金武町における米軍基地周辺のPFAS汚染について
琉球・沖縄通信PFASは自然界で分解されないため「永遠の化学物質」と呼ばれている。沖縄県内の基地に起因する環境問題の一つとして、PFAS汚染は近年、普天間基地の泡消火剤漏出事故や金武町の水道水汚染などにより、県内はもとより県外でも知られるところとなった。
しかし、汚染源と推測される泡消火剤が、米軍基地内において、どのように使用され、どこに廃棄されてきたのか、現在どのように管理されているのかなど、基地内への立ち入り調査が認められないため、未だ明らかにされていない。
そんな中、キャンプ・ハンセンに隣接する金武町の地下水源がPFASに汚染されていることが分かった。町民が飲用する水道水からは、暫定指針値・目標値を上回る値が検出された。
金武町としては「取水を一部止めるなどの調整により、指針値以下にしている状況」と説明している。汚染されたままの水道水が町民へ供給され続けていることに対してまず、問題提起したい。
金武町の地下水源である取水井戸は、キャンプ・ハンセンのフェンスの直ぐ側にある。20年6月に金武町が実施した水質調査で、この取水井戸から指針値を超えるPFASが検出され、水道水からも同じく指針値を超えるPFASが検出されていた。
金武町の取水井戸のすべてからPFASが検出(最大値410ng/l)され、町民に供給された水道水からも指針値を超える70ng/lが検出された。
さらに水道水の供給のあり方にも理不尽な点がある事が分かった。キャンプ・ハンセン基地内に供給されている水道水は沖縄県企業局からの浄水が直接供給されている。それに対し町民向けには、基地内への供給量を除いて不足分を汚染された地下水を加えて供給しているという事実である。
加えて金武町内の大規模な病院の敷地内にある井戸水からも指針値を超えるPFASが検出された。この病院の汚染された井戸水と金武町水道水をブレンドした水が、長年にわたり病院施設の関係者に提供されていたことも明らかとなった。入院患者や関係者の健康への影響が危惧される。
PFASの発生源について、金武町長は「およそ米軍だと分かる」との見解を示している。しかしながら、どの程度の年月にわたってPFASに汚染された水を町民が飲用していたのかは明らかにしていない。そのためPFASの暴露量は町民の血中濃度検査で確認するしか方法が無いのではないかと考えている。
それと並行して、町民の健康調査を行うことでPFAS汚染による健康への影響について把握する必要があると思われる。
金武町長はこの問題を受け、地下水源からの取水を将来的にすべて止める意向を明らかにした。導水管の改良などの施設整備が整うまでは、同県企業局からの浄水ブレンド量を増やして水道水を指針値以下に抑えて供給するとしていた。
ところが、今年2月に実施したPFASの水質調査で町内の水道水から再び指針値を超えるPFASが検出され、水源となっている地下水の井戸2か所からも180ng/lの値が検出された。
今後、同県企業局からの浄水供給量を増やす為に必要な施設整備には、相当の時間を要する事が明らかである。その間、町民は水道水の安全性に不安を抱えながらの生活を余儀なくされる。
また、地下水源からの取水をすべて止めることで、他の地域の湧水に影響を与え、汚染がさらに拡散されることも懸念される。金武町内の有志グループが、町長に対して町民の血中濃度検査などの要請や独自の勉強会などを開催し問題解決に向け行動を起こしている。
しかし、現時点において行政による基地内立ち入り調査はおろか、PFAS汚染の影響に関する健康調査も実施されていない。
沖縄県内の米軍基地に起因するPFASによる環境汚染問題に関心があり、関係する行政機関に対して情報開示請求を行い、入手した情報資料を基にデーター等の時系列比較やグラフ化し、問題点を説明できるよう整理した上で、PFAS問題に関心のある方に情報提供する活動を行っている。また、議員やマスコミ各社にも情報提供し、議会やテレビ報道・新聞掲載などでPFAS問題を取り上げてもらうよう働きかけている。現在65歳、無職、沖縄市在住。