岡田充氏講演録まとめ(その2):バイデン大統領の対中・台湾政策と台湾危機を煽る日米の狙い
安保・基地問題1.バイデン大統領の対中・台湾政策
台湾有事は近いという言説が2021年3月に振りまかれた。
フィリップ・デービッドソン前インド太平洋司令官が、同年3月9日のアメリカ議会上院軍事委員会で、「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性」があると述べた。デービッドソン氏が言う「6年以内」とは、2027年のことだが、中国が台湾進攻する具体的時期についての説明はなかった。
さらに、現在のアキリーノ・インド太平洋軍司令官も、同年3月23日、「台湾侵攻は大多数が考えるより間近である」と述べた。
上記2氏の発言時期から読み解くと、ひとつは「日米外務・防衛閣僚会議(2プラス2)」が開かれた時期であり、台湾有事を煽り日本世論に危機感高める狙いがあったこと。もう一つは、バイデン大統領の予算教書に基づいて国防予算がアメリカ議会で審議されていた時期の発言であり、その審議過程で米軍司令官たちが台湾有事を利用して軍事費の増額を図る狙いがあったこと。これら2点が「台湾有事は近い」とした言説の政治的狙いではないだろうか。
2.台湾危機煽る日米の狙い—覇権後退に焦る米国、日本を対中の「主役」に—
中国が台湾海峡をめぐる「接近阻止」能力(台湾海峡に米軍の空母が近づいたときに阻止する軍事能力)を向上させているため、米国一国では中国に対処できない状況になっている。つまり、米軍の空母は日本の支援なしに台湾海峡で中国軍の動きを封じ込めることはできないのである。米国の国力が相対的に衰退していることから、日本の支援無しに中国に勝てないという危機感が強まっている。
日米が台湾危機煽る狙う目的は3点挙げられる。第1の目的に、台湾問題で「脇役」だった日本を米軍と一体化させて、「主役の地位」に位置付ける。
第2の目的は、日本の大軍拡と南西諸島のミサイル要塞化を加速させる、アメリカの中距離ミサイル配備に向けた「地ならし」の役割を狙っている。アメリカは中距離ミサイルをこれまで配備していなかったので、ここ数年以内におそらく沖縄を含めた第一列島線(日本列島から南沙諸島にかけての米国の対中防衛ライン)、またグアムを含む第二列島線にある米国の軍事基地、そして米国と台湾の関係が強いパラオにも配備する可能性がある。
第3の目的は、北京を挑発することで、中国が容認できない一線を意味する「レッドライン」を探ることにある。米台が断交してからは、大地震を除いて米軍機が台湾上空を飛んだり、台北国際空港に着陸したりすることはほぼなかった。
上記の写真は、2021年6月、アメリカ連邦議会議員を乗せた米軍輸送機が台湾の台北松山空港の上空を飛行した様子を撮影したものである。アメリカの議員一行を米軍機に同乗させて飛行したことには、中国に対する挑発の意図を感じる。
【その2についての宮城の感想】
日本は戦争の脇役から主役の舞台に立たされている。戦闘の中でハシゴ外しにあうことだろう。それでも米国に一切物が言えないのが、従属国家日本の正体ではないだろうか。国民・住民の命よりも米国に追随することで外務・防衛の官僚たちは自分の出世・保身を大事にしたいのであろうか。今、戦争を起こしたいという米軍の意志に、戦争することまでそのまま従う国が他にあるのか。あり得ないことだ。
それが独立国家ではない証である。そして防衛や外務省官僚、為政者らには自立する気概もみられない。米軍の始める戦争は日中戦争に入れということになる。戦前、あれほど甚大な危害を与えた中国と再び戦争をしたいのだろうか。国民は実態をよく知れば反対するだろう。
しかし為政者らは岸田政権と自衛隊・防衛・外務官僚らは米軍に追従している。だが、自衛隊は「住民を保護する余地は(自衛隊には)ありません。それは各自治体で行ってください」と述べており、いくらかの困惑した様子も窺える。
「住民保護は出来ない」と自衛隊が明言していることは、これまでの自衛隊は国民を守る為にあるというイメージを植え付けてきた側の言い分とは全く異なる。今まで広めてきたイメージであり若者が自衛隊を支持するのは、「自衛隊は国民を守ためにある」というものである。
多くの国民の共通認識に今も支えられて琉球列島はおびただしい自衛隊数増強とミサイル配備態勢になっている。国民の誤った主観・イメージが琉球弧の軍事化を進めているのである。
琉球弧の軍備強化に抗する住民に対しては「恩のある自衛隊には感謝しろ」という言葉が投げられている。そして「自衛隊に感謝状を上げたい」という説もある。自衛隊は米軍の指揮権によって動く軍隊で、国民の命を脅かす戦争する「コマ」である。
戦争を止めるためには「国民を守る自衛隊」という評価から「国民の命を危険にさらしかねない自衛隊」と評価の転換が必要である。
戦争=有事になれば米軍は撤退し、グアムやアラスカに下がると言う戦略である。米軍は逃げるが、自衛隊員が血を流し同時に琉球列島の人々がミサイルの楯にされ、命を失うだろう。米軍のご都合主義に従って国民・住民の命を軽視する考えが「台湾有事」論である。中国の国内問題に私たちが介入して「戦前」のようにまたも日中戦争を仕掛けるべきではない。アジアの人びとへの冒涜でもある。今すぐにでも自衛隊ミサイル配備をやめさせるために行動すべきではないだろうか。
〇ISF主催公開シンポジウムのお知らせ(2023年1月28日):(旧)統一教会と日本政治の闇を問う〜自民党は統一教会との関係を断ち切れるのか
〇ISF主催トーク茶話会(2023年1月29日):菱山南帆子さんを囲んでのトーク茶話会のご案内
※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。