【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す
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「沖縄対話プロジェクト」が発足!!

与那覇恵子

翌日16日に沖縄2紙は発足集会をそれぞれ次のように報じた。両紙の新聞報道で集会のあらましを知ることはできるかと思う。

1.沖縄タイムス(2022年10月16日付)

・「交流拡大で有事回避へ、台湾めぐりプロジェクト 識者集会」(1面)

「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」は15日、沖縄市民会館で発足集会を開いた。有識者や経済界、若者らが登壇。台湾有事を念頭に台湾や南西諸島で軍事力強化が進む中、沖縄を再び戦場にしないよう、政治的立場や国境、年齢などを越えて対話や交流の輪を広げることを確認した。

来年9月までの活動期間中に3回のシンポジウムを開き、最終的に共通のメッセージを発信する。集会では有識者がオンラインで参加。台湾側には現実的な危機感は薄く、「日米政府が危機をあおり続けている」といった指摘に来場者は熱心に耳を傾けた。

基調講演では丹羽宇一郎氏(日中友好協会会長、元駐中国日本大使、元伊藤忠商事会長)は、東アジアの平和に向け2008年以降開かれていない北朝鮮、中国、韓国、米国、日本、ロシアが参加する六者協議の再開を訴えた。

沖縄側からは宮城弘岩氏(沖縄物産企業連合会長)、元山仁士郎氏(元「辺野古」県民投票の会代表)、玉城愛氏(元オール沖縄会議共同代表)らが登壇した。同プロジェクトは来年2月12日に那覇市のタイムスホールで第1回のシンポジウムを行う。(経済部 新垣亮)

・「中国脅威論『地域を分断』、有識者警戒 対話の必要性強調」(27面)

15日に開かれた「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」の発足集会で互いの意見を述べ会った登壇者は「中国脅威論が中期の分断を生み、戦争をあおることにつながる」と警戒感を示した。その上で沖縄や台湾、中国など各地域が連帯し、様々な場で互いの理解を深める対話や交流のための拠点をつくる必要性を強調した(1面参照)。

オンラインで参加した元「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さんは、沖縄戦を体験した祖父に「なぜ戦争が起こったの」と質問した際、「そういう教育だったんだよ」と返ってきたことを紹介。「国ではなく市民の視点を持ち、戦争が起きたら生活がどうなるのかを考えなければならない」と強調した。

女性史を研究している元オール沖縄会議(共同代表)の玉城愛さんは、学生時代に同世代の在日コリアンや台湾の学生と交流してきたことを振り返り、「対話で物事の認識が変わった。台湾や中国との関係の中で沖縄の米軍基地がどういうふうに位置づけられているかも知ることができた」と報告。「市民同士で情報共有し、耳を傾け合う拠点をつくりっていきたい」と語った。

沖縄物産企業連合会長の宮城弘岩さんは、「米国や日本が仕掛けなければ有事はおこらない」と話した。

会場からの質問では「無関心な県外の人や若者ら次の世代との対話はどうすればいいのか」との声が上がった。日本国際ボランティアセンター前代表理事の谷山博史さんは「断絶の隙に入ってくる権力を持った人たちを許さないという視点を明瞭に示せるかどうかが大事だ。若者を含めて意見の違う人と対話する場をつくる機運を高めていきたい。プロジェクトはその出発点になる」と答えた。

2.琉球新報(2022年10月16日付)

・「『台湾有事』交流で止める 県内識者ら、プロジェクト発足」(3面)

対話によって台湾有事を止めることを目指し、県内の有識者らで組織する「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」の発足集会が15日、沖縄市民会館で開かれた。

有識者やジャーナリストらが登壇し、各国の市民らによる草の根の交流を続け、軍事での解決に依存しないための活動を続けていくことを確認した。

基調講演をした元駐中国大使の丹羽宇一郎氏は、中国や米国の状況などを説明。北朝鮮の核開発問題を解決するために関係6カ国が話し合う「6者協議」の再開による解決を訴え、北朝鮮情勢などを踏まえて「(問題)を棚上げにし、戦争に近づかない政策を始めるべきだ。それ以外に、北東アジアの平和を維持する方法はない」などと指摘した。

元共同通信記者で台北支局長などを歴任したジャーナリストの岡田充氏は、昨年4月の日米首脳会談の共同声明で、1969年の佐藤・ニクソン会談以来、約50年ぶりに台湾問題が盛り込まれたことなどを説明した。

岡田氏は「(佐藤・ニクソン会談当時)現在進行中のベトナム戦争、台湾で有事が起きた場合に沖縄の米軍基地を使うことができるかどうかが米国の懸念だった。53年前の共同声明も分母にあるのは沖縄の米軍基地の維持と、基地へのフリーアクセスだ」と指摘。米国の考え方について「台湾有事の危機をあおりつつ、中国の脅威を日本と沖縄の人たちの意識にすりこんだ。特に、日本では中国脅威で翼賛化が進むメディアを利用しながら、南西諸島での日本の対中対応力強化をうたっている」との見解をしめした。

集会にはそのほかに、沖縄物産企業連合会長で中国や台湾の事情に詳しい宮城弘岩氏、「辺野古」県民投票の会元代表の元山仁士郎氏、元オール沖縄会議共同代表の玉城愛氏らが登壇した。(池田哲平)

 

集会では、参加者にアンケート用紙を配布し感想や意見、コメントを記入してもらった。発足集会の感想としては以下が印象に残った。

◎いろんな対話、交流をすることが、今こそ本当に求められていると思います。今日一番印象に残ったのは、宮城弘岩氏の“文化力が残っている限り支配されない”でした。

◎「対話」の重要性を強く感じさせられた時間だった。日米の権力者たちにあおられて必要以上の危機感を抱くのは、自らの危機を高めていくことになる。宮城弘岩さんの話にあった戦争を回避するためには文化力(対話力)が必要なのだという言葉に納得、膨大な防衛費の何%かでも対話をするための外交費に使えたら希望が持てると思う。

◎戦争は起こすのは容易だが終わらせるのが難しい!と言われます。どんな状況の中にその火種が付くのか気がつかない情勢のような気がします。こんなプロジェクトを待っていました。ここ沖縄がもう日本の捨て石にされない為に、これ以上の米国、日本に服従させられたくありません。どうして地元の声が打ち消されていくのでしょうか?きょうの話の中で“宮城弘岩氏”の内容をもっと知りたいです。

宮城弘岩氏の述べた、「文化力」という発想が多くの人の共感を呼んだようだ。文化の持つ力が生き残っていくための力となるということを多くの人が実感しているのかもしれない。逆に言えば、その文化が観光の目玉となっている原住民たちを富の底辺にいるハワイの状況や薩摩が侮蔑しつつ沖縄の文化を自らのものとしていった状況を見ると、植民地支配とは、その文化をも支配しようとするものなのだという警告も、私としては、頭の中に入れて置きたいところだ。

「沖縄対話プロジェクト」に関しては、以下のような意見があった。

◎沖縄を皮切りに、この台湾有事「対話プロジェクト」を、日本47都道県各地で、開催したらどうか。“県”という行政に頼るのではなく、人々の主催で、例えば、「長崎対話プロジェクト」とか「東京対話プロジェクト」という風にしてほしい。沖縄だけでは、差別にまたつながりかねない。

◎若い力をいかに引き出すか、あるいは若い力にいかに頼るかがポイントかと思います。

◎危機の発信元はアメリカである。それがすべてを物語っている。多くの人に情報が届くように頑張って欲しい。台湾、中国の人民との対話が重要である。その前に危機の本質を沖縄の人々に伝える活動も大事である。

◎イラク戦争を目の前にしておもいます。“同盟国“とは信じていいのでしょうか。日本はどんな外交で平和に交渉しようと動いているのでしょうか。わからない事だらけです。沖縄を反日呼ばわりする理由とは?また次回があれば参加したいと思います。

◎まず当事者意識を高めやすい、市井の人々の対話から—-という戦略に強く共感します。大阪では、今回のテーマに関してほとんど当事者意識も危機感も高まっていません。今井一氏が言っているように、本来は沖縄の基地の問題は、大阪をはじめとする各地ではなぜ基地がないのか、それで良いのかという問題なのに、その点の問題意識はほとんどの人がもっておらず、このギャップを実感・体感するために沖縄に来ました。

◎「命どぅ宝」戦争だけはどんなことがあっても起こしたらいけない。対立は武力によって解決することは決してない。対話でしか解決出来ない。

◎どこの国の人であろうと立場や意見の違う人であろうと対話を進めることが重要であると思う。経済的困難な人、環境悪化、戦争の危機、コロナなど何も考えたくない、未来はないなどとなげやりにならず、明るい未来をつくろうという希望をもちたい。

立ち上げを発表する岡本厚さんを中心とする「沖縄対話プロジェクト」メンバーによる記者会見。

 

全国に広がらない沖縄だけでの「対話プロジェクト」の取り組みは確かに効果が薄いが、異なる理由、沖縄だけでは、また、沖縄差別に繋がりかねないとの理由で不安視する気持ちも理解できる。

それは、戦争の危機と相まって強まる沖縄ヘイトがあるからだが、被害者でありながら、そのような気持ちにさせられる沖縄の人たちを見ると悲しく思う。

ネトウヨは安倍晋三氏が率いた自民党政権が生み出したものである。それが沖縄ヘイトを率いている現状を考えると、戦争のできる国づくりに戦場になる沖縄が欠かせず、そのために抵抗する沖縄を萎縮させ、人々を分断させるための沖縄ヘイトであるからくりも見えてくる。

戦争も差別も準備される。戦争も差別も作られるものなのだ。しかし、沖縄に基地を集中させて良いのかとの問題意識を実感するために集会に参加した大阪の人もいる。

自衛、防衛などと嘘ぶき、平和外交より戦争に前のめりである政府に期待はできない。期待できないどころか、政府の積極的な戦争遂行を止めるための努力を市民がやらなければならない状況である。

その戦争の危機を皆と共有するための努力を続けながら、市民が理解し合い、繋がりあうための「対話」の力に希望を見いだしながら、市民レベルでの平和外交を開始しなければならない。

 

ISF主催トーク茶話会(12月25日):望月衣塑子さんを囲んでの トーク茶話会のご案内 

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与那覇恵子 与那覇恵子

独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。

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