【特集】統一教会と国葬問題

ファシズム的2012年体制と日本の衰退

藤田幸久

4.ファシズムの初期警報と菅政治との類似性

安倍元首相の後継の菅義偉前首相にも、以下のようにファシズムの初期警報との類似性が見られた。

・初期警報の「知性と芸術の軽視と抑圧」は菅政権の「日本学術会議人事への介入」

・「マスメディアの統制」は「NHKが政府へのそんたくを加速」

・「身びいきと汚職の蔓延」は「感染症ムラ利権」、「コロナ対策持続化給付金汚職」、「東京五輪汚職」

・「企業権力の保護」は「外国産コロナワクチンの優先」、「GoToトラベルによる運輸・観光業界支援」

・「宗教と支配層エリートの癒着」は「公明党から創価学会による選挙支援への格上げ」

・「労働者の力の抑圧もしくは排除」は「労働組合への介入と分断」

・「性差別の蔓延」は「政府・与党幹部の性差別発言」

5.国民主権、民主主義の根幹、国力を棄損した2012年体制

以上安倍政権と菅政権における権力の獲得と維持の「手法」を整理した。両首相が意識してこうした手法を採用したかは定かでないが、結果的に起きた政治的事実である。

ヒットラーは最初からその本性を現すことはせず、徐々に、周到に体制を構築したといわれるが、日本国民がゆでガエル状態の中で、こうした結果を受け入れてきたのも現実である。

しかしこの間、政治手法以上に日本の民主主義の根幹が棄損されたことは重大な問題である。以下は前代未聞の出来事である。

・公文書偽造 森友問題での政府公文書の改ざん(財務省職員の自殺)

・統計の偽造 可処分所得下落隠蔽の為に統計を偽造、予算の再提出

・政府文書の否定 老後に2,000万円必要な事実の隠ぺい

さらに、2012年体制は、「失われた30年」と言われる日本の国民主権、民主主義の根幹、国力の棄損を以下のように加速させた10年ということができる。

①国民主権の代表で国権最高機関である国会の軽視

憲法で定められた国会議員による臨時国会の開催拒否の連続

②日本銀行・内閣法制局、NHK等の独立性の棄損

③国力の低下、失われた30年の加速

・世界に占めるGDPの割合が1994年の17.9%から2022年の4.2%に低下

・一人当たりGDPは世界30位。アジア5位(シンガポール、香港、ブルネイ、台湾に次ぐ)

・年間国民所得が1997年の612万円が、2021年の546万円に下落(OECD諸国で唯一下落)

・全予算に占める医療・福祉予算と教育予算の割合はOECD諸国で最下位レベル

・2021年の人口は64万人減少で1億2,550万人。2055年には8993万人と予測(厚労省)

④自由と民主主義の基盤の脆弱性

・日本のメディアの自由度は世界180か国中68位(Reporters Without Borders調査)

・ジェンダーギャップ指数が116位(先進国中最下位、世界経済フォーラム調査)

・世界汚職度ランキングで18位。先進国では米、仏と最下位争い(トランスペアレンシー調査)

 

6.統一教会問題が浮き彫りにした政治の永続体制の根底構造

統一教会の文鮮明氏(左)と北朝鮮の金日成主席(右)

 

安倍元首相の非業の死は、統一教会の支援による選挙地盤と世襲議席の相続による寡占政治の実態を明らかにした。米国は数十年にわたり日本郵政、農協、各種非関税障壁などの既得権の解体を進めてきたが、最大の既得権である選挙地盤の解体には手を付けず、その構造を利用してきた疑いも強い。

宮澤喜一元首相以来岸田文雄首相に至る16人の首相のうち、12人が2世、3世の国会議員である。自民党の麻生太郎副総裁、林芳正外相、小泉進次郎衆議院議員などは4世議員である。

統一教会と自民党政治家との間のもたれあいは、ファシズムの特徴「宗教と支配層エリートの癒着」の「たとえ宗教の教義が政府の政策や方針と正反対であっても、宗教の説教手法や用語は政府の指導者と相通じる」と一致する。

統一教会が韓国で反日的な宣伝を行い、北朝鮮に約4,500億円の資金援助をしていた(米国防省情報)にも拘わらず、多くの自民党の政治家が支援をしていたことである。

統一教会に限らず、その団体の理念などは度外視して選挙の支援を受け、それら団体に対する見返りは国益に反しても供与する、ということが他の支援団体との関係でも同様であることが推測される。

結論として、この10年間の日本の政治は、ファシズム的手法で様々な政治決定がなされたが、その根底では、日本の国民主権、民主主義の根幹、国力を棄損した。そしてそれを支える根底構造が一挙に明らかになった。

これ以上「失われた30年」を加速させないためにも、その構造の解剖と手法の検証、そしてこの埋没から立ち上がる国民的なエネルギーが必要である。

加えて、今世界中で軍備競争が拡大し、日本国内においてもそうした風潮が台頭していることも危険である。しかも、兵器の種類が拡大し、宇宙、AI、食糧、エネルギーなども武器化している。そうした連鎖を食い止め、ホロコーストを止める英知が必要である。

 

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藤田幸久 藤田幸久

水戸一高、慶大卒。初の国際NGO出身政治家。世界52カ国を訪問。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣として10年ぶりに医療・介護予算を増額。民進党次の外務大臣、民主党国際局長、横浜国立大非常勤講師、等歴任。現在国際IC日本協会会長、岐阜女子大特別客員教授

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