を席巻していますから、そのための本を一刻も早く出版したいという思いからでしょうが、インターネットに載っていた他人のブログから「コピー&ペースト」して、即席で創り上げた本が続出するようになってきました。

先述の岩田さんから書評が届いた『コロナとワクチン』も、その一冊だと思います。

コロナウイルスとワクチンに対する叙述には鋭い指摘が随所に盛り込まれていて、岩田さんが「印象に残った部分」として引用しているところ(後掲「資料」 )は、その典型例だと思います。 しかし、現在のコロナ騒ぎは全て国際的秘密結社「イルミナティ」のしわざであり、この騒ぎの目的は世界を共産化することにあるというあたりになると、頭は?? だらけになります。

こういう科学的根拠に欠けた主張を読まされると、せっかく前半とになり、本書の価値は半減してしまいます。 船瀬俊介という人物の評価も大きく低下すで述べられていたコロナウイルスとワクチンに関する鋭い指摘も、信用性に欠けるものとして読者の目に映ることになり、本書の価値は半減してしまいます。 船瀬俊介という人物の評価も大きく低下することになるでしょう。

そもそも現在のコロナ騒ぎの元凶はWHOのパンデミック宣言に起因していますし、WHOを裏で動かしているのは、ビル・ゲイツ財団であったり、ダボス会議=WEF(世界経済フォーラム)であることは、さまざまなオールタナティヴ・メディア( 『グローバル・リサーチ』その他)によって、今では広く知られてきています。

たとえば『翻訳NEWS』に載せられている次の論考を読んでみてみてください。

*Covidの「世界的流行」 。 これは、人々の暮らしを破壊し、経済不況を故意に引き起こす世界規模のクーデターだ( 『翻訳NEWS』2020-12-30)。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-465.html

これはオタワ大学経済学名誉教授ミシェル・チョスドフスキー博士による論考ですが、これを読めば、このたびのコロナ騒ぎの裏には、ビル・ゲイツ財団など世界を支配する一握りの巨大財閥や巨大製薬会社の大きな動きがあることを知ることができます。

そして、究極的目標として「グレート・リセット」と呼ばれる世界の大変革が設定されていることも先述した通りです。

オンライン研究誌『グローバル・リサーチ』の創立者、ミシェル・チョスドフスキー博士(カナダ、オタワ大学名誉教授)

 

この「グレート・リセット」は、今や行き詰まりを迎えて崩壊寸前の資本主義をどのように救うかの計画ですから、 「世界の共産主義化」どころか「資本主義経済の根本的再編成」の計画です。

ところが船瀬氏のこの本には、ビル・ゲイツ財団やダボス会議=WEF(世界経済フォーラム)への言及は皆無に近く、そこにいきなり登場するのが「イルミナティ」という国際的秘密結社なのです。

この得体の知れない団体がすべてを牛耳っているというのですから、ウォール街がCIAその他を使いながら世界をどのように支配し、自分の意に沿わない各国に「政権転覆=カラー革命」を仕掛け、世界をどのように破壊・殺戮してきたかを具体的に分析する必要もありません。

岩田さんは後掲の書評のなかで次のように書いています。

「著者のどの本のどこに書いてあったか忘れたが、共産主義思想はイルミナティが作ったもので、マルクスに大きな援助をしてその思想を作らせたということが書いてあった。これなどは全く私には信じられなかった。そのような社会主義・共産主義思想は、その時代の階級的な貧富の差の矛盾を解決をするために生まれてきたものだと私は思うからだ」。

しかし、そもそもダボス会議=WEF(世界経済フォーラム)は、いかにして崩壊寸前の資本主義を救うか、いかにして社会主義・共産主義思想が世界に広まって行くのを食い止めるかを企画立案する総本山なのですから、その総本山が「世界の共産主義化」を目指してコロナ騒ぎを仕掛けるはずもないのです。

ところが船瀬氏の解釈では「今回のコロナ騒ぎは世界を共産化しようとする動きだ」というのですから頭がおかしくなります。細菌を使ったアメリカによる、何度にも及ぶキューバへの攻撃(1980年、81年)を知っている者にとっては、武漢で新型コロナというニュースが流れた当時、すぐ頭に浮んだのは「アメリカによる細菌攻撃ではないか」でした。

にもかかわらず、ネット右翼を中心として、船瀬氏のような言説がツイッターやフェイスブックなどを通じて広まっていることを、最近になって知りました。

それどころか大橋眞=徳島大学名誉教授といった人までも、自分が立ち上げたYouTubeの番組「学びラウンジ」を通じて、同じ趣旨のことを繰り返し発信しているのです。

大橋氏は「中国共産党政府は裏でアメリカの大統領選挙に介入し、電子投票機ドミニオンを使ってバイデン候補を勝利させた」とすら公言するようになっています。

かつてトランプ大統領が誕生したとき、そのとき敗北したヒラリー・クリントンを初めとする民主党幹部は、 「ロシア政府が裏でアメリカの大統領選挙に介入し、トランプ候補を勝利させた」 「トランプ大統領はプーチンの傀儡
だ」という攻撃を、4年間にわたって執拗に展開しました。

が、そのお返しでしょうか、今度はトランプ氏が、 「コロナ騒ぎは中国が作り出したものでバイデンは中国政府のおかげで大統領になった」と反撃し始めました。

このような泥仕合を見ていると、かつて世界における民主主義のモデル国だと思われていたアメリカが、いかに低劣な国に成り下がりつつあるかを見せつけられているようで、非常に気持ちが暗くなるのです。

しかし、もっと気持ちを暗くさせられるのは、このような動きに加担する勢力として、「科学的思考」を売り物にする知識人、リベラルを自任する出版社代表が現われ始めたという日本の実状です。

最近、 「テレビで放映できない動画に字幕をつけます」という触れ込みで、大手メディアでは知ることのできない海外の情報を日本語の字幕付きで発信している「字幕大王」というサイトがあることを知りました。

見てみると確かに有益な情報も少なくありませんでした。ところが、そのサイト案内のひとつに「コロナウイルスの真実」という項目があるので、それをクリックすると、目次として17項目のタイトルが出てきて、その最後が驚いたことに「世界共産化のために」となっていました。

最近、 「テレビで放映できない動画に字幕をつけます」という触れ込みで、大手メディアでは知ることのできない海外の情報を日本語の字幕付きで発信している「字幕大王」というサイトがあることを知りました。

見てみると確かに有益な情報も少なくありませんでした。ところが、そのサイト案内のひとつに「コロナウイルスの真実」という項目があるので、それをクリックすると、目次として17項目のタイトルが出てきて、その最後が驚いたことに「世界共産化のために」となっていました。

そこで、それをクリックすると、さらに驚いたのは、その内容が「未来のテクノロジーと国際開発のためのシナリオ」と題して、2010年に「ロックフェラー財団」が発表した『LOCKSTEP(足並み揃え) 』という感染症拡大を描いたシナリオが入っていたことでした。

この『LOCKSTEP』は、パンデミックが世界でどのように広がり、各国政府がそれにどう対応すべきかを劇化したシナリオのようなものです。しかも、ここではすでにマスクの強制やLOCKDOWN(都市封鎖)についても述べられていました。

つまり、 「足並みをそろえて軍隊のように縦列行進させること」を「ロックステップ」というわけですが、この『LOCKSTEP』というロックフェラー財団の文書では、パンデミックが発令されたとき、どのように民衆を統制するかが、すでにシナリオ化されていたのです。

しかし問題は、この「ロックフェラー財団」が発表したLOCKSTEP(足並み揃え)という感染症拡大を描いたシナリオが、なぜ「共産化」なのか、という点です。

ちょっと考えてみただけでも、 「ロックフェラー財団」や最近このコロナ騒ぎを作り出しているビル・ゲイツ財団、そしてコロナ騒ぎで巨額の利益を得ている巨大製薬会社は、資本主義の牙城の1つです。

だから、それらが「共産化」という自らの首を締める自殺行為に乗りだすはずはありません。ましてダボス会議=WEF(世界経済フォーラム)という資本主義の総本山が、そんな自殺行為に乗りだすはずはないでしょう。

こんな単純な論理が、この「字幕大王」という素晴らしいサイトをつくりあげた優秀な頭脳に理解できないというのが、私には不思議でなりませんでした。

それどころか崩壊に瀕している資本主義を救うためにこそ仕掛けられているのがコロナ騒ぎであり、それを利用した「グレート・リセット」は資本主義経済の根本的再編計画ではないか――そう考えた方が理屈に合いますし、私のような貧弱な頭には、はるかに納得できます。

この「字幕大王」というサイトを見たときに感じた同じ思いを、別の動画を見たときにも味合わされることになりました。

というのは最近、コロナ騒ぎを口実にしてドイツ政府が厳しいロックダウン政策をとりました。それに対して巨大な反対行進が起きていることを話題にしたアニメ(動画)が、YouTubeで配信されたことを知人から知らせてもらったので、それを視聴してみたのです。

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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