メールマガジン第27号:「新たな戦没者を出さないために」、慰霊月間に2週連続講演会
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会メルマガ琉球・沖縄通信沖縄は戦後77年目の慰霊の月を迎えた。「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」は6月23日の「慰霊の日」の前後に「2022慰霊月間 2週連続講演会」を催す。
沖縄戦は終わっていない。敗戦後の米軍占領下の基地は、復帰後もほぼ占領・統治時代のままに存続している。復帰後は自衛隊も配備され、南西諸島は自衛隊と米軍のミサイル要塞化が急速に進んでいる。米軍は沖縄からベトナム戦争、湾岸戦争、イラク、アフガンに出撃した。
米国による外国の戦争の出撃基地であった沖縄は、「台湾有事の攻撃拠点、米軍台湾有事で展開、日米共同作戦計画」(2021年12月24日、共同通信配信)と、中国との戦争の戦場に位置付けられている。「住民巻き添えの可能性」(同)とも報じられた。沖縄県民は終わらない戦後を生き、「次の沖縄戦」に向き合わされているのである。
「新たな戦没者を出さないために」の本コラムのタイトルは、具志堅隆松さんから頂いた。6月19日の講演会『軍靴高鳴る時代のなかで沖縄戦の教訓を考える』でのご講話を電話でお願いし、演題を考えてほしいと伝えたところ、即座に返ってきたのが、この言葉だった。
具志堅さんは40年来、沖縄戦没者の遺骨収集を続けている。真っ暗な壕の中で一つひとつ遺骨を拾い弔いながら、「次の戦争を起こしてはならない。二度と戦没者を出してはならない」と願い続ける具志堅さんの思いが伝わった。
「私たちはみんな遺族よ」。講演会の企画を話したときの宮城恵美子運営委員の言葉だ。沖縄戦の遺族でない県民はいない。「沖縄県民はみんな艦砲ぬ喰ぇーぬくさー(艦砲の喰い残し、戦争の生き残り)だね」と返した。
考えてみると私(筆者新垣)は生まれたときから祖父母がいない。みな沖縄戦で戦没(父方の祖父は戦後すぐに病死)した。16歳で従軍し満身創痍で生きながらえた父とマラリアで死にかけた母が出会って生まれた私も、「艦砲の喰い残し」に違いない。私はここにいなかったかもしれない。
宮城さんが教えてくれたある遺族男性の話。母親に日本兵が銃を突き付け、3歳と1歳のきょうだいを壕から出すよう迫った。「うるさく泣いて敵に知られる」というのだ。母親は、この子だけはと長男の男性をかばい、3歳、1歳のきょうだい二人を壕の外に出した。
しかし、3歳の子は戻ってきた。再度、日本兵は銃を突き付け、母親はその子を再び壕の外に出した。男性は50代になって初めて体験を語った。誰が母親を責めることができようか。「長男だけは子孫を残すために」と守った。生き残った男性の胸中、愛児二人を壕の外に出さざるを得なかった母親の後悔はいかばかりであっただろうか。
「艦砲の喰い残し」の私たちの頭上をきょうもF15、オスプレイが飛び交い、沖縄県民は「次の沖縄戦」に向かう日常を生きている。南西諸島がミサイル要塞化し、核共有論や「核の傘」による「拡大抑止」が公然と当然のごとくに日米首脳、国会の政治家が語り合う「次の沖縄戦」は77年前の沖縄戦の比ではないだろう。私たちは生き残れないのではないか。自分の命と、なによりもこれからを生きる子孫の命、150万県民同胞の命が危ぶまれてならない。
「2022慰霊月間 2週連続講演会」は「戦後77 年、本土復帰50年の『慰霊の日』を迎え、沖縄戦の教訓を再確認し、沖縄が再び戦場とならないために、台湾有事に向けた日米の軍備強化に反対する取り組みを話し合う」ことを趣旨に開催する。
第一週「軍靴高鳴る中で 沖縄戦の教訓を考える」の基調講演は石原昌家沖縄国際大学名誉教授。同氏は「ノーモア沖縄戦の会」共同代表。沖縄戦研究の第一人者で、旧日本軍の「軍民共生共死」の戦略思想、「軍隊は住民を守らない」実態を告発し続けている。
第2週「南西諸島有事を勃発させないために」の基調講演は岡田充共同通信客員論説委員。台北、香港支局長を歴任し、台湾・中国関係、米軍の台湾・中国戦略に詳しい。
米バイデン政権下で米国の中国敵視政策、「台湾有事」日米対処戦略が急速に進んでいる現状を解説する。講演依頼をご快諾、「対中軍事抑止の枠組みは驚くほど早く、かつ『底なし』に進行している。対中脅威論が(国内で)翼賛世論化しており、歯止めを掛けねば、『戦争の道』しか残らない」とのメールをいただいた。
◇ ◇ ◇
「2022慰霊月間 策動される戦争に抗して 2週連続講演会」
◇第1週『軍靴高鳴る時代の中で 沖縄戦の教訓を考える』
2022年6月19日(日)午後1時~4時 教育福祉会館(那覇市古島、興南高校隣り)
基調講演:石原昌家(沖縄国際大学名誉教授、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会共同代表)
講演:
宮城晴美(沖縄女性史家、ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会の会共同代表)
平良啓子(学童疎開船対馬丸の生還者、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会呼びかけ人)
大城貞俊(作家、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会呼びかけ人)
具志堅隆松(沖縄戦没者遺骨収集ボランティア、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会共同代表)
司会・三上智恵(映画監督・ジャーナリスト、ノーモア沖縄戦の会呼びかけ人)
◇第2週『「南西諸島有事を勃発させないために』
2022年6月26日(日)午後1時~4時 教育福祉会館(那覇市古島、興南高校隣り)
基調講演:岡田充・共同通信客員論説委員
パネルディスカッション、パネラー:
岡田充(講師)
山城博治(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会共同代表)
与那覇恵子(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会発起人)
谷山博史(日本国際ボランティアセンター顧問)
(新垣邦雄 「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」発起人)
(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン第27号」より転載)
〇ISF主催公開シンポジウムのお知らせ(2023年1月28日):(旧)統一教会と日本政治の闇を問う〜自民党は統一教会との関係を断ち切れるのか
〇ISF主催トーク茶話会(2023年1月29日):菱山南帆子さんを囲んでのトーク茶話会のご案内
※ご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
「ノーモア沖縄戦の会」は「沖縄の島々がふたたび戦場になることに反対する」一点で結集する県民運動の会です。県民の命、未来の子どもたちの命を守る思いに保守や革新の立場の違いはありません。政治信条や政党支持の垣根を越えて県民の幅広い結集を呼び掛けます。