ブチャの虐殺に数々の疑問
国際・次に何が起こったのか?
では、金曜日と土曜日には何が起こったのだろうか。スタンドポイント・ゼロのジェイソン・マイケル・マッキャンの記事で指摘されているように、ニューヨーク・タイムズ紙は土曜日にブチャにいたが、大虐殺を報じていない。その代わりに、タイムズ紙は、撤退が完了したと市長が言った2日後の土曜日に、撤退が完了したといい、「目撃者、ウクライナ当局者、衛星画像、軍事アナリストによれば、ロシア軍は兵士の死体と燃えた車両を残していった」と述べた。
タイムズ紙は、記者が6人の民間人の遺体を発見したと述べている。「彼らがどのような状況で死亡したかは不明だが、頭を撃たれた一人の男のそばには、ロシア軍の配給品の廃棄された包装が落ちていた」と同紙は述べている。そして、ゼレンスキーの顧問の以下の言葉を引用している。
「兵士に射殺された、手を縛られた状態の人々の遺体が通りに転がっている 」と、この顧問のミハイロ・ポドリヤック氏はツイッターで述べた。「この人たちは軍隊に所属していなかった。武器も持っていない。彼らは何の脅威も与えていなかった」。
ポドリヤック氏は、Agence France-Presseが撮影した、道端に3人の遺体、うち1人は手を後ろに縛られているように見える現場の画像を添付した。ニューヨーク・タイムズ紙は、ポドリヤック氏が主張している、これらの人々が処刑されたということを、独立した方法で検証することはできなかった。
土曜日の時点ではまだこの惨事の全容は明らかになっておらず、市長でさえその2日前の時点で気づいていなかった可能性はある。しかし、写真によると、現在多くの遺体が町の通りに野ざらしになっており、おそらく見逃すことは困難だったであろう。
ブチャでは、タイムズ紙はネオナチのアゾフ大隊と近い関係にあり、その兵士たちが同紙の写真に写っている。マッキャンは、その記事の中で、アゾフが殺害に関与している可能性を示唆している。
「4月2日(土)、国内外のメディアに大虐殺が取り上げられる数時間前に、非常に興味深いことが起こる。米国とEUが資金を提供するゴルシェニン研究所のオンライン[ウクライナ語]サイト『レフトバンク』は次のように発表した。
「特殊部隊は、ウクライナ軍によって解放されたキエフ地方のブチャ市で掃討作戦を開始した。街から破壊工作員やロシア軍の共犯者は一掃されつつあると」。
ロシア軍はもう完全に撤退しているので、これはどう考えても報復にしか聞こえない。国家機関が『破壊工作員』や『ロシア軍の共犯者』を探すために市内をくまなく回っているのだろう。前日(金曜日)には、町議会当局を代表するエカテリーナ・ウクレンチヴァが、ブチャ・ライブのテレグラムページの情報ビデオに登場し、軍服を着てウクライナの旗の前に座り、「『街の浄化を』宣言したばかりだ。彼女は、アゾフ大隊の到着は解放が完了したことを意味せず(しかし、解放は完了しており、ロシア軍は完全に撤退していた)、『完全な掃討』を行わなければならない」と住民に告げた。
ウクレンチヴァがこれを話していたのは、町長が、町が解放されたと言った翌日のことである。日曜日の朝までに、世界は何百人もの人々が虐殺されたことを知った。アントニー・ブリンケン米国務長官は次のように述べた。
「我々は、ブチャとウクライナ全土におけるクレムリン軍による明らかな残虐行為を強く非難する。我々は、あらゆる手段を用いて説明責任を追及し、責任者の責任を追及するために情報を文書化し、共有している」。
ジョー・バイデン大統領は月曜日、「戦争犯罪」裁判を要求した。「この男は残忍だ。ブチャで起きていることは言語道断であり、誰もがそれを見ている。戦争犯罪だと思う」と言った。
ブチャの事件はこの戦争の正念場だ。公平な調査が必要であり、おそらく国連にしかできないであろう。アゾフ大隊がロシアの協力者に報復したのか、それともロシア側が虐殺を行ったのか。
米国が直接ロシアと戦うというような無責任な声があることもあり、性急な判断は危険である。しかし、実際性急な判断が下されてしまっている。
※この記事はカナダ・バンクーバー在住のジャーナリスト・乗松聡子さんが運営するPeace Philosophy Centreの翻訳記事(http://peacephilosophy.blogspot.com/2022/04/joe-lauria-questions-abound-about-bucha.html)からの転載です。
コンソーシアム・ニュースの編集長。The Wall Street Journal、Boston Globe、その他The Montreal GazetteやThe Star of Johannesburgなど多数の新聞社の元国連特派員。ロンドン・タイムズ紙の調査記者、ブルームバーグ・ニュースの金融担当記者を務める。19歳のときにニューヨーク・タイムズ紙のストリンガーとしてプロとしての仕事を始めた。 連絡先は、joelauria@consortiumnews.com。Twitterでは、@unjoe。