ウクライナ危機の教訓と東アジア・沖縄
編集局便りNATO不拡大と東ウクライナのロシア系住民保護を理由としたロシアの軍事行動によって国際社会は大きな激震に見舞われている。そうしたなかで、プーチン大統領の核態勢強化をめぐる発言が飛び出し、核戦争勃発(とりわけ小型戦術核の使用)の可能性が取りざたされている。
しかし、この発言自体は、NATO関係者の「攻撃的発言」に対応した側面があり、核兵器の使用準備を進める実質的な措置に必ずしも結びついているわけではない(英国のウォレス国防相も同様の見解)。
このウクライナをめぐる軍事紛争で浮かび上がった重要な問題は、NATO(とくに米国)とロシアの対立に緩衝地帯にあるウクライナが巻き込まれるとそこが戦場、場合によっては核戦場ともなり得るということである。
ロシアにとって、国境を直接接するウクライナにNATOの核兵器とミサイルが配備されるようになることはまさに悪夢であり、死活問題であったことは明らかである。このことは1962年のキューバ危機での米国の過剰反応を想起すれば分かりやすいであろう。
このことを踏まえて、東アジア情勢に目を転じてみよう。ここ数年、中国脅威論が喧伝され台湾有事があたかもすぐにでも起こるかのような言説があふれ出ている。
その延長上で、ロシアがウクライナに軍事行動を起こしたこのタイミングで中国が台湾攻撃に出る可能性さえ語られている。しかし、はたしてそうであろうか。
米欧諸国がウクライナ問題への対応に追われている現在は、米欧諸国による大規模な軍事演習などの挑発が少なくなってむしろ台湾有事の可能性は少し遠のいたというのが実感である。
ここで重要なことはウクライナで起きている軍事紛争から何を教訓として学ぶかであろう。東アジアにおける米中対決がエスカレートして台湾有事や東シナ海・南シナ海での軍事衝突が勃発した場合に、真っ先に戦場となって犠牲となるのは沖縄を中心とする南西諸島であり、さらに日本全体も戦場、最悪の場合には核戦場となる可能性が高いということを意味しているということだ。
さらにいえば、今回のウクライナでの軍事紛争で原発が攻撃目標となったという情報が本当であるならば、通常の核戦争以上の未曾有の惨禍も生じかねないというのが現実である。
それに加えて、ウクライナでの軍事紛争に便乗するかたちで出た安倍晋三元首相の「核の共有」発言を受けて高市早苗・自民党政調会長がそれを公の場で議論する姿勢を示すという驚くべき動きがある。こうした動きは、南西諸島へのミサイル配備と将来の核兵器持ち込みと連動していることは間違いない。
このような悪夢を現実化させないためには、現在日米軍事一体化と南西諸島への軍事要塞化がすすめられているなかで行われようとしている核ミサイル配備を撤回させると同時に、「原発は日本のみならず世界からなくさなければならない」(鳩山友紀夫元首相)ことは明らかである。
(「NetIB-News」からの転載)
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独立言論フォーラム・代表理事、ISF編集長。1954年北九州市小倉生まれ。元鹿児島大学教員、東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会共同代表。九州大学博士課程在学中に旧ユーゴスラヴィアのベオグラード大学に留学。主な著作は、共著『誰がこの国を動かしているのか』『核の戦後史』『もう一つの日米戦後史』、共編著『20人の識者がみた「小沢事件」の真実』『昭和・平成 戦後政治の謀略史」『沖縄自立と東アジア共同体』『終わらない占領』『終わらない占領との決別』他。