【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

「やんばる」の森の米軍廃棄物をめぐる闘い~「宮城秋乃さんの裁判を支える市民の会」の発足

宮城恵美子

【宮城秋乃さんについて】

「やんばる」の森で米軍廃棄物を地中から表土にあげ、あるいは散乱している汚染物の実情を告発した方がおられる。宮城秋乃さんである。「やんばる」とは、伊波義安氏の説明では「かつては金武町まで含まれていた」地域だったが、開発が進み、今では「国頭村、大宜見村、東村」の3村を呼び習わしている通称であるという。私もその領域と考えている。

宮城秋乃氏は沖縄、特に米軍北部訓練場に隣接した地域で調査研究活動を行う蝶類研究家である。米軍基地が自然環境にもたらす悪影響を告発し、貴重で豊かな「やんばる」の森を、その本来の姿を維持できるように活動を行っている。宮城氏は2017年6月には新崎盛暉平和奨励基金の助成を受け、20年10月には権力と闘い人権擁護の活動をした個人や団体をたたえる「第32回多田謡子反権力人権賞」を受賞している。

その宮城氏が昨年末に在宅起訴された。訴因は米軍北部訓練場メインゲート前に米軍の廃棄軍用品を置いた威力業務妨害と道路交通法違反である。

昨年度に世界自然遺産に登録された「やんばる」地域は、米軍からの返還に伴い日本政府は土地浄化をして地主に返還する義務がある。実際には多くの廃棄物資が放置され、自然環境に悪影響を及ぼしている。

16年12月に米軍から返還され、その後1年を掛けて浄化したはずの「やんばる」の森に、なぜ多くの軍廃棄品が放置されているのか。そして世界自然遺産の登録に際して、そのことが問われなかったのはなぜなのか。

このことを不問にすると、自然破壊の最たる行為である軍事訓練や演習地の存在が、世界自然遺産と共存するというおぞましい実例を作ることになる。沖縄の米軍基地問題の解決をめざして国際社会への発信を続けている吉川秀樹氏(Okinawa Environmental Justice Project)と共に宮城氏は告発を続け、問題の解決を日米政府に要求した。

【宮城秋乃さんへの弾圧、土地規制法適用の先駆け】

しかし、日本の平和憲法の形骸化は、ここでも影を落とすことになる。沖縄全体が対象となる土地規制法が昨年6月に国会で成立し、日米軍用地を覆う「ベール」のような政策が強化され、主権者の基地監視行動が違法とされかねない事態となった。法律の実施要項は未定であるが、宮城氏への起訴は国民監視法と言われる土地規制法適用のさきがけと指摘されている。

女性1人が抱えられる程度の廃棄物をメインゲートに置いたことが、米軍の業務妨害になるのであろうか。その程度の行為で妨害されるほど米軍の業務はやわなのか。そもそも違法廃棄物を返還地に放置している米軍と浄化義務を果たさない日本政府が問題ではないのか。このような不当な弾圧に対して、即座に沖縄環境ネットワークと沖縄平和市民連絡会は那覇地方検察局に抗議文を提出し、全国規模での宮城氏支援活動を開始した。

4月2日には那覇市で百名を超える参加者が「宮城秋乃さんの裁判を支える市民の会」を発足させ、弁護団も形成されて不当起訴に対する闘いが始まっている。しかし日本の司法は行政のしもべとなっている実情から、裁判の行方は予断を許さない。

現在、宮城氏は繰り返し米軍の違法行為を弾劾し続けている。正規のナンバープレートも付けず公道を移動する米軍車両に対して身体を張って阻止行動を行っている。日々ネットにアップされる彼女の行為は沖縄県民の意思を代表している。彼女の裁判を注視し、行動の支援を行うことは主権者としての実体を維持する行為であると同時に、彼女の安全のバックアップにもなる。

【米軍廃棄物を世界自然遺産登録で隠蔽させない闘い】

「やんばる」の森は世界自然遺産に登録された。しかし、ユネスコ世界遺産は登録して終わりではない。世界遺産登録を抹消された事例も、抹消の可能性を討議された事例もある。近年、ユネスコ世界遺産委員会では登録後の遺産の確実な保存・管理を求めており、遺産の活用を図りながら、本来の目的である保存・管理を求めている。

Roads and signs in the Yanbaru National Park area, Okinawa Prefecture

 

前述の吉川秀樹氏も宮城秋乃氏も、継続して「やんばる」の森の廃棄物汚染が放置されている北部訓練場返還地の実情を世界に発信している。世界遺産に登録時には検討されなかった米軍の廃棄物放置も、証拠を集め、資料をユネスコ世界遺産委員会に送ることによって、日米政府に公害事案の世界標準である汚染者負担の原則から逸脱している米軍基地の問題点を突き付けることになる。

米軍基地問題が沖縄に押し込められ、さも沖縄問題のように報道される実情は、日本的には問題にならなくても、世界的には大問題である。事故を起こしても事故車両を特定するナンバープレートを付けていない米軍違法車両の運行や、返還地の廃棄軍物資の存在等、本来問われるべき米軍が不問にされ、それを糾弾する主権者が起訴される沖縄の実情は正さなければならない。

それを顕在化させるのが今回の裁判の役割であり、単に判決の結果を求めるものではない。違法行為を放置する日米政府の所業を、裁判を通じて最大限問題にし、対策を要求する運動につなげていくことこそが重要である。その過程で、問題解決を阻害している日米地位協定と日米合同委員会における米軍支配をあぶりだし、軍事植民地状況の解決への道筋を提示することができれば、今回の不当な起訴と刑事裁判も有用な役割を担うことになる。

 

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宮城恵美子 宮城恵美子

独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。

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