[講演]広瀬隆(作家)二酸化炭素地球温暖化説は根拠のまったくないデマである〈中編〉

季節編集部

・地球温暖化論者が熱中する自然エネルギーは素晴らしいものなのか

次は地球温暖化論者が熱中する自然エネルギーはそれほど素晴らしいものなのかという問題です。長野県山中の我が家の目の前でも、都会の地球温暖化論者のために大自然の中にメガソーラーが敷き詰められ始めています。

後継者がいなくなって土地を売りたがっている農家の人たちを、金を持っている連中が見つけては土地を買い漁る。正気を失った人間たちのために何十年も育てられてきた見事な山林が次々と伐採され、真っ黒な醜い太陽光パネルが広がっていく。これに私はぞっとしています。早くこれを止めないとだめです。木が育つには時間がかかるから、切ったら大変なんです。

福島原発事故の後、私は400回を超える講演会で日本全国を回ってきました。どこへ行っても醜い太陽光パネルが広がり始めている。九州の国東半島などでは巨大な風力発電機で埋め尽くされています。地元の住民が止めてくれと叫んでも、一部の反原発運動家は地球温暖化論者と一緒になって、自然破壊を進めています。自分が何をしているかを考えてみてください!

ただし、私は太陽光発電を全面的に否定しているわけではありません。自宅の屋根や工場に太陽光発電パネルを設置することはどんどん、ゆっくりやりなさい。普及していいですよ。だけど、太陽が出るのは昼間だけ。だから蓄電用のバッテリーが必要になるけど、バッテリーはまた公害を起こす。私はその点を心配しています。

それと、雨の日や曇りの日も発電能力はがたっと落ちる。雪が積もればまったく発電できない。長期的な毎日のメンテナンスには、大変な労力とお金がかかる。家庭内ならば、これでもなんとか我慢できます。だけど、日本で最大の電力を消費する工業界と店舗などは、こんなものには頼れません。

こうしたことは技術論を知っている人間の常識です。自然エネルギーの最大の欠点は、対面積当たりに得られるエネルギーが非常に小さいことです。同じ電力を生み出すのに、太陽光発電は水力発電ダムの4倍の面積を必要とします。より効率的なガス火力の160倍の面積を必要とします。だから、こんなものを再生可能エネルギーと呼ぶのは間違いです。メガソーラーは正しくは自然破壊エネルギーです。

風力発電も、風(空気)の質量は水の質量の770分の1しかない。だから巨大な面積を必要とします。無風や微風ならまったく発電しません。暴風の時は危険なので運転を止めなければなりません。その結果、広大な面積の自然が破壊されます。だから自然エネルギーが主体になれば、停電がしょっちゅう起きることになる。

また、高さおよそ100メートルの大型風力発電機は秒速12メートルの風を受けると1基で1500キロワットを発電すると言われています。そのためには羽根のブレード3枚が直径80メートルの円を描いて高速に回ります。80メートルというのは新幹線3輛分の巨大な長さです[図表6]。

こんな巨大なものがぐるぐる回っているところにあなた方は住めると思いますか? 私は以前、ドイツに行きましたけれど、もうひどい。ドイツ北部はこの巨大な風力発電機に占められた。主力発電を風力発電にしたことでの自然破壊はいまや目も当てられない状況です。しかも風力発電による低周波振動の被害もあって、近隣住民は耐えられず、病人だらけになってしまう。

Wind turbines in Navarre (Spain) Renewable energy concept.

 

日本で風力発電を行っているところは、青森県の六ヶ所村など原発のあるところがほとんどです。つまり、電力会社が原発への目をくらまそうとして造ってきたのが風力発電なのです。
ところが、温暖化説の中で騒いでいる世界自然保護基金(WWF)の人たちが2050年までに「再生可能エネルギー100%」を実現すると嘘をついているシナリオを見てください[図表7]。

WWFは石油、石炭、天然ガスをなくそうとして、自然保護を名乗る自然破壊者です。環境保護をお題目に絶えず停電する可能性のある不安定な自然エネルギー100%普及を主張するWWFの人間は、いわば殺人者です。なぜなら腎臓病の人工透析患者、人工呼吸器がなければ生きられないコロナ患者、常時安定した電気を必要とする障がい者、手術中の病院……。これらは電気が安定して供給されることを前提にしています。こうした人たちを殺そうとしているわけですよ。

特にコロナの時代には、一般企業でもリモート事業を受ける学生でも、パソコンが停止すれば何もできなくなる。そうした世界に人類は生きているのです。無駄な電気を節電して、必要な電気を有効に使っていくことは当たり前のことです。ところがこの当たり前のことを否定するのが自然エネルギー普及論者なのです。自然エネルギーの利用は、時と場所を選ぶ。発電所がない離島や個人住宅や工場内に限って使うべきでしょう。だけど、それ以上は必要ないし、資源の有効利用とエネルギー効率から考えて、普及すべき利点はまったくありません。

・自然エネルギー発電の致命的な欠陥

自然エネルギー発電には、致命的な欠陥がまだあります。それは、太陽光発電でも風力発電でも水力発電でも、生み出すのは電気だけだということです。電気しか生み出さない。しかし、家庭の消費エネルギーに必要なのは電気だけではありません。むしろその6割以上を占めるのは熱エネルギーです(ただし屋根に設置する太陽熱温水器は発電機ではないので、熱利用には有効です)。

Ecology Concept Banner Template in Flat Design. Vector Illustration. Solar Panels and Wind Turbines – Green Energy Technology. Ecology, Environment and Pollution. Save the Earth. Think Green.

 

私はよく講演会でこんな質問をします。「家庭のエネルギーは何に一番使われているのか?」すると多くの人が「エアコン」「クーラー」と答えますが、はずれです。[図表8]は2008年度のデータですが、暖房は24%ですが、給湯は30%です。これに台所まわり(8%)を加えて現在でも62%を熱に使っています。電気でなければならないのは照明・動力(テレビ、パソコン、冷蔵庫など)が34%で冷房が2%と合わせても36%ほどです。風力やソーラーの自然エネルギーの最大の欠点は、この熱エネルギーを生み出さず、自然を破壊することです。

じゃあどうしたらよいのか? 例えば日本ではエネファーム(=燃料電池)がすでに商品化されています。エネファームは電気と熱を同時に踏み出す理想的なエネルギーシステムです。
「燃料電池」はその名称が誤解を与えやすいけれど、電気を貯める電池ではなくて小型の発電機です。水を電気分解すると水素と酸素が生まれます。これを1839年にイギリス人ウィリアム・グローブがその逆の反応、つまり、水素と酸素を電気化学的に結合させることによって電力を生み出せることに気づきました。これが燃料電池の発電原理です。

ところがそれ以前にマイケル・ファラデーが磁場を利用した今日の発電機の原理を発見し工業的に成功していたので、燃料電池は200年近く忘れさられ、宇宙ロケット以外では一般的に実用化されませんでした。しかし燃料電池は、発電によって発生するのは「熱と水だけ」という究極のクリーンエネルギーです。そして、この技術を商業的に成功させたのは現在まで世界で日本だけです。

Michael Faraday (1791–1867) was an English scientist who contributed to the study of electromagnetism and electrochemistry. His main discoveries include the principles underlying electromagnetic induction, diamagnetism and electrolysis.Vintage etching circa late 19th century.

 

私の家で実際に使っている燃料電池の商品名はエネファームです[図表9]。これを2008年から13年以上使用してきました。東京ガスの都市ガスを使ってパナソニックの燃料電池が発電する。トラブルはまったくなし。とにかく素晴らしいです。2019年には、100万円で新しいモデルに交換して快調に発電を続け、発電するたびに左側のタンクにたまるお湯を使って給湯してくれます。都市ガスとプロパンガスのどちらでも利用できるので、すべての家庭で使えます。

一方、「グリーン」と叫んで自然を破壊し続ける活動家たちは何をしているか?1000 億円でサハラ砂漠南部の地域に自然エネルギーで3000万人の住民に電気を供給すると謳っています。しかし、同じ1000億円でも天然ガスの火力発電を造れば、3倍の9000万人の住民に電気を供給できます。なぜ発展途上国を貧困に追い込み、非文明的な自然エネルギーを好むのか?(マーク・モラノ『地球温暖化の不都合な真実』日本評論社)。

斎藤幸平は「化石燃料を使う資本主義は悪だ」と主張するが、ならば寒い冬に戸外で「自然のまま」に暮らしてみなさい。彼はドイツのフンボルト大学に留学していた頭のいい男のはずなのに、ドイツ人の生物学者、エルンスト・ヘッケルが唱えた「エコロジー」が「生態学」であるという意味さえ知らずに大学の先生をしています。要するに「CO2は生態系に悪い」と反エコロジー思想を学生に教えている。だって、化石燃料を使わない生活が立派で上品な営みだと言うのは、貧しいほど立派で上品だと思うことに等しいのです。そんなこと言うのは野蛮人ですよ。

逆に言えば、化石燃料によって得られるエネルギーは自然エネルギー発電よりはるかに小さな面積で大量のエネルギーを生み出せるので、電力を大量に消費する大都会で無理なく利用できるのです。横浜市磯子の石炭火力発電所がその好例です。原発のように地方に行かなくても使える。地産地消で自然を破壊せずに済む。私は自然エネルギーを全面的に否定するわけではない。でも、大都会で使えない発電方法は、日本全体の大きな消費電力を満たすにはほとんど役に立たない。

・鉄とはげ山と産業革命

これには実績があるのです。1700年代までヨーロッパでは、鉄鉱石を溶かす燃料に木炭が使われていて、その消費は莫大な量でした。この木炭のためにヨーロッパ中で大規模な森林伐採が行われ、産業革命直前には欧州の木炭消費量は年間2億トンに達していた。そのために、毎年およそ1万平方キロメートルもの森林が消えていました。この面積は現在のスイスの国土の4分の1に当たります。つまり4年ごとにスイスの全面積に相当する森林が消滅していた。凄まじい被害です。

そこに1765年、ジェームズ・ワットが蒸気機関を発明した。石炭火力を使って産業革命を起こした。この石炭のおかげで木炭がいらなくなり、ヨーロッパの森が生き返った。みなさんもヨーロッパに行くとメルヘン街道なんて美しい森を見るでしょう。あれは産業革命のおかげなんですよ。でなければメルヘン街道も何もない。森林がみんなはげ山になっていた。

James Watt on engraving from the 1850s. Scottish inventor and mechanical engineer. Engraved by C.E. Wagstaff and published in London by Charles Knight, Pall Mall East.

 

この産業革命の時代を経て、だいたい1750年から250年間に、世界の人間の平均寿命は26歳から69歳へと延びた。人口も7億6000万人から68億人へと9倍にも増えた。平均所得も6万4000円から73万円へと11倍に増えた。これはすべて化石資源を利用してエネルギー源にしたおかげです。それを[図表10]のグラフで見ると、1750年頃から石炭を燃やしてCO2排出量が増えて、人類の平均寿命も急速に上がったのです。人間の人口もGDPも同じように急上昇した。進歩と共に公害も起こした。だけど公害については別の話で、あとで触れます。

19th century illustration of Barrow hematite steel works, in Cumbria, England. Published in ‘The Practical Magazine, an Illustrated Cyclopedia of Industrial News, Inventions and Improvements, collected from foreign and British sources for the use of those concerned in raw materials, machinery, manufactures, building, and decoration.’ (Wedwood, Watt & Co./ W.P. Bennett & Co., London/Birmingham, 1873).

 

日本では2011年の福島第一原発の大事故の後、いろんな人が「電気が悪い」なんて言ったけど、電気は何も悪くない。それは1821年、前述のマイケル・ファラデーが現在の発電機の原理を発明した。以来、人類が200年も使ってきた便利な道具が電気なのです。原子力発電は発電方法が危険で間違っているだけで電気は悪くない。電気は便利。道具は便利な方が良い。環境保護活動家たちを野蛮人と私が呼ぶ理由は、石炭火力を悪と決めつけ攻撃するからです。ならば私は、石炭火力を悪と決めつける人たちを「悪」と決めつけますよ。

私の同志だった故・室田武さん(同志社大学教授)も石炭の大切さを証明するグラフを書いていました[図表11]。2012年4月に作成した日本原電(原子力)とJパワー(石炭火力)の卸電力単価の比較グラフです。前者に比べていかに後者が安価なのかがわかります。[図表12]はアメリカの新規発電所の電源別コスト(2016年)の比較です。ガスコンバインドサイクルが圧倒的に安い(63~66ドル)のがわかります。石炭火力(95~109ドル)も安い。日本の風力コストは150ドルぐらいです。ここに太陽光のコストも入っていますが、これが石井彰さんが書いた本にあった数値で400ドルです。そこは、いろいろな意見はあるでしょう。

それから、水素、水素と言いますけど、みんな知らないんですよ。日本最大の水素メーカーで岩谷産業という会社があります。同社は福島の事故の後、目の玉が飛び出るほど私が驚いた広告を、日本経済新聞2面に全面広告で掲載しました。

福島の事故の直後に「原子力によって水素を生産する」という広告を打った。つまり、日本最大の水素メーカーが目指す水素生産は、原子力を使った最も危険な産業なんです。水素は立派なもんじゃない。そこにすぐあるものでもない。エネルギーの発生量は小さいし、貯蔵効率も悪い。供給可能量もコストも、石油・天然ガス製品に比べて大幅に劣っています。こんなものを使おうという人間の頭の悪さが私には理解できません。大体、ガソリンスタンドを水素ステーションにしようなどということが成功するはずがありません。

自称環境保護活動家たちが最近よく使う「カーボンニュートラル」という言葉があります。これは元々「植物や植物由来の燃料を燃やしてCO2が発生してもその植物は成長過程でCO2を吸収しているから、ライフサイクル全体で見ると大気中のCO2を増加させず、CO2排出量の収支は実質ゼロになる」と考えて、暖炉で薪を燃やしてCO2が出ても大丈夫だと言う。

いわゆる低炭素社会の実現を目指す人たちが必死で叫んでいる言葉です。でも、いいですか? そもそも石炭は樹木の化石だということを彼らは知っているのですか? 石油も天然ガスも、動植物の死骸が分解されて生まれた資源ですよ。つまり、化石燃料は動植物の自然が生んだ「カーボンニュートラル・エネルギー」なのです。

Sustainable development and green business based on renewable energy. Reduce CO2 emission concept. Renewable energy-based green businesses can limit climate change and global warming

 

3億6000万年~2億9000万年前の時代を石炭紀と言います。なぜかというとこの期間に石炭の七割ができたからです。この時期の前半に火山の噴火が相次いで起こった。地底のマントルからCO2が放出され、大気中のCO2は現在(400ppm)の10倍近い3000ppmに増えた。温度も湿度も高くなって植物の成長を促した。その結果、高さ20~30メートルもある巨大なシダ類の大森林が地表を覆った。この森林が長い年月を経て石炭になったのです。こういう地球の基本的な歴史も知らずにデタラメを言うのが、近年の環境保護運動なのです。

だいたい、太陽光パネルの半導体シリコンを製造するうえで、原料の金属シリコンを半導体シリコンに精製し、薄いウェハーに加工して、パネルに組み立てて、商品として完成させる、その一連の工業生産プロセスで使われるエネルギーは化石燃料なのですよ。

自然エネルギー電力でメタンガスを作るという「メタネーション」も絵に描いた餅にすぎません。いままでより無駄なエネルギー浪費を強いるのが文明に遅れた地球温暖化論者です。ガス会社がこんなことをやる必要ないですよ。バカげた自殺行為です。いまのままでいいんですよ。私は地熱発電も大地震を誘発するので反対です。温泉も枯渇させます。

 

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