標的にされる島・奄美大島

関誠之

防衛施設庁は、首長の自衛隊受け入れ受諾から用地取得32億円、駐屯地造成費用86億7000万円を15年度・16年度に予算計上し、基地開設を当初予定していた19年3月に間に合うよう性急なまでに進めました。

このような状況を踏まえ、南西諸島がすでに米軍と自衛隊の共同軍事訓練基地になっていることは否定できないと住民グループ32名は、奄美を軍事基地化させないために、17年4月24日、「島の貴重な自然が壊され、住民が戦争に巻き込まれる危機にさらされる」として、奄美地区の駐屯基地など関連施設整備に向けた工事差し止めを求める仮処分を鹿児島地裁名瀬支部に申し立てました。4回の審尋が8名の弁護士の協力を得て、鹿児島地方裁判所でおこなわれましたが、18年4月28日に建設差し止めを認めず申し立てを却下する不当判決となりました。即日、宮崎高裁に控訴しましたが、同年12月11日に却下されました。また、瀬戸内分屯地建設差し止め仮処分命令申し立て(火薬庫地区および貯蔵庫A5棟を建設してはならない)を19年6月17日に鹿児島地方裁判所に起こしましたが、一度の審尋もなく同年12月25日に申し立てを却下するという不当なものでした。

この間も、アマミノクロウサギやコゴメキノエランなど希少な野生動植物を取り返しもつかない形で破壊し、駐屯地、分屯地造成はすすめられました。17年度には、施設整備費として年度予算最大の397億円(駐屯地268億円、分屯地129億円)を計上し暴走する施設整備となりました。その後も、18年度に施設整備費159億円、19年度に施設整備費に約61億円、20年度に瀬戸内分屯地の火薬庫(トンネル掘削工事)に約19億円、21年度に2本目の火薬庫に約12億円・分屯地敷地造成27億円、駐屯地の覆道射場10億円、22年度分屯地のトンネル掘削(火薬庫)約24億円、火薬庫内道路整備約12億円など13年度から22年度までの10年間で844億8000万円の血税が使われている。このように防衛費となると破格の予算措置が取られるのである。

駐屯地・分屯地開設後は、隊員の訓練は基地内で行うと、私たちに約束をしておきながら、開設後1年もたたない20年1月24日に平然と行軍訓練を生徒の通学路を使い、小銃を携帯して行い、20年7月9日には水路侵入訓練と称して、市街地の漁港において生地訓練を堂々と行っています。今後は、市街地の戦闘訓練なども行われるのではないか、たいへん危惧しているところです。

このような状況の下、米軍は18年1月27日の南日本新聞に報道されたように、米オスプレイが奄美に低空訓練ルート設定し、与論東部沖空中給油も非公式で設定し危険極まりない訓練が繰り返し行われており、いつ事故が起きてもおかしくない状況です。

今や、南西諸島は、馬毛島の米軍艦載機の陸上離着陸訓練場(FCLP)陸海空自の訓練場、事前集積拠点(計画中)を始めとして奄美大島、沖縄島、宮古島、石垣島(建設強行中)は、地対艦ミサイル・地対空ミサイル部隊の基地として部隊配置がなされ、最前線にされている。最前線ということは、確実に標的の島となったということである。

Aerial view of the beautiful blue tropical coastline of Amami Oshima, Japan

 

21年7月には、「オリエントシールド」と銘打ったミサイル部隊日米共同訓練がなされている。このようなことから言えることは、南西諸島がすでに米軍と自衛隊の共同軍事訓練基地になっていることは否定できないということです。

南西諸島へのミサイル配備は島を守るのが目的ではありません。米軍と一体になって、中国軍を封じ込めるのが目的です。

自衛隊が守るのは、領土・領空・領海であって住民の命と暮らしではありません。自衛隊の離島奪還作戦は、全住民が避難して誰もいないという想定の下に行われているとのことです。

「武器で平和は作れない」という声を大きく広げていくことが、いま問われています。平和のために、自分の出来ることから始めましょう。

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関誠之 関誠之

奄美市議会議員

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