政党交付金の要件を満たしているのか?統一教会より「自民党の解散」こそ急務
メディア批評&事件検証・国会開かず国連総会へ出席した岸田首相
岸田首相が人民の反対を無視して安倍氏の国葬を強行したことで、9月27日は、自民党が葬り去られる始まりとなるだろう。
テレビに出るコメンテーターは「野党は10月に始まる臨時国会で追及してほしい」(元朝日新聞の星浩氏)と言っていたが、それ以前に岸田氏が、政権反対党が求めている臨時国会をすぐに開くべきだった。
ところが、岸田氏は9月20日から23日までニューヨークを訪問、国連総会に出席した。内政が行き詰まると、内閣記者会(正式名は永田クラブ、官邸クラブとも呼ばれる)の常任幹事社19社の記者を同行させ、外遊するパターンだ。
第2次安倍政権で外相を4年7カ月務めた岸田氏は「外交の岸田」をアピールしようと同20日、国連総会初日の一般討論の32番目に登壇。「法の支配に基づく国際秩序の徹底のため、力と英知を結集する時だ」と述べ、ロシアと中国を強く非難し、国連安全保障理事会の具体的改革を訴えた。テレビ各局はちらっとしか映さなかったが、会場はがらがらで、「二番煎じスピーチが眠気を誘ったのか、舟をこぐ人が続出だった」(日刊ゲンダイデジタル9月24日配信)。
岸田氏は9月22日、ニューヨークで内外記者会見を開き、冒頭で約12分、コロナ対応などの方針を表明。司会は四方敬之内閣広報官で、日本側の記者3人と外国(米国)記者2人の質問を受けた。日本側の二人は内閣記者会の幹事社だった。岸田氏は、質問の時から、官僚が用意した問答集を見ていた。5人の記者の指名は事前に決まっており、質問事項も提出されていたのだろう。仕込みの質疑だから緊張感がない。
ブルームバーグ通信・イアン・マーロウ記者は「自民党は日本の防衛費の倍増を求めているが、こうした動きがアジアにおいて緊張を高め、周辺国に不安を与えるのでは」「バイデン米大統領は、中国が台湾に侵攻した場合、米軍を動員する用意がある旨発言したが、日本も米国とともに自衛隊を動員する用意はあるか」と聞いた。
岸田氏は「日本の平和外交の歴史を知る人は不安を感じないと思う。日本は国民の命や暮らしを守るために、法律を遵守する形でしっかり具体的な対応を行なっていく」などと答えた。
8月21日にコロナに感染した岸田氏だったが、翌日に番記者の“ぶら下がり取材”をオンラインで受けた時の光景も異様だった。番記者は官邸内の部屋に集合。「ミス××」などが首相を訪問して物品を贈呈する時に使われる部屋だ。大型モニターに首相の顔が映し出され、番記者が左右に分かれて覗き込むスタイル。赤いロープの仕切り線が設置され、記者たちは声をボイスレコーダーで拾っている。
東京新聞は同25日付で、〈「オンラインなのに密、奇妙だ」「昭和か」岸田首相取材の不自然さにネット上で揶揄〉(山口哲人記者)と題した記事を掲載。〈官邸の担当者は「公邸と官邸を結ぶ専用回線はネット接続しておらず、セキュリティー上も外部とつなげることは考えていない」と説明。双方がオンラインでつながる方式は難しいという〉と触れた。
内閣記者会は日本最大のキシャクラブ。コロナ禍以降、記者会の常任幹事社19社から各1名と、記者会の非常勤幹事社、専門紙・外国メディア・フリーから抽選で10人に限定している。もし、首相の記者会見、ぶら下がり取材がリモートで可能になれば、記者の限定は必要なくなる。
高橋洋一・嘉悦大学教授は財務官僚時代に大蔵省記者クラブと対応した経験から、「オンラインなのだから、それをそのままネットに上げればいいものを、そうした工夫はない。もっとも、それを行なうと、官邸記者クラブの存在意義までなくなってしまう」と指摘している。
岸田首相は9月8日、衆参両院の議院運営委員会で、閉会中審査に出席した。計3時間の審議における岸田氏の説明は、会見やぶら下がり対応などで言ってきたことの繰り返しだった。
岸田氏は「諸外国の議会が追悼決議や服喪の決定をし、各国で国全体を巻き込んでの敬意・弔意が示された」と強調し、「オーストラリアとイスラエルで、公共施設で赤と白のライトアップをしてくれた」と何度も強調した。
衆院運営委員会の山口俊一委員長(麻生派、第2次安倍政権では内閣府特命担当相)は、立憲・共産の議員が統一教会と安倍氏の癒着に関する質問をすると「議運で何度も確認しているが、国葬に関する質問だけにしてほしい」と質問を妨害した。岸田氏に「直接議題と関係ないことには、お答えいただかなくて結構でございます」とまで助け舟を出した。
安倍氏と統一教会の関係こそが、国葬反対の大きな理由になっているにもかかわらず、である。
首相の国会出席は「国会でお決めになること」と言ってきた首相が、勝手に当日の閉会中審査の実施を表明、「テレビ入りで実施」と報道の自由を侵害する独断妄言もあった。
意外だったのは衆院のトップで質問した自民・盛山正仁氏の質問。「戦後これまでの首相経験者の葬儀はほとんどが内閣自民党合同葬。例外が吉田元首相の国葬。担任の先生が国葬を批判していた違和感があった。冒頭発言があったが、内閣自民党ではなくなぜ国葬なのか」「われわれは家族葬で数十万円だ。国民にとって2億5000万円を超える葬儀費用は想像を超える」などと適切に聞いていた。
・メディア代表が国葬参加
英国(正式名は「連合王国」。略称UK)の元首・元帥であるエリザベス女王が9月8日に死去した。英国では10日間の服喪期間を終え、19日に国葬が行なわれた。
海外の君主の死なのに、日本のテレビ・新聞は連日、大々的に報じた。月末に迫った「国葬儀」を前に、日本の人民に「本物の国葬」を示した意義はあったが、多様な見方、事実を伝えるというジャーナリズム原則を逸脱した。朝日新聞は連日、日本の天皇夫妻が参列したことを「英王室と日本の皇室の深い繋がり」と繰り返し強調した。
河西秀哉・名古屋大大学院准教授は9月14日付の共同通信配信記事で、夫妻の「国葬」参列について、「異例で思い切った決断」「国葬の参列には、(英国留学中に)女王にお世話になった義理を果たしたいという天皇の強い意志がうかがえる」と書いた。
日本国憲法は皇室が政治・外交に関与することを禁じていることを、この御用学者は忘却している。
英国では君主制から共和制へという議論が常に行なわれている。君主制への支持は近年、75%から60%に急落し、若い世代では30%台だ。万世一系の天皇制の議論がタブー視されている日本とは全く違う。
女王の死の後、英国では王政に反対する声を上げた市民が警察に逮捕される事件が起き、BBCなどが過剰警備だと報じているが、日本では報道されない。英社会が女王を賛美しているという一色報道だ。
エディンバラでは9月11~12日、「誰が新国王を選んだのか」というプラカードを掲げた女性ら2人が逮捕された。オックスフォードでは同12日、「誰が彼(チャールズ国王)を選んだんだ」と叫んだ男性が逮捕された。
ロンドン警視庁のスチュアート・カンディ副総監補は「市民にはもちろん抗議する権利がある。全警官には、このことを明確に伝えている」という声明を出した。首相報道官も「抗議する基本的権利が、私たちの民主主義の要であることに変わりはない」と述べた。警備は行き過ぎだが、政府・警察の姿勢は日本とは大違いだ。
一方、安倍氏の国葬には、キシャクラブを構成する企業メディア代表(経営・編集幹部)が揃って参加した。「報道のあり方を憂うマスコミ人の会」が反対署名を呼び掛けた。
安倍政権の8年8カ月で、日本の大手メディアの劣化、退廃が加速した。安倍氏はキシャクラブメディアの経営者・編集幹部と高級飲食店で会食を重ねた。東京新聞は9月22日、国葬への不参加を組合に通知した。
社説で国葬儀に異を唱えながら、国葬儀の招待に応じる企業メディア。最悪のダブルスタンダードだ。
キシャクラブメディア企業は、自民党・統一教会とともに、解散してもらうしかない。
・新宿西口で手術後初の街頭演説
8月27日は私にとって大事な日になった。同日夕、東京・新宿駅西口広場で2時間行なわれた「安倍『国葬』やめろ!市民集会実行委員会」が主催した安倍氏の国葬儀開催に反対する集会で、宣伝カーに上り、政府は国葬を止め、自民党は解散すべきだと約5分間“演説”。新宿での国葬阻止行動は8月16日に続いて2回目。尊敬する鎌田慧氏が中心になって準備した。約1000人(主催者発表)が参加した。
実行委のメンバーである「税金私物化を許さない市民の会」(私は顧問)から、声帯を失った障害者(3級)の私に登壇して発信してほしいという要請があったが、ずっと断っていた。しかし、今回、強い要望を受けて、思い切って新宿に出掛けた。
主催者に「元・同志社大学教授の無声ジャーナリスト」として紹介され、最初は電気式喉頭で「2年4カ月前にのどの癌の手術を受けて声帯をなくしたので、司会のあすなろさんに私の原稿を読み上げてもらいます」と短く挨拶。あすなろさんが、よく通る声で読んでくれた。参加者から暖かい拍手、声援を何度ももらった。
テレビでは、 TBS系の「情報7daysニュースキャスター」が報じた。デモに参加した女性の「モリカケ、桜、赤木さんのことについても、ちゃんと明らかにしてもらいたいなと思う。そちらの方にお金を使ってもらいたいと思います」という声を伝えていた。“演説”の後、参加者は「がん手術を乗り越えての活動、感激しました」などと声をかけてくれた。動画がユーチューブにアップされている。(https://youtu.be/XeqcDa6ZL9E)
この20年、やや日刊カルト新聞主筆でフリージャーナリストの鈴木エイト氏は統一教会から敵視されながら、調査報道を展開してきた。私が東京の「たんぽぽ舎」で開催している連続講座の講師を依頼すると快諾してくれ、9月25日に緊急講座を開いた。
安倍氏の国葬2日前の講座。鈴木氏は「安倍暗殺まで、私の記事を載せるメディアは少なく、本の企画も全く通らなかった。『カルト』という言葉もタブーだった。今は発信が自由にでき、充実している」と述べた。
講座のタイトルを決める際、鈴木氏は「『企業メディア』のみを特段に糾弾する意図はなく、社会全体として『なぜそのような状態が続いてしまったのか?』という観点で捉えていきたいと思っている。
現在のいわゆる『企業メディア』はこの16年の反省から、とても精力的な取材を続けている。ジャーナリズムが復活した感がありとても健全なスクープ合戦が行われていると感じる」と私に伝えた。
鈴木氏を先頭に、ジャーナリストが今メディアスクラムを組む時だ。
(月刊「紙の爆弾」2022年11月号より)
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1948年、香川県高松市に生まれる。1972年、慶應義塾大学経済学部を卒業、共同通信社入社。1984年『犯罪報道の犯罪』を出版。89~92年、ジャカルタ支局長、スハルト政権を批判したため国外追放された。94年退社し、同年から同志社大学大学院メディア学専攻博士課程教授。2014年3月に定年退職。「人権と報道・連絡会」代表世話人。主著として、『犯罪報道の犯罪』(学陽書房、講談社文庫)、『客観報道』(筑摩書房)、『出国命令』(日本評論社)、『天皇の記者たち』、『戦争報道の犯罪』、『記者クラブ解体新書』、『冤罪とジャーナリズムの危機 浅野健一ゼミin西宮』、『安倍政権・言論弾圧の犯罪』がある。