【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ウクライナ戦争再々々々論

安斎育郎

これは私が「平和友の会」会報の2022年4月号に書いたこととまったく同じです。 フランスの歴者学者エマニュエル・トッド氏は、次のように主張しています。

●感情に流される中、勇敢にも真実を語った者がいる。それが元米空軍軍人で、現在シカゴ大学の教授をしている国際政治学者ジョン・ミアシャイマーだ。彼は「いま起きている戦争の責任はアメリカとNATOにある」と主張している。

●この戦争は「ロシアとウクライナの戦争」ではなく、「ロシアとアメリカ&NATOの戦争」だ。アメリカは自国民の死者を出さないために、ウクライナ人を「人間の盾」にしている。

●プーチンは何度もNATOと話し合いを持とうとしたが、NATOが相手にしなかった。プーチンがこれ以上、領土拡大を目論んでいるとは思えない。ロシアはすでに広大な自国の領土を抱えており、その保全だけで手一杯だ。

●バイデン政権のヌーランド国務次官は「断固たるロシア嫌いのネオコン」だ。

●アフガニスタン、イラク、シリア、ウクライナと、米国は常に戦争や軍事介入を繰り返してきた。戦争はもはや米国の文化やビジネスの一部になっている。

ここで言及されているミアシャイマー教授は、次のように述べています。

●特に2021年の夏、ウクライナ軍がドンバス地域のロシア軍に対して無人偵察機(ドローン兵器)を使用したとき、ロシア人を恐怖させました。

●アメリカはウクライナがどうなろうと、それほど気にかけていません。アメリカ(バイデン)は、ウクライナのために戦い、兵士を死なせるつもりはないと明言しています。アメリカにとっては、今回の戦争が、自国存亡の危機を脅かすものではないので、今回の結果はたいして重要ではないのです。しかし、ロシアにとって今回の事態は自国ロシアの存亡の危機であると思っていることは明らかです。両者の決意を比べれば、ロシアに圧倒的に強い大義があるのは、自明の理です。

●ここで起こったことは、アメリカが、花で飾られた棺へと、ウクライナを誘導していったことだけだと思います。

●アメリカは棒で熊(ロシア=プーチン)の目を突いたのです。当然のことですが、そんなことをされたら、熊はおそらくアメリカのしたことに喜びはしないでしょう。熊はおそらく反撃に出るでしょう。

さあ、どうしましょうか? 目を突いたのがNATO/アメリカであれば、NATO/アメリカはひとまず棒を引いて脇に置き、闘いをいったん休止し、ゼレンスキー大統領はウクライナ国民に国づくりの方針を改めて問うべきではないでしょうか?

自国だけでは賄いきれない軍費をこれからもアメリカやNATO諸国から調達し続け、国境を接する隣国ロシアとの軍事緊張を延々と抱え込みながらNATO加盟への道を突き進むのか、あるいは、非核・非同盟・中立の国づくりも選択肢に入れながら新たな平和的な道を模索するのか、問うてみたらどうでしょうか?

民主主義大国を標榜しながら、アメリカはこうしたウクライナ国民による民主的な意思決定を嫌がるに相違ありませんので、各国と国連はアメリカに「ウクライナ国民の意思決定過程に介入しないよう」強く働きかけなければなりません。アメリカの属国にも等しい日本の政府は、こうしたアメリカへの働きかけに積極的に、あるいは、おずおずとでも賛成できるでしょうか?

(「2022年3月~5月ウクライナ戦争論集」より転載)

 

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安斎育郎 安斎育郎

1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。

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