【連載】横田一の直撃取材レポート

沖縄「名護版モリカケ事件」と 米国下僕・トモダチ優遇政治

横田一

・市長への忖度でJV側が超高評価か

そこで、1億3000万円も高値をつけたのに選ばれなかった「X社」の社長にプレゼン内容とホテル計画図について聞くと、市長親族関連会社を優遇した不正入札の疑いはさらに深まった。

那覇市が本社の地元企業X社は創業20年以上で、県内ですでに10件のホテルを営業するなど実績は申し分なかった。40~50名程度の従業員の雇用を予定するなど名護市への貢献にも配慮、ホテル自体も「名護温泉ホテル」と名付けた独創的な温泉施設併設となっていた。宿泊者だけでなく一般客の日帰り利用も可能で、客を名護市に呼び込む効果や温泉掘削による地域住民への憩い場提供のメリットを次のように強調していたのだ。

「現在名護市には温泉施設がなく、当ホテルでは名護市初の温泉施設を造り、ホテル一体型でありながら、当ホテル宿泊客だけでなく、日帰り客、地域住民、他のホテル宿泊者も気軽に利用できるような施設にしたいと考えております」「地域住民に気軽に利用してもらえるよう、名護市民割引等の料金体系を考えております」「これまで名護市を素通りし、周辺のリゾート地へ流れていた観光客を、温泉を通じて宿泊・名護市観光へと誘引し、名護市とともに発展していけたらと思います」(X社のプレゼン資料より)。

ホテル屋内に自転車保管所を設置したり、レンタルサイクル貸出をするなど「サイクリストにも最適なホテル」という特徴もアピール。プレゼン内容を高く評価してくれる人もいたと振り返りながらX社の社長は、今でもヤル気満々だった。

「旧消防跡地の近くを車で通るたびにまだ空き地なのかと見ていましたが、わが社が選ばれていたら温泉開発に際しての住民説明会を実施、すでに温泉掘削を始めていたことでしょう。選ばれたJV側の計画が頓挫したら再び名乗りをあげるつもりです」。

買取価格も高く、ホテル計画も開発意欲も申し分ないように見えるX社がなぜ、選ばれなかったのか。今回採用された公募型プロポーザルは、買取価格だけではなく、跡地に建てるホテル計画や地域貢献度などの提案内容にも点数がつけられる総合的評価方式(重みは価格が二割、提案内容が八割)。そのため、安値をつけた大和ハウス・アベストJVの提案内容に対して、高値をつけたX社を余りあるほど上回る高評価をつけることで“逆転現象”が起きていたのだ。

しかし市役所幹部や商工会会長ら8名の選考委員が、JV側の提案のどの項目で高い点数をつけたのかを知ることはできない。評価点数一覧表は非公開だからだ。「市長に忖度した市幹部が恣意的にX社を低評価、JV側を高評価にした」という疑惑が膨らむのは当然のことなのだ。

1月8日の学習会で、沖縄での感染拡大で名護入りを断念した郷原氏はリモートで落選運動について説明したあと、現地の会場に駆け付けた市民有志との質疑応答となった。そこで郷原氏は、チラシの配布場所や留意点などの具体的な質問に一つ一つ回答する一方、次のような発言で会を締め括った。

「市有地売却で渡具知市長は説明責任を果たしていない。どう考えても米軍基地が原因の感染爆発にも、辺野古新基地建設にも異を唱えようとしない。渡具知市政では市民の命・暮らし・財産は守れない。名護市の未来は破壊されようとしているのではないか」。

ミニ安倍元首相のような渡具知市長のままでは、友だち優遇政治が横行して市有地が有効利用されず、日米地位協定改定も強く求めない“米国下僕政治”も続いて、沖縄県民を含む国民の生命や財産が脅かされ、地元の宝というべき貴重なサンゴ群落を破壊する恐れがある辺野古埋立も止まらないと郷原氏は訴えたのだ。

渡具知氏の再選で終わった名護市長選だが、今夏の参院選にも共通する多くの争点を差し示すことになった。岸田政権を追及する野党陣営が今後の国会論戦や国政選挙で、これをどう活かしていくのかが注目される。

(月刊「紙の爆弾」2022年3月号より)

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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