【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第13回 ゼレンスキー演説の嘘 「生物兵器」編

寺島隆吉

ゼレンスキー大統領が日本の国会でおこなったオンライン演説がいかに嘘に満ちているかを論じてきましたが、今回は、その最終回として、生物兵器研究所の問題を取りあげたいと思います。

本当は、もっと早くに、これを書きたかったのですが、先述のとおり連れ合いが畑仕事をしている最中に、溝に足を取られて捻挫・骨折し、その世話などで時間がなくなり、なかなか復帰できませんでした。

それはさておき、前章で紹介したように、ゼレンスキー大統領は、いかにもロシア軍がウクライナの原発や化学工場などを攻撃して多大な被害を与えているかのように言っていました。

それどころか、彼は、 「私たちは、シリアであったように、 化学兵器、特にサリンを使った攻撃が起きる可能性があると、警告を受けています」とすら言っていました。しかし、何度も言いますが、シリア軍が化学兵器を使った事実はありません。

むしろ化学兵器を使って、それをシリア軍のせいにしながら、アサド政権に軍事攻撃をかけようとしたのが、イスラム原理主義集団ISIS(その裏で彼らを指導していた米軍 ・ CIA)だったことは、今では多くの証拠が出ています。

それと同じ戦術をウクライナが使いかねないと考える方が、はるかに事態をよく理解できます。化学兵器を使ったり化学工場を攻撃してもロシア軍に何のメリットもないからです。

それに元財務次官ポール・クレイグ・ロバーツも言っているように、ロシア軍は世界で最も優れた兵器をもっているのですから、ア メリカでさえ通常兵器で戦ったのでは、ロ シア軍に勝てないのです。ですから、わざわざ化学兵器を使って自分の評判を悪くする必要はありません。

すでに何度も述べたことですが、マリウポリ市の制圧に1カ月もかかったのは、民間人を巻き添えにしないという戦い方をしていたからです。ポール・クレイグ・ロバーツに「お人好しのロシア人」と揶揄された所以です。

そのことは今までのブログで書きましたので、ここでは詳細を割愛します。

少し横にそれましたので、話をもとに戻します。というのは、ゼレンスキー大統領はオンライン演説で核兵器や化学兵器を問題にしていましたが、生物兵器については一言も言っていないからです。

しかしウクライナで最も深刻に懸念されねばならなかったのは、生物兵器研究所が国内に30カ所も散在していて、実際に事故も起きているという事実でした。このことをロシアが指摘すると、 「それはロシアの宣伝(プロパガンダ)だ」と、キエフもワシントンも一蹴するのが常でした。

しかしアメリカが資金提供していたウクライナ国内の生物研究所について、元下院議員のトゥルシー・ギャバードが、すでに3月14日の時点で、自身のツイッターに同じような主張を投稿しているのです。

この投稿で、 「不慮の事故で、あるいは意図的に危険な病原体が漏出すること」に懸念を表明したギャバード元議員が求めたのは、 「ウクライナ国内の、 米国が資金提供している生物研究所の稼働を中止すること」でした。以下の記事は、そのことを報道したものです。

*Video: ‘There are 25+ US-funded Biolabs in Ukraine’: Tulsi Gabbard( 『翻訳NEWS』2022/03/25)
「ウクライナには25カ所以上の米国が資金提供した生物研究所が存在する」 。トゥルシー・ギャバードが動画で訴え
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-840.html

 

この記事によれば、彼女の主張は次のようなものでした。

 

ウクライナには米国が資金提供した生物兵器研究所が25~30カ所存在するというのは、否定できない事実です。

コロナと同じで、これらの病原菌については、国境は関係ありません。これらの病原菌が不意に、あるいは意図的に漏出したり、危険にさらされたりすれば、すぐにヨーロッパ中に蔓延します。

米国においても、米国以外のすべての国々においても、甚大な苦しみや、大量の死を引き起こす原因になりかねません。

ですから米国民や欧州民や世界の人々を守るために、これらの研究所は即時稼働を停止し、研究所が保有している病原体を破壊する必要があります。

ところが、このような元下院議員トゥ ルシー・ギャバードの主張に対してアメリカ国内から強烈な反撃が起きました。実験的ワクチンに疑問や反対意見を述べると「陰謀論者」として攻撃されたのと同じです。

たとえば、ユタ州選出ミット・ロムニー上院議員は、 「ロシアのプロパガンダ」に踊らされて「非国民的な嘘をばらまいている」と、 激しくギャバードを攻撃しました。

しかし、ウクライナに生物兵器研究所が存在することを、3月8日、ウクライナに関する上院外交委員会の公聴会で、奇しくもビクトリア・ヌーランド国務次官が認めてしまったのです。次の論考が、それを明確に証拠立てています。
*U.S. Lied About Funding “Dangerous Pathogen” Research in Secret Ukrainian Biolabs, Newly LeakedDocuments Reveal(米国は嘘をついていた。ウクライナの極秘の生物研究所で「危険な病原体」研究に資金を提供していた。新たに流出した文書で暴露、By Dilyana Gaytandzhieva, Global Research, March 24, 2022)
https://www.globalresearch.ca/us-lied-about-funding-dangerous-pathogen-research-secret-ukrainian-biolabs-newly-leaked-documents-reveal/5775095

生物兵器研究所がウクライナに多く存在することを、思わず漏らしてしまったヌーランド国務次官

 

この論考を書いたブ ルガリア人ジ ャ ーナリスト、デ ィリアナ・ゲイタンジ エ ワ(Dilyana Gaytandzhieva)によれば、ヌーランド国務次官は次のように証言したというのです。

「我々はウクライナと連携して、研究で使用していた生物資料をロシア軍に奪われないようにしている。さらに国務省が懸念しているのは、 ウクライナ国内の生物兵器研究施設がロシア軍の指揮下におかれることだ」。

ウクライナの生物兵器研究所を暴露したブルガリア人ジャーナリスト

 

つまり、直接的に「ウクライナに生物兵器研究所がある」とは言わないで、 「研究で使用していた生物資料をロシア軍に奪われないようにしている」と言ったのです。要するに「ウクライナに生物兵器研究所がある」ということを間接的に認めたということです。

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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