【特集】終わらない占領との決別

見果てぬ夢を次代につなぐ(後)

岡田元治

5.希望は霞の向こう側だが

この本は、日本の対米従属および占領継続状態を明らかにして展望を見出すためのものであるが、脱却への途は多難である。日米地位協定と日米合同委員会の現状、猿田氏に教えられた日本政府の〝積極的かつ主導的な従属状態〟を考えると、哀しいかな希望はなかなか見えてこない。

解決策は、矢部氏が訴えるように、フィリピンを手本に憲法を変えて「外国の軍事基地は置かない」という簡単な一文をくわえるしかないとも思うが、緊急事態宣言を入れようとする改憲勢力が国会の3分の2を遥かに超える現状にあって、改憲は危険すぎる(私はもともと〝独立を願うがための〟改憲陣営だったのだが)。もう覇権国アメリカ、米英アングロサクソンの衰退を待つしかないのかと情けない気持ちになってくる(事実、彼らの覇権もずいぶん弱くなっているようではあるが)。

滅んだことの良し悪しは別の議論になるのでここでは触れないが、盤石だった徳川幕府で250年あまり、あのローマ帝国ですら400年ほどで終焉を迎えていることを思えば、現代のどの国のどんな努力が潰されつづけても、いつかはこの英米アングロサクソン覇権も終わる。

終わったとしても、つぎにくる世界の権力が望ましいものとはかぎらないし(というか権力はつねに非道)、また、現代の金融覇権ないしコーポラティズムの毒にも凄まじいものがあるが、マネーの力がどうであろうとも、次代・次々代にやってくる日本と世界が、少しでも徐々でもいいから〝今よりはまとも〟になることを希う。

今のところ希望は霞の向こう側といったところだが、希望があるとしたら、誰かがいつか話してくれたこの言葉か。

「時代はホントに少しずつでしかないけど、良くはなっているよ。300~400年前はそれこそ町角で〝斬捨て御免〟がまかりとおっていたらしいけど、さすがに現代はないでしょ(冤罪による法的抹殺、メディアスクラムによる人格抹殺という形で残ってはいるが)。核爆弾を現代の戦争で使ったらどっちも壊滅するから、どんな覇権国だって論理的にも物理的にも、もう使えないよね? 時代が進むって、そういうこと。時の流れって、そういうこと。何事も、どんな大きな理不尽も10年や20年、50年や100年じゃ変わらないけど、いつかは必ず変わるよ」。

ずいぶん寂しい終わり方になってしまったが、この言葉の普遍性を頼って、足もとの可能な努力をつづけながら「米軍ないし米国からの独立」という見果てぬ夢を次代につなぐことができればと、心から思う。

※「見果てぬ夢を次代につなぐ(前)」はこちらから

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岡田元治 岡田元治

独立言論フォーラム・代表理事。1955年京都市生まれ。横浜の全寮制(当時)、山手学院中・高等学校を経て、早稲田大学商学部卒。翻訳・編集・広告制作で修行ののち、1987年、32歳のときに独立創業し、現在はIT関連事業(東京)および自然放牧場(岩手)を運営。嘘にまみれたマスコミ情報空間、歪んだ対米関係・国際関係、壊れゆく組織、当たり前の理屈が通らない世の中等々に憤りつつ、負けっぱなしの日々を送る。事実好きの酒好き。 

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