【特集】ウクライナ危機の本質と背景

ブチャの虐殺に数々の疑問

Joe Lauria(ジョー・ローリア)

西側諸国は、ウクライナの町ブチャでの虐殺の責任が誰にあるのかを即断し、ロシアに対するより厳しい制裁を要求しているが、断定するのは早すぎる。とジョー・ローリアは言う。

ジョー・ローリア
コンソーシアム・ニュース特別寄稿

https://consortiumnews.com/2022/04/04/questions-abound-about-bucha-massacre/

・ブチャの虐殺に数々の疑問

ウクライナの首都から北へ63キロの町ブチャで大虐殺があったというニュースが日曜日に流れた後、数時間のうちに判決は出た。

ロシア軍は無差別に何百人もの罪のない市民を虐殺し、その死体を通りに散乱させたまま町から撤退したという判決が。
西側諸国は自国で持つ司法制度とは異なり、戦争となると、調査や証拠の必要性を省き、政治的動機に基づいて有罪を宣告する。ロシアは有罪だ。一件落着。

しかし裁判もまだ開かれていないのに、判決はすでに出されている。例えば、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ロシアの石炭と石油をヨーロッパで禁輸措置とするよう求めている。「戦争犯罪の非常に明確な兆候がある 」と、彼は月曜日のフランス・インターラジオで言った。「ブチャで起きたことで、新たな制裁と非常に明確な措置が必要とされており、ヨーロッパのパートナー諸国、特にドイツと協調していく」と述べた。

他には、この事件をうけて、米国がロシアと戦争せよという危険な呼びかけが高まっている。

「これはジェノサイドだ」とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領はCBSの「フェイス・ザ・ネイション」で語った。「ロシア人の母親たちはこれを見るべきだ。どんなろくでなしを育ててしまったのか、見てほしい。殺人者、略奪者、虐殺者たちを育てたのだ」とテレグラムで付け加えた。

ロシアは、この大虐殺との関係を断固として否定している。

・どこから始めるか

もし、本格的な調査が行われるとしたら、調査官が最初に着手するのは、精密な事件の時系列を作ることだろう。ロシア国防省によると、先週水曜日、ロシア軍は全てブチャを離れた。これは木曜日、ブチャ市議会の公式Facebookページのビデオで、笑顔のアナトリー・フェドルーク(Anatolii Fedoruk)ブチャ市長が確認していた。 動画に添えられた翻訳投稿にはこうある。

「3月31日、ブチャの解放の日。これはブチャ市長のアナトリー・フェドルークが発表したものです。この日は、ウクライナ軍によるロシア占領軍からの解放の日として、ブチャとブチャのコミュニティ全体の輝かしい歴史に刻まれるでしょう」。

ロシア軍はすべていなくなったのに、大虐殺があったという話は出てこない。にこやかなフェドルークは、ブチャの歴史の中で「輝かしい日」だと言っているが、もしフェドルークの周りに何百人もの民間人の死体が散乱していたら、とてもそうは思えないだろう。

「ロシア国防省は、キエフ州ブチャでの民間人殺害の疑いに関するキエフ政権の非難を否定した。ブチャでの犯罪の証拠が現れたのは、ウクライナ治安維持局とウクライナメディアの代表が町に到着してから4日目のことである。ロシア軍は3月30日にブチャから完全に撤退し、ブチャがロシア軍の支配下にあった間、『一人の地元住民も負傷しなかった』」とロシア国防省はテレグラムへの投稿で述べている。

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Joe Lauria(ジョー・ローリア) Joe Lauria(ジョー・ローリア)

コンソーシアム・ニュースの編集長。The Wall Street Journal、Boston Globe、その他The Montreal GazetteやThe Star of Johannesburgなど多数の新聞社の元国連特派員。ロンドン・タイムズ紙の調査記者、ブルームバーグ・ニュースの金融担当記者を務める。19歳のときにニューヨーク・タイムズ紙のストリンガーとしてプロとしての仕事を始めた。 連絡先は、joelauria@consortiumnews.com。Twitterでは、@unjoe。

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