【高橋清隆の文書館】2024年05月28日 高橋清隆の文書館 国産か分からない食品表示:「啓発に努める」と消費者庁、改める気なし

高橋清隆

 消費者を混乱させる現行の食品表示の改善を求める集会が5月28日、衆院第1議員会館内で開かれ、市民や国会議員など約160人が集まった。消費者庁の担当者も出席し、主催者の食品表示問題ネットワークが「貴庁はなぜこの状況を放置しているのか」とただすが、「引き続き啓発に努めていく」との答弁に終始した。

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関心の高さをうかがわせる集会。あいさつするのは山田正彦元農水相(右、2024.5.28筆者撮影)

 パンや麺類の食品によく「小麦粉(国内製造)」などと書かれていることがある。これは食品製造地の表示であり、小麦の生産地が不明であることを意味する。2019年から加工食品の原料原産地表示基準が改正され、22年4月から完全施行されているためだ。

 例えば、生鮮原料については「小麦(国産)」「小麦(アメリカ、カナダ)」「小麦(輸入)」などの表示を原則とし、加工原料については「小麦粉(国内製造)」の表示が可能になっている。

 消費者団体(日本消費者連盟、食の安全・監視市民委員会)が23年秋に行った食品表示に関する意識調査では、約3割が「小麦粉(国内製造)」を国産小麦を主原料にしていると誤解していた。

 さらに23年4月からは、遺伝子組み換え表示も変更され、「遺伝子組み換えでない」の表示が全く検出されない場合しか認められなくなった。それまで「遺伝子組み換えでない」と表示できた混入率5%以下のものは、「分別生産流通管理済み」や「遺伝子組み換え分別管理流通済み」などの表示のみ可能に。

 ゲノム編集の場合は、表示が義務付けられていない。

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食品表示問題ネットワークの原英二氏(2024.5.28筆者撮影)

 集会で食品表示問題ネットワーク事務局の原英二氏が、消費者庁に事前に提出していた食品表示に関する質問への回答を報告した。質問骨子は
(1)「輸入原料を使用している表記があたかも国産原料を使用しているかの優良誤認を招いているが、そのため被害に遭っている消費者が多数発生していることについて、貴庁はなぜこの状況を放置しているのか」
(2)「消費者にとって弊害のある表示制度を、今後どのように改善していくのか」

 これに対する消費者庁の5月28日付け回答骨子はそれぞれ、
(1)「製造された地名を表示することとしている趣旨は、その原材料となった加工食品の製造に使用されている原材料の調達先が変わることや、加工食品の生鮮原材料までさかのぼって産地を特定することが困難なことによる。
 他方、客観的に確認できる場合には、生鮮原材料の原産地までさかのぼって表示することは可能。
 このような制度の仕組みについては、消費者向けパンフレットおよびチラシの作成、セミナーの開催などにより普及・啓発を図ってまいりたい」
(2)「表示制度については、検討してまいりたい」

 この回答について原氏は、「製造地表示が一番の問題。『国内製造』は製粉を国内で行ったことを意味するが、小麦の場合、大手が独占しているから、原産地がどこか分からないことなどない。変わる場合は、2つ書けばいいなどの運用をすればいい」と消費者庁に提言した。

 原氏は3割の市民が「国内製造」を国産と誤解していたアンケートを示し、「国産にこだわる消費者の選択権を阻害している。同時に、国産にこだわる事業者の製造意欲を阻害している」と指摘。

 その上で、「表示は大体が言い訳で、『輸入』と書くと売り上げが減るのが心配だから。啓発によっても、原料原産地が分からないことが問題」と再考を求めた。

 消費者庁食品表示課の担当者は、2016年から原料原産地表示に関する検討会で議論を重ねてきたことを強調し、「品質を一定に保つには、いろいろな原産地のものを混ぜる必要がある」「小麦でも、原産地が分かれば表示は可能」「3分の1が誤解しているとのことだが、誤解を解くためにも引き続き啓発に努めてまいる」などと答弁した。

 JA(農業協同組合)の職員が遺伝子組み換え(GM)表示について質問した。自身の組織でも非GM生産物に力を入れているが、「分別生産流通管理済み」では差別化できないとの訴えである。これに対し、消費者庁の担当者は、「作られた場所がしっかり分かるように、啓発を続けてまいりたい」と答えると、場内は失笑に包まれた。

 食品表示問題ネットワークは22年12月、食品表示企画課の担当者との意見交換で、同年4月から2年間をめどに基準の見直しを検討をするとの回答を得ている。この件についてただされると、消費者庁の担当者は、「検討の前提条件として、どのような方法がいいのか、検討会という形なのか、現在検討している」と答え、ため息が漏れた。

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山田勝彦衆院議員(2024.5.28筆者撮影)

 集会では10人の国会議員が駆け付け、あいさつした。この中で、山田勝彦衆院議員(立憲)は「消費者庁が製造地表示について意識調査を実施したというので見たら、チョコレートが題材に使われていた。このような設問では表示の問題点が分からない」とやり玉に挙げた。

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川田龍平参院議員(2024.5.28筆者撮影)

 川田龍平参院議員(立憲)は「消費者庁が発足したときの精神はどこへ行った。消費者の味方のはずが、食品メーカーの天下りに、それどころか、現役が出向の形で来ている。民間企業の代弁者になることを危惧する」と懸念を示し、「国民の違和感は9割正しい」との妻の堤未果(つつみ・みか)氏の言葉を引用した。

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川内博史衆院議員(2024.5.28筆者撮影)

 川内博史衆院議員(立憲)は、「食品表示は誤認のないようにするのが当然だが、わざわざ誤認するようにしている」と一蹴した。

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野間健衆院議員(2024.5.28筆者撮影)

 野間健(のま・たけし)衆院議員(立憲)は、「1月のダボス会議で、水稲はメタンガスを出すから地球環境に悪いと言い始めた。農水省は水田をやめればお金を出すと予算を付け始めた。岸田総理に聞いたら『それは正しい』と言う。これを与党が推進している。絶対にやめさせなければ」と訴えた。

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宇田桜子流山市議(2024.5.28筆者撮影)

 千葉県流山市議の宇田桜子(うた・さくらこ)氏が、同市議会で食品表示に関する意見書を採択したことを報告した。「消費者が安心して食品を選択できるための明確な表示を求める意見書」と題し、①加工品でも製造場所だけでなく主成分の原産地名を表示すること②「分別生産流通管理済み」について遺伝子組み換え5%以下が明確に分かるよう表示することなど4点を求める内容。

 宇田氏は「他の市町村にも期待したい」と同様の活動の広がりを展望。宇田氏によれば、採決は15対12で「共産党が賛同しているから」との理由から反対した議員がいた。その上で、「消費者庁は、消費者の方を向いてやってほしい」と要望した。

 この集会はオンラインでの参加もあり、1000人以上が視聴。意見も多数寄せられた。

※なお、この記事は「高橋清隆の文書館」2024年5月28日のブログ記事がらの転載であることをお断りします。

高橋清隆 高橋清隆

反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/

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