権力者たちのバトルロイヤル:第42回「ヒラリー復活」計画
国際・「異常な円安」の真相
本来ならば一笑に付す陰謀論に信憑性が出ているのは、今のアメリカが、それ以上の危機的状況にあるからだろう。もはやなりふり構わず、どんな手段でも実行するのではないか、という空気が漂っているのである。
どれほど今のアメリカが「異常」なのか。
国家間の生活を比べる手軽な数字に「ビッグマック指数」がある。日本と比較すれば、ともに税抜きで410円と5.15ドル。1ドルの購買力は79円となるのだ。「ミスター円安」の黒田東彦日銀総裁の方針もあって、一時、1ドルは150円を突破した。実質的な通貨価値から見た円ドルレートはドルが2倍に水増しされた状態にあるのだ。
見方を変えれば、円安はドルのインフレなのだ。110円で買えていた商品(ドル)が、わずか1年で150円まで値上がりした。インフレ率でいえば35%に及ぶ。今の通貨レートは、数字以上に“おかしい”のだ。
もちろん現在、世界規模でインフレは加速している。日本でも、あらゆるものが値上がりしている。2020年以降のコロナ禍によって生産・経済活動が抑制される一方、各国とも莫大な支援金が個人や法人にばらまかれた。物不足のなかで大量のマネーが供給されれば、当然、物価高になる(通貨価値が下がる)。それで世界規模でインフレが起こった。
それに加えて2021年初頭まで1バーレル50~70ドルで推移していた原油(それに連動した天然ガス)が、一気に100ドル超えとなった影響も大きい。2月の開戦以降、さらに上がり続け、JPモルガンは年末までに189ドルになると予測していた。
エネルギーコストが上昇すれば、当たり前だが物価は上昇する。さらに食糧も肥料の高騰で過去最大の値上がりしたことでインフレが加速してきた。
とはいえアメリカは世界一のエネルギー資源国(産油国)かつ世界最大の食糧生産国。常識的に考えても日本(や欧州など)よりインフレ圧力は低いはずなのだ。
事実、2010年代から本格的に生産が始まったシェールガスは、当初1バーレル80ドルが採算ラインだったが、技術革新で40ドルまで下がり、米国内の油田とコスト面で争えるまで進歩している。
原油価格は1バーレル40ドルなら世界の7割の油田が採算ラインに乗り、しかも世界需要の大半を満たすことができるといわれている。コロナ禍までは中国の旺盛な消費で跳ね上がっていたが、生産縮小で原油価格は一時期20ドルまで下がっていた。2021年以降、経済活動が回復基調となったとはいえ、なぜ、こんなに値上がりしているのか。
しかも世界最大の産油国アメリカでは、ガソリン代が4倍に跳ね上がってポリタンクを持った市民がガソリンスタンドに殺到するガソリン不足に陥っている。何をどう考えてもおかしいことがわかるだろう。
・作られた異常事態
この異常事態を作り出したのが、バイデン政権なのである。大統領選に勝利した2020年11月以降、バイデンはコロナ支援金の名目で凄まじいばらまき政策を展開してきた。その一方で化石燃料の使用制限を課すグリーン・クリーン政策(プラン)を強力に推進した。
こうして米国内の原油・ガスの採掘は2021年以降、次々と操業を縮小しながら国内生産分を輸出へと振り向け、米国内を意図的にガソリン不足状態にすることで価格をつり上げてきたようなのだ。
そのうえでばらまいた支援金マネーは、ガソリン価格の高騰によって原油先物市場に殺到、マネーゲームによって、いっそう跳ね上がっていった。
原油価格が上昇すれば食糧も連動して上がる。これらの国際価格(スポット/短期)は先物市場の価格に反映されるために、米国内は深刻なモノ不足に陥り、過剰なマネーの存在で、もはやインフレが抑制できなくなっているのだ。
繰り返すが、世界最大の産油国かつ食糧生産国のアメリカは、全米に「適正価格」で販売できる。それらを輸入に依存する日本よりはるかにインフレに強い。にもかかわらずアメリカでインフレが加速しているのは、バイデン政権による失政というよりも、意図的なインフレ政策によって引き起こされたとしか思えないのだ。
しかもバイデン政権はアメリカ国内のみならず、世界規模でインフレを引き起こしてきた。その理由は、もはや、そうしなければ国際基軸通貨としての「ドル」が維持できなくなっているからであろう。
先にも見たよう、過剰に供給されたドルは「水増し」状態にある。通貨の実質的な価値は円でいえば半分しかない。ようするに、いつ1ドルが70円台まで暴落しても不思議ではなくなっているのだ。ドルが暴落すれば、ドルの価値を担保している米国債もまた暴落し、アメリカはデフォルト(債務不履行)に陥る。
それを避ける唯一の方法は、世界規模でインフレを加速させ、水ぶくれでだぶついたドルを「相殺」するしかない。単純にいえば、ドルが倍に水増しされているならば、あらゆる物価も倍に水増しにすることで、つり合わせようとしているわけだ。そう考えればバイデン政権が「安い消費財」を供給する中国の締め出しに動いているのも当然だとわかる。
この構図を理解すれば、ウクライナ戦争が、どうして起こったのかも見えてこよう。物価の水増しに最も効果があるのはエネルギー価格の高騰である。ところが、世界第2のエネルギー資源国のロシアがEUほか各国に安い価格でバンバン原油やガスを売るために、エネルギー高騰のインフレ効果が高まらなかった。
それでロシアのエネルギー資源を国際市場から排除すべく「戦争」へと誘導してきたと見ることができるだろう。
今後、アメリカ、つまり大統領の座に就いたヒラリー・クリントンの役割は、この戦争で見せた米国製兵器と米軍を武器に、安全保障を軸とした「拡大NATO」で新たな西側をまとめる。プーチンのロシアは安いエネルギーと食糧供給で「東側」を形成する。
もはや、アメリカとロシアは「新しい東西冷戦」という密約で合意していたとしても驚かない。この戦争は、米ロ権力者による茶番劇ではないのか。
(月刊「紙の爆弾」2022年12月号より)
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1968年、広島県出身。フリージャーナリスト。