【連載】社会学作家・秋嶋亮の「リアリティ・オブ・ジャパン」

秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/35:「憲法クーデター」とは何か

秋嶋亮

つまるところ高市内閣とは「戦時内閣(戦争のために組閣された内閣)」なのだ。

なにせ彼らは組閣直後から9条撤廃をぶち上げ、防衛費の3倍増を宣言し(その財源確保のため医療費の削減をゴリ押しし)もはや軍国化を公言して憚からないのだ。

そして先の国会では「台灣有事は日本の存立危機事態になり得る」と答弁し、集団的自衛権を行使する形で中国と台湾の戦争に介入する意思を示したのだが、これはもちろん高市の独創ではない。

90年代にアメリカの元国防次官補ジョセフ・ナイが策定した「対日超党派報告書」には、‘中国が台湾に侵攻した場合、米国は台湾防衛に介入し、日本は安保に基づき米軍の後方支援を行う。これにより、日本が中国側から敵と見なされ日本の領土が攻撃された際には、日本は「存立危機事態」に基づき自衛隊を派兵し、米中日が全面戦争に突入する‘と詳細に記されている。つまり、高市はこのシナリオを忠実に実行しようとしているわけだ。

「存立危機事態」を簡単に説明すると、これは2015年に成立した「平和安全法制整備法」の包括法案(事態対処法)であり、内閣の閣議決定と国会の事後承認という簡素な手続きで(国民の合意がないまま)自衛隊の派遣を可能にするトンデモ法案である。

もちろん自衛隊は直接的な武力攻撃はできないが、アメリカの兵站を担うことで中国から事実上の敵国と見なされることにより(ジョセフ・ナイのレポートの目論見通り)まんまと戦争に巻き込まれる仕組みなのだ。もっと言えば「存立危機事態」は日本がアメリカの公共事業戦争に受動的に参戦することを目的に設計されているのだ。

かくしてこれまで陰謀論として語られてきた「対日超党派報告書」は、高市内閣の登場によって俄然現実味を帯び現実化しつつあるのだ。言い換えるならば、高市内閣という「戦時内閣」によって、フィクションがリアルに転化しつつあるのだ。

こうした中で高市は改憲をゴリ押ししているが、先日の質疑で「内閣は憲法改正原案を国会に提出できる」と無知蒙昧な答弁をしたことをご存じだろうか。高市はその根拠として憲法第72条を挙げているが、それが許すのは法律案や予算案だけであり、改憲原案の提出は総理大臣の権限の範疇にはないのだ(改憲原案の提出権者は国会議員であり、総理大臣や内閣はその調整役にとどまるのだ)。

つまりこれは憲法を不正に解釈して独裁政権を作る「憲法クーデター」ないしは「自己クーデター」なのである。

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秋嶋亮 秋嶋亮

☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。

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