【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ウクライナ戦争再 々 4 論

安斎育郎

(参考資料) 5月3日は憲法記念日:円山音楽堂での憲法集会(2022年5月3日)

5月3日午後2時45分から円山音楽堂で憲法集会がありました。会場参加者は約2,500人、ユーチューブは17時現在で927人視聴 、会場 でのカンパは 70 万円を超えました 。

私は代表世話人の上田勝美さん(龍谷大学名誉教授、憲法研究所代表委員)、木戸衛一さん(大阪大学大学院国際公共政策研究科教授、ドイツ政治)とともに参加し、代表して開会の挨拶をしました。三重構造の気密性の高いマスクをしていたので、演説するには息苦しいと思い、外したマスクをマイクに被せて話しました 笑 。会場から若干の笑いと拍手が起こりました。

いま私たちの目の前では悲惨な戦争が起こっています。「国権の発動としての戦争を放棄した」日本とそうでない国との歴然たる違いを目の当たりにしている訳ですが、私は、ロシアという熊が暴れているのは何とかして檻に入れるなりしなければなりませんし、ケガを負った人への手当てや逃げてきた人へのサポートをしなければならないことには議論の余地はないものの、同時に、熊を突っついて暴れさせた原因はしっかり見据える必要があると思います。

事の始まりは2008年4月のブカレストでのNATO 首脳会議で、アメリカのブッシュ大統領がウクライナのNATO 加盟を提案したことでしたが、その時は合意が得られずに「将来の加盟」の可能性を約しただけでした。

しかし、翌2009年に発足したオバマ政権のバイデン副大統領は、在任中の8年間に6回もウクライナを訪れ、 NATO 加盟を執拗に促し続けました。そして、2013~2014年のユーロ・マイダン・クーデターの機会に乗じてアメリカの傀儡政権づくりに乗り出し、ついに2018年2月7日にはウクライナ憲法116条に「首相はウクライナのEUおよびNATO加盟に努力する義務を負う」ことを明記させました。これは国境を接するロシアに安全保障上の懸念を抱かせました。

今日、日本政府は、国権の発動としての戦争を放棄した憲法をもつ国として、ウクライナ戦争の和平に向けて世界に訴えかける特別の役割を果たすべ きだと思います。戦争当事国には戦争をやめて和平に向かうよう働きかけること─それこそが今日の集会の重要な意味だと思い
ますが、同時に、戦争の原因をつくったアメリカには、武器供与によって戦争を長引かせるのではなく、和平交渉の進展に向けて役割を果たすよう、強く働きかけなければならないでしょう。

今後とも皆さんのご協力を宜しくお願いいたします。

(「2022年3月~5月ウクライナ戦争論集」より転載)

 

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安斎育郎 安斎育郎

1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。

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