巨大製薬企業に国家予算流出、政府に阻害された「日本製ワクチン」
社会・経済・前理事長が厚労省官僚に苦言
AMEDの初代理事長の末松誠・慶應義塾大学医学部教授は、コロナ禍が始まってすぐの2020年3月に、続投を希望したにもかかわらず退任した。後任には三島良直・東京工業大学名誉教授が就任したが、彼の専門分野は精密工学や材料工学であり、医療分野は畑違いという。
不本意に退任させられた末松前理事長は、厚労省の大坪寛子・大臣官房審議官に対する不満を漏らしていた。退任前の1月9日には、大坪氏も参加する「第10回AMED審議会」の席で、彼女のAMEDへの干渉を強く非難していたことが議事録から読み取れる。
末松前理事長は、「大坪氏が次長になられてから、我々のオートノミー(自立性)は完全に消失した」「各省の予算のマネジメントに関する相談等は全部(内閣官房の)健康・医療戦略室を通してやるように。また担当大臣や政治家とコンタクトをとるな、と大坪次長から言われている。その証拠も残っております」「理事長執行型の調整費も、ストップ状態になっております」と発言している。
さらに「最初の3年間は非常に順調な運営ができたが、大坪次長が関与してから、80億円ぐらいあるトップダウン型調整費の使い道に我々の意思は全く入っていない。健康・医療戦略室が決めているが、我々にも執行責任が及ぶわけです。健康・医療戦略室のスタンスは自分たちが決定をするけれども、執行によって何か問題が起きたときはAMEDが全責任をとれ、当時の大坪次長は、そのようにおっしゃっております」と述べている。
つまり、予算の執行は内閣官房の健康・医療戦略室が決めているということだ。
内閣官房の健康・医療戦略室次長から、非常勤のAMED担当室長になった大坪氏は、厚労省の大臣官房審議官でもあるが、週刊文春に、当時安倍政権の首相補佐官だった和泉洋人氏と京都出張で不倫デートをしていたとすっぱ抜かれている。
また大坪氏は、京都大学の山中伸弥・iPS細胞研究所所長に対しては、和泉氏とともに訪問し、iPS細胞事業への補助金支給は「私の一存でどうにでもなる」と恫喝的な発言を投げつけた。
2020年1月29日の参議院予算委員会では、立憲民主党の杉尾秀哉議員が「要するに虎の威を借るナントカで、こういうことをやっていたんじゃないですか!」と声を荒げて大坪氏を追及。大坪審議官のアカデミズムへの恫喝は、安倍政権の本質に関わる問題だと指摘している。
山中教授は2019年11月に日本記者クラブで会見し、「(政府支援を)いきなりゼロにするのは相当理不尽」「透明性の高い議論での決定なら納得だが、違うところで決まってしまうと理由がわからない」と訴えた。
末松前理事長も、AMED審議会で「トップダウン型の調整費80数億円が、厚労省の全ゲノム解析実行計画に使われると決定されたが、予算の執行に管理責任を担うAMEDから見て不透明な決定プロセスであり、研究者コミュニティから見ると、研究費を応募した側と審査した側が同じになっている利益相反状態。恣意的な省益誘導が行なわれたと言われても反論のしようがない。これからiPS、ゲノム、ほかの科学技術の領域にも大きな悪影響を及ぼすことを懸念しております」と述べている。
・国産ワクチンが申請されそうだが…
だが、大坪氏を非難した末松前理事長も、悪評のある人物だ。
週刊朝日2013年2月1日号の「『安倍首相の主治医になりたい』慶大医学部で内紛勃発」によれば、安倍元首相の後任主治医を決める慶応大学の教授選考委員会で、議長を務める末松氏が、強引に自らに決定。ほかの教授は「臨床医ではなく、基礎医学の教授である末松学部長が、さらに消化器内科の候補者になることも疑問視された」と述べたという。
ある教授は「そうまでして安倍首相の主治医になりたいのか、めちゃめちゃですよ。こんな暴挙がまかり通るのは、末松学部長が自分に近い同級生などを次から次へと教授にし、地固めをしてきたからです」と語った。独断専行や虎の威を借るナントカは、大坪氏だけではないようだ。
AMEDの発足に先立ち、日本生化学会・日本分子生物学会・日本免疫学会・日本癌学会・日本神経科学学会・日本細胞生物学会・日本ウイルス学会は連名で、基礎研究予算の縮小につながる恐れがあるとの懸念を表明。政治家と関係のある製薬会社や、官僚の天下り先が優遇される、と指摘されていた。
ところで、石井教授の研究はその後どうなったのか。確認すると、2018年に一度は断念した治験も、大手製薬会社と共同研究にすることで継続し、今年度中に厚労省に申請の見込みという。
石井教授が2016年の夏頃に国から「企業に当たってくれ」と言われた後の2017年8月に、大手製薬会社には、「ウイルス感染症遺伝子ワクチン開発」としてAMEDの助成金が承認されていた。
今年5月に大手製薬会社は、新型コロナウイルス感染症mRNAワクチンの開発状況について「既承認mRNAワクチンと同程度以上の有効性を示し、重篤な副反応事例は認められない」と報道各社にリリース。政府やAMEDがワクチンの国産化に積極的になったのは、新たな国産ワクチンの開発に目途がついたからのようだ。
副反応のない国産ワクチンが出来れば朗報なのだろうが、8月11日放送のCBCテレビ〈「原因究明を」13歳少年がワクチン接種後入浴中に死亡 両親が告白〉によれば、これまでコロナワクチン接種後に死亡した人は1796人おり、そのほとんどを厚労省は「評価不能」として因果関係を認めていない。
その実態解明と検証は、国富の海外流出とともに、避けることが許されない問題である。
(月刊「紙の爆弾」2022年11月号より)
関連資料:<ISF公開シンポジウム>「コロナ&ワクチン問題を考える〜ワクチン接種の安全性・有効性を問う」第1部(井上正康・大阪市立大学名誉教授、木村朗ISF編集長)
〇ISF主催公開シンポジウム(11月25日開催)『ウクライナ危機と世界秩序の転換 ~情報操作と二重基準を越えて』の申し込み
※コロナ&ワクチン問題関連の注目サイトのご紹介です。
https://isfweb.org/recommended/page-2168/
※ご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
京都府出身。海外情報専門誌記者を経てフリーランスジャーナリスト。