書評『終わらない占領との決別―目を覚ませ日本―』(かもがわ出版)
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この著書の中で鳩山友紀夫元首相は巻頭言で「時あたかも『台湾有事』、戦争前夜のような雰囲気が醸し出されている」と述べ、「誰が」「戦争有事を煽っているのか」、それは「端的に言えば軍産複合体が力を有する米国である」。同時に(日本の)「政権の指導者たちである」として、安倍元首相らの「台湾有事」発言に対して「何らかの原因で中国本土と台湾が武力衝突することになり、日本が台湾を軍事的に支援する姿勢を取ったときには、宮古島などの自衛隊のミサイル基地が真っ先に中国のミサイルの標的となる危険性が大で、圧倒的なミサイルの保有量の差で、沖縄を中心に日本は大きな被害を免れないだろう」と警告を発している。
著書のタイトルに「終わらない占領」とあるが、では誰に日本は占領されているのか。アメリカと即答する人が多いはずだが、実態は米軍である。その証拠に日米合同委員会が存在し13名の本会議は6人が日本官僚で、7人が米側であるが一人を除き6人全員が米軍参謀長等で構成されている。
このことを吉田敏浩氏、岡田元治氏が指摘している。「日米合同委員会の日本側は全て文官だが、アメリカ側は大使館公使を除き全て軍人である」。ここで作られ、米軍人が日本官僚に「合意」させている文書は、吉田氏が言うには「合意の要旨は一部、公開されるが、議事録や合意文書は原則非公開だ。国会議員にさえも公開せず、秘密態勢は徹底している」。つまり「密室会議を通じて、米軍特権を認める秘密の合意すなわち密約が結ばれてきた」。「密約」は米軍機事故や裁判権、身柄引き渡し、航空管制委任等まで「『密約体系』と言えるほどの規模であろう」と。
この委員会で米軍特権が守られ、コロナ禍で判明したように米軍関係者は国内法免除による自由出入国等が保障されている。委員会の「密約」はいわゆる広い意味の条約で、日本側が知ろうと知るまいと米側はそう主張ができる法制度である。それにも関わらず国会が関与できていないし、「内閣の閣議決定は形式的なもの」にとどまる。実態は米軍がこの国を支配している。
米国からの武器の爆買いについて望月衣塑子氏が述べる。その行為も米国の経済的利益の為である。猿田佐世氏は、アミテージ・ナイ報告書について触れている。
2000年に出た第1次報告書では、「日本に集団的自衛権行使が認められていないことが同盟の制約である」ことを述べていた。つまり米国は日本に「制約」を取り除けということである。「その後、日本は軍事力を拡大し、安保法制の整備や武器輸出三原則の撤廃など大きく方向を変化させ」た。現在、第5次報告書まで出ている。
「20年かけて」米の要望に「追いついた」という。具体的な法整備状況は与那覇恵子氏が述べる「機密保護法」「武器輸出禁止の原則廃止」「安全保障関連法」「共謀罪」等と重なる。法改正(悪)をして米国の要望を実行する政治は日本を主権国家とは見なせないだろう。木村朗氏は、日本は『半独立国家』」である。日本は米国の「属国」であり、沖縄は日本の「国内植民地」である。そうであるならば沖縄は米国と日本(本土)の二重の植民地支配状況にあるといっても過言ではない、という不都合な真実を明らかにしている。
軍事優先は新垣毅氏が指摘するようにまさに沖縄に集中しており、沖縄の民意を無視して「国防」の名のもと「沖縄を道具のように扱うことを私は植民地主義と呼んでいる」。沖縄を領土としてしか見ていない状況から解放されるためには「最も重要な人権」である「自己決定権」を主張していかねばならないと主張している。
占領からいかに「決別」するのか、「目を覚ませ」と勇気をもって論じた著者は他にも木村三浩、進藤栄一、末浪靖司、松竹伸幸氏らがおられる。様々な著者の指摘は今の日本の状況を切開し解決の方向に向かわせる要素に満ちている。今ウクライナに耳目が集まっている。ゼレンスキーは善でプーチンは悪とする風潮もアメリカ一辺倒の情報に乗せられていないか、様々に考えさせる好著である。
独立言論フォーラム・理事。那覇市出身、(財)雇用開発推進機構勤務時は『沖縄産業雇用白書』の執筆・監修に携わり、後、琉球大学准教授(雇用環境論・平和論等)に就く。退職後、那覇市議会議員を務め、現在、沖縄市民連絡会共同世話人で、市民運動には金武湾反CTS闘争以来継続参加。著書は『若者の未來をひらく』(なんよう文庫2005年)、『沖縄のエコツーリズムの可能性』(なんよう文庫2006年)等がある。