【特集】ウクライナ危機の本質と背景

改めて検証するウクライナ問題の本質 :Ⅵ 忘れられたドンバスの苦悩(その3)

成澤宗男

察知されていたドンバスへの攻撃計画

さらに見落とせないのは、ウクライナの駐米大使であるオクサナ・マルカロワが昨年12月28日、ウクライナの衛星放送UATVのインタビュー番組で発言した以下の内容だ。

「いまや私たちすべてが、つまりウクライナと米国、西側が、外交的封じ込めであるオプションAに取り組んでいるので、誰しもが積極的に準備しているけれどもオプションBに切り替える必要はない」(注2)

この「オプションB」が、具体的に何を意味するのかマルカロワは何も説明していない。だが、「外交的」手段とは異なった内容を示唆しているのはないかという憶測を呼んだ。

ロシアの政治学者のウラジミール・ロゴフは、「オプションB」が外交ではなく戦争を意味し、それが「(22年1月末か2月初めに)経済上、最も困難な時期を迎えるだろうウクライナにおいて、ゼレンスキーや取り巻きが権力を維持するための唯一の道だ」(注3)と見なしている。

いずれにせよ、「オプションA」という外交の選択肢をウクライナ、そして「米国、西側」が「積極的に準備」した形跡は乏しい。実際には「切り替える必要がない」どころか、むしろ「オプションB」に傾斜したのではなかったかという疑惑が残る。

例えばDPRとLPRは、ドンバスへの攻撃が激化した2月16日以前のウクライナ軍の動向をかなりの正確さで把握していたが、それによると「1月末」から「2月初め」にかけて、同軍の内部では慌ただしさを増していたようだ。以下は、2月1日付の報道の一部だ。

「DPRの人民軍は、ウクライナ軍の参謀本部がドンバスへの攻撃計画を完成したとの情報を入手した。ドネツク人民軍の副司令官であるエドワード・バスリンによれば、今週、ウクライナ軍参謀長のセルフィ・シャプタル将軍の指揮下で、ウクライナ統合軍作戦司令官のオルサンドル・パフリュク将軍、そして『北』と『東』の戦術作戦集団の司令官たちの出席のもとで会議が開かれる予定だ」

「そしてバスリンは、この攻撃計画がその会議で討議され、近くウクライナ国家安全保障・国防会議で承認されることになっていると述べた」(注4)

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成澤宗男 成澤宗男

1953年7月生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。政党機紙記者を経て、パリでジャーナリスト活動。帰国後、経済誌の副編集長等を歴任。著書に『統一協会の犯罪』(八月書館)、『ミッテランとロカール』(社会新報ブックレット)、『9・11の謎』(金曜日)、『オバマの危険』(同)など。共著に『見えざる日本の支配者フリーメーソン』(徳間書店)、『終わらない占領』(法律文化社)、『日本会議と神社本庁』(同)など多数。

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