【連載】データの隠ぺい、映像に魂を奪われた法廷の人々(梶山天)

第17回 まさかの弁護団からの出廷要請 

梶山天

約40年間、新聞記者をしてきた独立言論フォーラム(ISF)副編集長の私からすれば、今市事件被害者の司法解剖を行った本田元教授に対する一連の警察、検察がとった行動は、でっち上げの違法捜査と言わざるを得ない。ともあれ、最終的には、本田元教授の得意分野であるDNA型鑑定の解析データの隠ぺいを自ら見破り、徳島県警科捜研出身で、徳島文理大学人間生活学部の藤田義彦元教授の応援を受けて勝又受刑者の再審への道を開くことにつながると確信する。

前述の法医学者2人は、2016年ごろから始まった警察によるDNA型鑑定独占がこうした証拠の隠ぺいなどにつながっていると指摘する。詳しく説明すると、15年ごろまで法医学者が司法解剖時に検査項目として遺体のDNA型検査があった。遺体が亡くなった本人か確認するためだ。法医学者にとってこの検査は、鑑定の研究にも寄与し、何よりも冤罪をあばく手段にもなっていたのだ。

ところが、表向きには予算削減を理由に解剖の検査項目から外し、代わりに各都道府県の科捜研がそのDNA型鑑定を担うことにしたのだ。ただし、ミトコンドリア鑑定だけは法医学者に嘱託している。この警察の鑑定独占で法医学者が事実上、検査をあまり出来なくなった。法医学者のチェックは入らず、やりたい放題。こうした中で起きたのが今市事件のDNA型鑑定の解析データの隠ぺいだ。

実は私が朝日新聞記者時代の14年11月6日付の紙面で「DNA検査の委託中止へ 警察庁『経費減』、独占懸念も」と題して、いち早く警察庁の動きを追い、独占による冤罪などが多発する可能性を指摘した。その指摘通りに今市事件で起きてしまったのだ。

今、DNA型鑑定はやりたい放題。対策として監視役として法医学者の解剖時でのDNA型鑑定をもとに戻すか、それよりも安全なのは、鑑定業務を捜査機関から独立させ、捜査機関から圧力がかからないようすることが急務だと感じてやまない。

この連載は、読者の皆様の温かい声援のおがげで今回で17回を数えます。記者の私と、ネット技術者、映像担当の3人のチームワークで作っています。なにより『証拠』を基本に報道することに務めています。

というのも、今市事件での一連の裁判は、いずれも犯人と断定する確たる「証拠」がない中で被告を刑務所に収監させた。証拠を積み上げることがどれだけ大切なことか、裁判官の皆様は忘れているのではないでしょうか。先人の名裁判官たちは何より証拠を積み上げることに努力をしてきました。裁判官として公正な判断の歴史を作ってきたのです。今それが瓦解しようとしているのが現状です。

捜査機関のDNA型鑑定の独占、取り調べ中の容疑者に対する警察官らの暴力の裁判官の容認。私たちは、この報道によって裁判官の方々の心に今一度証拠の重みを心に刻んでもらおうと報道を開始しました。それは国民の声でもあります。だから写真として掲載されているものも、事実を報道するために入手した捜査機関の内部ものをあえて出しています。私たちは本気です。

「今日の記事は涙が止まりません」「捜査機関がこんなことするなんて…」。私のもとに届いた全国の人々からのご連絡。ありがとうございました。連載はまだまだ続きます。

連載「データの隠ぺい、映像に魂を奪われた法廷の人々」(毎週月曜、金曜日掲載)

https://isfweb.org/series/【連載】今市事件/

(梶山天)

※ご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。

https://isfweb.org/2790-2/

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梶山天 梶山天

独立言論フォーラム(ISF)副編集長(国内問題担当)。1956年、長崎県五島市生まれ。1978年朝日新聞社入社。西部本社報道センター次長、鹿児島総局長、東京本社特別報道部長代理などを経て2021年に退職。鹿児島総局長時代の「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープと一連のキャンペーン」で鹿児島総局が2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。著書に『「違法」捜査 志布志事件「でっちあげ」の真実』(角川学芸出版)などがある。

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