【連載】週刊 鳥越俊太郎のイチオシ速報!!

第13回 専守防衛の空洞化は許せぬ/専守防衛の形骸化を招く/専守防衛の形骸化を憂う

鳥越俊太郎

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週刊 鳥越俊太郎のイチオシ速報!!
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リードに挙げた3つの文章は実は3つの新聞社、先週末の社説の見出し。

先ず「専守防衛の空洞化は許せぬ」は朝日新聞12月2日(金)の社説。

2番手「専守防衛の形骸化を招く」は毎日新聞12月3日(土)の社説。

3番手の「専守防衛の形骸化憂う」は東京新聞12月3日(土)の社説。

「敵基地攻撃能力」に徹すれば必ずや日本が戦後77年守ってきた平和──「専守防衛」が「形骸化」すると、朝日新聞は「空洞化は許せぬ」と書き、毎日新聞は「形骸化を招く」と書き、東京新聞は「形骸化を憂う」と書く。

読売、産経はどうかは知らないが、朝、毎、東京の3紙は「専守防衛」という立場から「敵基地攻撃能力」には反対な訳だ。

さて、今日本はテレビつければどこのチャンネルでもサッカーで大盛り上がり後は統一教会問題、ウクライナは熱は冷めたが、テレビにはまだ美味しいらしい。

あ、そうそうまだまだコロナは忘れちゃなりません。と言うことで、とても私が取り上げているこの「敵基地攻撃能力」(反撃能力)問題ははいくら新聞が社説で書こうが日本人の頭に入る隙間もないよねえ!!

さて、新聞各紙を丹念に読むと微妙な違いが浮かび上がる。

朝日新聞は見ただけでもそれがわかる。

12月1日、他紙に先駆け「自公合意」を抜いた。1面トップで「敵基地攻撃 自公が合意」「抑止力高める必要性一致」、また2面には「自衛名目増す攻撃性」と、大きくドーンと見出しを打って「防衛政策を転換」「相手の着手認定当初こだわった公明」「米のための行使は【ノーとは言えない】

この時点では朝日新聞の書き振りは自公の合意の経緯を書いたに過ぎない。

12月3日にも1面トップから3面へと大特集を組んでいるが、朝日の社説氏が「専守防衛の空洞化は許せぬ」と力んだほど自公の「敵基地攻撃能力」に反対の記事を書いているわけではないのが面白い。朝日だから「反対」という訳ではないらしいよ。

見出しだけ見てみよう。
1面トップ記事
「敵基地攻撃能力 保有へ」
「防衛政策 大きく転換」
3面トップ記事。
「敵基地攻撃 あっさり容認」
「公明[安保法制のような騒ぎはない]
「攻撃『着手』どう認定」

朝日の記事は丹念に読んでみると、自公合意に至った経緯を書いているだけで、「専守防衛」の旗を振って反対しているという訳ではなさそうだ。

朝日は変わったなぁ!!という印象か?

朝日に対し毎日新聞は1面で「『反撃能力』保有 自公合意」とさらっと書いているが、3面では「揺らぐ専守防衛」とドーンと構えた感じ。中の見出しも朝日とは明らかに違うね。

「『抑止力強化』に疑問」

先ず公明党の佐藤茂樹外交安全保障会長は11月27日のNHKの番組で「今の迎撃システムだけで国民の命を守り切れるのか。相手に攻撃を断念させる抑止力として、反撃能力を位置付ける意義は(自民と)共有している」と述べた。

毎日の記事はさらにこう述べる。

「だが、日本は憲法九条の下、武力の行使自衛のための『必要最少限度』にとどめる『専守防衛』に徹してきた。反撃能力を行使して相手国を攻撃すれば、更なる攻撃を招き、防衛力の行使がエスカレートする懸念もある。立憲民主党の末松義規氏は29日の衆院予算委員会で『日本が反撃した途端、5倍、10倍返しになる』と指摘した」。

戦争とはそういうものだ。最初は小さな小競り合いから始まって悲惨な大戦に拡大するものだよなぁ。ここは末松さんの言う通りだね。

記事をさらに続けると、「反撃能力を巡っては、実際に行使しなくても、保有すること自体を懸念する声もある。軍事力を強化すると他国も軍拡を加速させ、結果的に緊張が高まる『安全保障のジレンマ』と呼ばれる状況だ。

22日の参院外交防衛委では立憲の小西洋之氏が『反撃能力を持つと宣言すれば、中国、北朝鮮、ロシアとの関係に大きな影響を与える。一定の武力を持つとかえって環境が悪くなることは歴史上何度も繰り返えされてきた』と政府に詰め寄る場面もあった」。

毎日新聞は「反撃力」が「抑止力」どころか、事態、環境悪化につながると立憲民主の議員2人の意見を紹介している。

毎日新聞の論調は社説氏と同様「敵基地攻撃能力」の導入には反対のようだ。

記事の横に「ミニ論点」と題して2人の識者の意見を紹介している。

「迎撃困難『懲罰』重要 元海将 伊藤俊幸氏」

「ミサイルを撃たれても全て撃ち落とす体制により相手にミサイル使用を思いとどまらせる「拒否的抑止」だった。しかし、北朝鮮や中国のミサイル技術が高度化して迎撃が困難となる中、ミサイルを撃ったら反撃されて痛い目に遭うと思わせる『懲罰的抑止』が重要になっている」。

元海将の言う「懲罰的抑止」がどんなものか、ここでは分からないので、効力が平和にどれほど役に立つのかは不明だ。ここでは相手国として中国、北朝鮮が挙げられている。しかし、現実の問題として「懲罰」で参る相手じゃなさそうだ。中国と北朝鮮は。結局「懲罰」は更なる軍事的エスカレーションを生むだけだろう。

2人目の識者、元内閣官房副長官補、柳沢協二氏は「外交で戦争回避を」

「外交努力を考えずに個別の装備政策を議論しても、地に足のついた議論にならない。抑止は万能ではない。反撃能力の保有はもろ刃の剣になりかねない」。

柳沢氏も元政府の幹部だが安全保障の問題では真っ向から違う立場だ。

どちらを取るかは自由だが、個人的には私は柳沢さんの意見に賛成だ。

東京新聞は他の2紙とはかなり違う。

12月3日の1面には横凸版見出しで「専守の歯止め失う」

縦には見出しとしては迫力のある黒地白抜きで「敵基地攻撃能力保有 自公が合意」と打った後前文できっちりと書く。

「自民、公明両党は2日、相手国領域内の軍事拠点を攻撃する敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を認めることで合意した。憲法九条に基づく専守防衛の基本的な方針を変えることになり、武力行使の明確な歯止めが消え、攻撃の応酬につながる恐れもある。

安倍政権での特定秘密保護法や集団的自衛権行使を認めた安全保障関連法に続く安全保障政策の大転換になる」。

東京新聞は先の2紙より事態を正確に読み取っているようだ。

さて皆さんは、今回の「敵基地攻撃能力(反撃力)」について自民党と公明党が合意し、12月末までには国会でも意見集約が行われるそうだが、共産党は反対だろう。維新、国民民主は賛成か?立憲民主党がどう出るか?

不明だ。しかし、聞くところによると、立憲のかなりの議員が賛成するようだ。

この「敵基地攻撃能力」問題を契機に政党の振り分けをしたらいいと思う。

実は日本は保守化が相当に進んでいてまた戦争に入るような空気が日本中を覆うのが怖いよ。

私が82歳。戦争を知る最後の世代。

その世代の一人として、なんと言われようと、最後の一人になってもいかなる形の「戦争」にも反対!!と主張したい。

「敵基地攻撃能力」を保有することはやはり戦争の第一歩だ。

私は柳沢協二さんが毎日新聞紙上で述べられていたように、「外交で戦争回避を」

平和を保つにはこの道しかないと思う。

最後に自民党や公明党、立憲民主党の人たちに問いたいのは中国や北朝鮮が「敵地攻撃」の相手国らしいが、では中国や北朝鮮は何故、日本を狙うのか。いかなる理由で日本へ侵攻するのか?

過去の歴史上には「元寇」が外国の軍隊が日本への侵攻を試みた例ですよね。後は太平洋戦争で日本中を焼夷弾で焼き払い、最後に「原子爆弾」2発で一瞬にして30万人近い日本人を殺害した米軍こそ日本を侵した最大の敵だね。ひょっとすると今回の「敵基地攻撃能力」とやらもアメリカの言いなりなのかね??

自民党に公明党、そして立憲民主党の方々。私の問いに、疑問に答えてくださいよ!!!

(2022年12月5日)鳥越記

 

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鳥越俊太郎 鳥越俊太郎

1940年3月13日生まれ。福岡県出身。京都大学卒業後、毎日新聞社に入社。大阪本社社会部、東京本社社会部、テヘラン特派員、『サンデー毎日』編集長を経て、同社を退職。1989年より活動の場をテレビに移し、「ザ・スクープ」キャスターやコメンテーターとして活躍。山あり谷ありの取材生活を経て辿りついた肩書は“ニュースの職人”。2005年、大腸がん4期発覚。その後も肺や肝臓への転移が見つかり、4度の手術を受ける。以来、がん患者やその家族を対象とした講演活動を積極的に行っている。2010年よりスポーツジムにも通うなど、新境地を開拓中。

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