【特集】終わらない占領との決別

見果てぬ夢を次代につなぐ(前)

岡田元治

1979年の米中国交樹立を受けて人民解放軍=中華人民共和国が金門島砲撃を停止して以来、中台間の戦闘は起きていないが、これはあくまでも戦闘停止であったため、1946年(厳密には1920年代)からつづいている国共内戦が終わったわけではない。中国の視点でみれば、あくまでも内政問題であり、したがって外国勢力の干渉は絶対に認められないということである。

マスコミとは異なる視点の国際情勢分析で定評のある田中宇氏もブログ「田中宇(さかい)の国際ニュース解説」(https://tanakanews.com/)でつぎのように分析している(以下、関連記事要旨)。

∇米欧豪日は、口では「民主主義の台湾を守れ」と言うが、実のところ、中国側の内戦の理由を「一つの中国」の原則として十分に認めている。「一つの中国」とは、中国と台湾という2つの国、2つの中国があるという立場を決してとらず、中国(中華人民共和国=共産党政権)か台湾(中華民国=民進党または国民党政権)か、どちらか勝った方(もしくは中台の協議による統一中国)だけを中国として認める、という立場だ。世界のほとんどの国が「一つの中国」の原則堅持を表明しており、米欧豪日も中国とだけ国交をもっている。台湾と国交をもつ国は台湾の経済援助を受ける15の小国だけ(注:かつては28か国あった)。台湾を本気で支援するなら国交を樹立すれば済む話だが、そうした展開にはならない。米欧豪日は台湾を焚きつけるだけで実際に国交を結ぼうとしない。

∇つまり、中台問題に関する米欧豪日の原則は「一つの中国」のままだ。にも拘わらず、米は台湾に武器を売ったり議員団を派遣したりと盛んにうわべの支援をつづけ、中国が台湾への威嚇を強めるように挑発して、台湾を危険に追いやっている。〝相変わらずの攪乱戦術〟と言うしかない。

∇AUKUS(豪英米軍事同盟・2021年9月15日~)の発足の翌日から翌月にかけて、中国と台湾が相次いで TPPに加盟を申請したが、豪は、台湾の加盟を支持して中国の加盟を拒否するどころか、逆に「一つの中国」の原則を持ち出し、この原則に沿って中台の加盟申請への支持を決めると表明した。つまり、中国の申請を認め、台湾の申請は認めないということだ。軍事ではなく経済の問題である TPPの加盟についてすら、豪は台湾でなく中国を支持している。豪にとっては中国が最大の貿易相手だから、そうせざるを得ない。経済ですらこうなのだから、豪が軍事面で台湾を支援するのは不可能だ。

Triple alliance concept. AUKUS. Flags of Australia, United Kingdom, USA. Vector illustration.

 

∇1979年の米中国交正常化に先立って、中国政府は、アメリカが台湾を中国から切り離して保護することを不可能にするために、「一つの中国」を認めるようアメリカに求めた。中国は、中台双方に目を配る必要があったアメリカに配慮して、どちらがどちらを負かして一つの中国を実現するかには触れず、「台湾は中国の一部であり、アメリカ政府は台湾問題が(台湾と中国の)中国人どうしの間で平和に解決されることを望む」という表現を提案し、1972年のニクソン訪中時の共同声明にはその文言が盛り込まれた。

以上のような分析は、2021年7月に開かれた中国共産党創立100年の記念式典における習主席演説とも符合する。建国100年(2049年)に向けた中国の基本方針は、その習演説および同年11月に行われた「6中全会(第19期中国共産党中央委員会第6回全体会議)」において、つぎのように繰り返し強調されている。

イギリスのアヘン密貿易(当時の中国でも禁制品)に起因するアヘン戦争(1840年~42年)で屈辱的な不平等条約(南京条約)を結ばされて香港を奪われ、現在もまた国民党(台湾)との内戦の延長である中台問題で外国に手出しされる悔しさに対する決意が溢れている。独裁とか民主主義とかの問題以前に、日米地位協定と日米合同委員会に抑え込まれている国の人間としては、国内外に向かってここまで堂々と宣言できることを羨ましく思う(以下、2021年7月2日付け日経記事の対外関係部分要旨)。

∇中国共産党と中国人民の勇敢で強固な奮闘をもって中国人民は立ち上がり、中華民族が搾取され辱めを受けていた時代は過ぎ去ったことを厳かに宣言する。

∇中国は帝国主義や覇権主義による転覆と破壊、武装挑発に打ち勝った。

∇香港特別行政区の同胞、マカオ特別行政区の同胞、台湾の同胞と多くの華僑に心から挨拶を述べる。

∇中国共産党と国民を分割して対立させようとするいかなる企ても、絶対に思いのままにならない。9500万人以上の中国共産党員も、14億人余りの中国人民も許さない。

∇中国の人民は、いかなる外部勢力が私たちを抑圧し、奴隷のように扱うことも決して許さない。圧力をかけようとすれば、14億人を超える中国人民の血肉で築かれた『鋼鉄の長城』に打ちのめされることになるだろう。

∇複雑な国際情勢がもたらす新たな矛盾と課題を深く理解し、あえて戦い、山があれば切り開き、水があれば橋をかけ、あらゆるリスクと挑戦を克服する。

∇同志と友人のみなさん、私たちは「一国二制度」「香港人による香港の統治」「マカオ人によるマカオの統治」、高度な自治の方針を全面的かつ正確に徹底し、香港とマカオ特別行政区に対する中央の全面的な管轄権を実行する。

∇台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の変わらぬ歴史的任務であり、中華の人びと全体の共通の願いだ。「一つの中国」の原則とそれを認め合った「92年コンセンサス」を堅持し、祖国の平和統一プロセスを推進する。両岸の同胞を含むすべての中華の人びとは、心を一つにし、団結して前進し、いかなる「台湾独立」の企みも断固として粉砕し、民族復興の美しい未来を創造しなければならない。いかなる人も、中国人民が国家主権と領土を完全に守るという強い決心、意思、強大な能力を見くびってはならない。

∇100年前、中華民族が世界に示したのは一種の落ちぶれた姿だった。今日、中華民族は世界に向けて活気に満ちた姿を見せ、偉大な復興に向けて阻むことのできない歩みを進めている。

以上、日米の政府とマスコミが煽る中台危機に関する状況分析の要旨を長々と書いてきたが、事実・現実はどうやらそういうことである。日本のマスコミの論調は、相変わらず欧米追随一辺倒で、国際情勢について事実らしきことはほとんど伝えない。いわゆる〝軍産(複合体)〟に抑え込まれていて伝えられないのだろう。米中間・中台間に意図的な戦闘が起きないだろうことは、前出の21世紀中国総研「海峡両岸論」と田中宇氏の分析を読んで確信した。外国勢力が火ぶたをきらないかぎり、中国が戦闘に踏み切ることはない。2022年2月7日現在進行中のウクライナ情勢も米の攪乱と誘導であろう。危機を煽って利益を得るのは、戦争商売陣営と、今やそのフロントツールである大手マスコミだ。

3.マスコミによる情報管理の裏側

そのマスコミは、書籍やインターネットに溢れる事実報道、少なくとも議論や検証に値すると思われる事柄には触れない。ちょっと目立つ異論があると、やれフェイクニュースだ、陰謀論だと腐す。が、実際にフェイクニュースなのは、現代の大本営発表サイドである欧米日メディアの方だったりする。

私は2009年から2010年にかけて行われたまさにメディアスクラムといえるような小沢・鳩山攻撃のあと、マスコミにほとほと嫌気がさして数か月のあいだテレビと新聞から離れたことがある。離れると日常の出来事や社会的日程がわからなくなってしまい、生活者としても企業人としてもかなり不便だったので(笑)、たしか3.11の震災を機にまた見るようになったのだが、戻ってみて面白いことに気づいた。

世間と世界に存在するある程度事実らしきことを知ったうえでマスコミをみると、彼らが何を隠したいのか、逆に何を誇張したいのか、話をどう逸らしたいのか摺り替えたいのかなどが解って、情報空間の構造が見えるようになったのだ(だまし方があまりにワンパターンで飽いてはいるが)。

考えてみれば、報道は広告を背負った時点で報道ではない。少なくとも広告主の嫌がることは言いにくい。地域独占で競合のない電力会社や電事連の広告出稿は、〝口止め料ないし応援依頼費〟であろう。許認可権をもつ政府にも逆らいにくい。最近の自民党政権はあまりにもあからさまだ。以前は多少あったらしき〝奥ゆかしさや遠慮〟など、どこにもない。その意味で、玉石混淆とはいえ、本当らしきことは、広告を積まない書籍と(一部の)雑誌とインターネットメディアにしか残っていないのではないか(SNSはビッグテックの規制によって死にはじめているが)。

一昨年11月の米国大統領選挙後のマスコミ報道には、あらためて驚いた。現地のSNS情報などにより、11月4日早朝に行われたらしき開票作業や郵便投票のデタラメが明らかになったにも拘わらずそのことには一言も触れず、ただただ「トランプが負けてよかった」の一色だった。これは、トランプを勝たせたかったとか勝たせたくなかったとかの問題ではない。民主主義を標榜する国の選挙がそんなことでいいのか?という論理理屈の問題である。

新型コロナの検査・ワクチン等に関する宣伝報道もひどい。コロナについて異論や反論があることは、もうさすがにかなりの人が知っているのに、テレビ・新聞の報道の現状は皆さんよくご承知のとおりだ。中部ローカルとはいえ、コロナに関する異論を堂々と放送しつづけるCBC(中部日本放送のテレビ放送部門)は「勇気があっていいね!」と称賛を浴びている。

まったく「おいおい、報道って事実現実を伝える仕事じゃなかったのかよ」と突っ込みたくなる。もう世間の人も多くは知っているのだ。「マスコミは本当のことが言えない」ことを。そのマスコミも新聞を読まない若者、テレビを視ない若者が増えて苦しんでいるという。延命になるかどうかはわからないが、申訳程度でいいから「異論コーナー」でも設けたらどうか。多様性を謳うのであれば、報道こそ少しは多様性を気にしたらどうか。

メディアに〝ニセ情報の垂れ流しによる賠償責任がない〟のは、本当に残念である。悔しついでに言わせてもらえば、日本国民がやっと手に入れた(最初で最後の?)民主主義権力である2009年の鳩山・小沢政権潰し、コロナ煽り、中台危機煽り等々、何を書いても製品の質を問われず、それがどんな災厄をもたらしても〝製造者責任〟を突きつけられないメディア産業は、罪深い産業と言わざるを得ない。危機煽りやワクチン煽りを見ていて思うのだが、競合なしで税金から売上を吸いあげる〝危機ビジネス〟やグレートリセット(≒世の中の作り変え)のお先棒をかつぐのは本当にやめてもらいたい(それが彼らに与えられた役割なので言っても詮ないが)。

マスコミに関することで最後にひとつ。これはマスコミにかぎった話ではなく、社会の管理者たる権力サイドに共通することだが、ネーミングが〝天才的に上手〟ということである。

例を挙げる。詳しくは述べないが、興味が湧いたら書籍や検索で調べてみてほしい。

∇FRB:Federal Reserve Board 連邦準備制度理事会
米国の国家機関であるような名称だが、完全な私的金融機関の集団である。

∇真珠湾奇襲
空母赤城以下24隻(以上)の艦船が千島列島択捉(えとろふ)島の単冠(ひとかっぷ)湾を出港したのは1941年11月26日。攻撃の12月8日まで13日間を要している。通信は当然傍受されている。奇襲は不可能である(真珠湾攻撃・東京大空襲等、太平洋戦争にはもっと大きな異論があるが長くなるのでここでは触れない)。

∇東京大空襲
焼き払われたのは下町エリアのみ。日銀・大蔵省をはじめとする行政機関、(全国の)天皇権益は攻撃されていない。本気の戦争なら、偽りのイラク戦争でそうしたように、真っ先に権力の拠点をたたく。あれは東京大空襲ではなく、居住地区の空襲である。

∇9.11同時多発テロ
これはネーミングというわけでもないが、書かずにはいられない。2001年9月11日のあの日以来、テレビをつうじて見せつけられた映像は、コンクリートの粉塵が大量に舞うビル街だった。ビルは航空機の激突による火災で崩落したと喧伝されたが、コンクリートを粉にするのは爆破である。鉄筋の入ったコンクリートが崩落で粉塵になることは絶対にない。

∇地球温暖化CO2 原因説
地球は延々と温暖期と寒冷期を繰り返してきた星だ。人間の経済活動によるCO2が多少影響していることはあっても、それが主因ということはない。CO2 原因説に異を唱える科学者はたくさん存在するが、マスコミは封殺する。CO2 が減りすぎたら、植物が減り、その結果、哺乳類の命の源泉である酸素が減って困るのではないか(笑)。

これもキリがないので、このあたりで止めにしておく。とにかく、巨大なウソを定着させることにおいて〝ネーミング〟はとても大事、ということである。その宣伝力には脱帽するしかない。『事実のヒントは、つねに足下・眼前にあり』だ。

※「見果てぬ夢を次代につなぐ(後)」は6月3日に掲載します。

※ご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。

https://isfweb.org/2790-2/

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岡田元治 岡田元治

独立言論フォーラム・代表理事。1955年京都市生まれ。横浜の全寮制(当時)、山手学院中・高等学校を経て、早稲田大学商学部卒。翻訳・編集・広告制作で修行ののち、1987年、32歳のときに独立創業し、現在はIT関連事業(東京)および自然放牧場(岩手)を運営。嘘にまみれたマスコミ情報空間、歪んだ対米関係・国際関係、壊れゆく組織、当たり前の理屈が通らない世の中等々に憤りつつ、負けっぱなしの日々を送る。事実好きの酒好き。 

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