【特集】ウクライナ危機の本質と背景

西側メディアに踊らされる日本、バイデンが煽ったウクライナ危機

木村三浩

今回、米国はロシア軍がウクライナの首都である「キエフをも標的にしている」との“情報”を何度も流していた。さらに、「ウクライナ人処刑・収容リストが作成された」と国連に報告。これなどは、イラクの大量破壊兵器を超える捏造情報だと言っていい。

ウクライナで14年、親ロシア派のヤヌコーヴィッチ政権を転覆させたのは、米国のネオコン勢力だった。その中心人物とされるのが、当時のヨーロッパ・ユーラシア担当の国務次官補ビクトリア・ヌーランドだ。ヌーランドはそれから七年後に誕生した現在のバイデン政権で、政治担当国務次官を務めている。

Vienna, Austria – March 30, 2014: Protesters gather in the main square in Vienna to protest the Russian annexation of Crimea from Ukraine. Police are watching the protests carefully in the background.

 

・戦需国家・米国を裁く国際法廷を設置すべき

米国は自らの無謬性を信じているかにふるまうが、ベトナム、イラク、アフガンなど、自らが起こした戦争において数々の失敗を繰り返し、世界中に大きな被害をもたらしてきた。しかし現代国際政治で、米国の違法性が裁かれたことはない。

大量破壊兵器の使用というフェイク情報を流して他国の指導者を殺したこともあった。“暗殺”も、日々繰り返されている。国際刑事裁判所規程から逃げる無法国家の傲慢を裁かないかぎり、米国の勘違いは続く。われわれは敗戦後、東京裁判を受け入れた。そして公正・公平を要求しなければ、法の下の不平等だ。

北京冬季五輪の前にはシリア北西部で、いわゆるイスラム国の指導者とその家族が、バイデンの命令によって殺害された。この人物がどれだけの無法者かはわからないが、国際裁判にかけて審理をするのが道理ではないのか。米国の大統領に、裁判もしないで人を殺す権利があるというのか。

法的正当性どころか、殺さなければならないほどの、何らかの緊急性があるのかについても、まったく伝えられていない。ただ、アメリカがイスラム国の幹部を殺した、という戦果・成果だけである。

しかし、それを疑問視する意見は、日本ではついぞ聞いたことがない。われわれは、それほどに思考停止の奴隷になってしまったのか。これこそが危機である。

ロシアの天然ガスが情勢に大きな影響を与えているとされるが、バイデン大統領の次男ハンター・バイデンは、一四年からウクライナのガス会社「ブリスマ・ホールディングス」の顧問を務め、月額5万ドル(約550万円)を受け取っている。オバマ政権で副大統領だったバイデンは、自ら望んでウクライナ政策を担当し、同国への対戦車ミサイル「ジャベリン」を含めた兵器の供与を積極的に提案した。

クリミアのロシア帰属による対露制裁が続くなか、ロシアが15年5月に対独戦勝70周年記念式典を行なった際、招待された安倍晋三首相は参加に前向きだったが、米国の反対を受けて断念している。プーチン大統領は「ワシントンから参加を許されなかった首脳もいる」と述べて安倍氏を皮肉った。

その安倍氏が、現在のウクライナをめぐる問題で、まったく存在を見せないのはなぜなのか。岸田政権の足を引っ張るようなことばかりしているようだ。プーチン大統領とファーストネームで呼び合う関係をつくったのは、いったい何のためだったのか。

主権国家として理義を正していくことが必要だが、国が言えなければせめて民間で真実を語らなければならない。対米従属日本ではないのである。

しかし、国際政治で存在感を発揮する機会をみすみす逃し、危機・混乱を煽る米国に加担している。事態が急激に緊迫化するなかで、わが国は何をすべきなのか。真剣に考える必要がある。

(月刊「紙の爆弾」2022年4月号より)

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木村三浩 木村三浩

民族派団体・一水会代表。月刊『レコンキスタ』発行人。慶應義塾大学法学部政治学科卒。「対米自立・戦後体制打破」を訴え、「国際的な公正、公平な法秩序は存在しない」と唱えている。著書に『対米自立』(花伝社)など。

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