日本を操る政治とカルトの蜜月、旧統一教会とCIA・KCIAの関係
政治2022年12月10日に「被害者救済法」が成立し、2023年1月5日から施行された。しかし、これで統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の被害が防止できるかは疑問とされている。
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、救済法成立後に発表した声明で、「これまで法案の不足点、問題点を指摘したが、若干の解消は見られたものの、重大な不足点について最後まで解消されなかった」と述べている。また代表世話人の山口広弁護士は、記者会見で「某宗教団体が明日は我が身ということで反対したことは否定できない」と述べた。
「統一教会だけ恣意的にとり上げるのはおかしい。創価学会や関西生コンもみんな一緒にやるべきだ」と国会で質問したのは維新の会の足立康史衆院議員。公明党が、支持母体である創価学会の〝財務〟と呼ばれる信者への集金行為も対象にされるかもしれない、と警戒したのは無理もない。
ただし、2018年に統一教会の関連団体「世界戦略総合研究所」で講演している足立議員の場合、その意図は不明瞭だ。「やるならみんな一緒にやれ」というのは「何もするな」というのと表裏一体で、統一教会を擁護しているようにも見える。
といっても、公明党の消極的な姿勢は、当初から予想されたものだ。新法が「骨抜き」と言われるものになった理由は、それだけではない。
世論の動向から統一教会に対して厳しい対応をすべきと考えていた自民党議員の間でも、「これ以上統一教会を追い込むのはまずい」という雰囲気になったのは、朝日新聞のスクープ報道がきっかけだった。
・朝日のスクープが変えた〝流れ〞
2022年10月20日に朝日新聞が、「教団側、自民議員に『政策協定』」と一面トップのスクープを放った。統一教会の選挙支援の見返りに、教団の指示する政策に賛同を求め、賛同した国会議員には「推薦確認書」に署名させていたことも明かされた。
一方、朝日の報道に対し、統一教会の勅使河原秀行・教会改革推進本部長は、同日に行った記者会見で事実であることを認め、全国各地で数十人規模の議員に署名を求めたと証言した。
「勅使河原氏の素早い対応に疑問を持った記者も多かった。あんな重大な話を、テッシーだけの判断で事実と認められるはずがない」(政治部記者)。
つまり、事前に朝日のスクープを統一教会が把握していたのでは、というわけだ。ありていに言えば、朝日の記事は「これ以上やったら、岸田内閣や自民党を道連れにするぞ」という統一教会の〝恫喝〟だった可能性があった。
朝日新聞が入手した確認書は、教団友好団体の「世界平和連合」「平和大使協議会」に対して議員に署名させる形式であり、記載された政策は、「憲法改正、安全保障体制の強化」「家庭教育支援法、青少年健全育成基本法の制定」「LGBT問題、同性婚合法化の慎重な扱い」「『日韓トンネル』の実現を推進」「国内外の共産主義勢力、文化共産主義勢力の攻勢を阻止」といった内容だった。
「自民党の保守派や右派議員にとって、政策協定に目新しいモノはありません。統一教会独自の政策は、日韓トンネルの推進ぐらいでした。署名した議員は、自民党の基礎票にもなっている神政連(神道政治連盟)の推薦をもらうのと同じ感覚で署名したのでしょう」(同前)。
自民党を恫喝するためにメディアを利用する。統一教会には、メディア操作に長けた策士がついているようにも思えてくる。
さらに、メディアに対して大きな影響力を持っている広告代理店と統一教会の関係もまた、看過できないものがある。
・韓流ブームと電通と統一教会
サッカーのワールドカップ日韓大会が開催された2002年は、韓流ブームのきっかけにもなったドラマ「冬のソナタ」が放送(日本では翌年)され、平昌が2010年冬季五輪に立候補を表明。平昌は3度目の挑戦で、2018年五輪を開催するが、ここは「冬のソナタ」のロケ地でもあり、五輪会場を含んだ一帯のリゾート地は、統一教会系企業が開発したものだ。
統一教会系の「城南(一和天馬)FC」は、2001年から韓国プロサッカーリーグを3連覇。同じく「鮮文平和サッカー財団」は、2003年からクラブチームの国際大会「ピースカップ」を2012年まで主催。韓国プロサッカー連盟は、文鮮明教祖の功績を称えて「功労牌」を授与している。
日韓ワールドカップは、日本がベスト16止まりだったのに対し、韓国チームはアジアにおける過去最高のベスト4に進出。日本のメディアもその快進撃を賞賛した。
だが、当時を知るサッカーファンはこう話す。
「国際サッカー連盟(FIFA)が2004年に発売したDVD『FIFA FEVER』が、ワールドカップ100年の歴史における〝10大誤審疑惑〟を挙げており、5件が日韓ワールドカップの試合で、うち4件が韓国戦の試合でした。しかし、日本のテレビやコメンテータはこの疑惑にダンマリで、批判したのはタレントの飯島愛さんぐらいでした。
憤慨したサッカーファンがネットで呼びかけて、特に偏向が酷いとされたフジテレビに『湘南ゴミ拾いオフ』で抗議しています。同局の『27時間テレビ』のイベント『湘南1万人のごみ拾い』に先回りし、放送開始前にゴミを拾い尽くすというネット発の抗議運動を行なったのです」。
日本サポーターのお家芸として海外でも知られるようになった〝ごみ拾い〟には、こんな歴史があったのだ。
日韓共催に電通の成田豊元社長が多大な尽力をしたとして、韓国政府から修交勲章光化章を授与されている。韓流ブームは韓国の文化戦略の賜物であっても、その裏に日本のマスコミを動かす大手広告代理店と、統一教会の関係がちらつくのだ。
だが、統一教会とメディアとの関係には、さらに深刻なものがある。
・KCIAや勝共連合の日本メディア工作拠点
「日本記者クラブ」や「日本新聞協会」等が入居する東京・内幸町の「日本プレスセンタービル」の地下1階に、かつて「チヨダクラブ」という会員制のパブレストランがあった。ここはKCIA(韓国中央情報部)や統一教会及び国際勝共連合のメディア工作の拠点といわれている。
チヨダクラブは、「株式会社行研」(行政問題研究所)のオーナーである竹内陽一氏という人物が経営していた。同氏を知る経済ジャーナリストがその人物像をこう語る。
「竹内は、韓国系暴力団『東声会』傘下の組長でした。組長時代の竹内が逮捕された報道もあるので間違いない。竹内は、プレスセンタービルが竣工した頃からビル内に個人事務所『行政問題研究所』を持ち、ジャーナリストを名乗って『官界』という月刊誌を発行。ここには政治家・官僚・新聞記者との対談記事、中央省庁キャリア官僚の詳細な経歴が掲載されていた。
プレスセンタービルがKCIAや勝共連合の活動拠点になっていたことは、日本の公安も知っていたはずで、むしろ便宜を図ったと思われる。公安の極秘任務に従事したと言っている警察官僚から政界入りした亀井静香氏がチヨダクラブで会見を開いたこともある。後藤田正晴元官房長官も竹内と対談していたし、今も現職の平沢勝栄議員は行研の本で紹介されている。核物質をアメリカ大使館に持ち込んだ詐欺師まで出入りしていた。
竹内は、表向きは実業家、裏では事件屋の顔を使い分け、原発利権を握っている。彼を通じて、政治家・官僚・メディアに流れた電力会社の金は莫大だったと思われる」。
このジャーナリストによると、竹内氏のメディア工作にはマスコミ内に協力者がおり、その一人が元産経新聞論説委員の今井久夫氏だった。彼は国際勝共連合発行の『「私の見た勝共運動」~各界有識者70人の証言~』に「勝共連合は神様からの贈り物」と寄稿。新聞記者にも、「マザー・ムーン」や、「一緒に日本を神様の国にしましょう」等と言っていた政治家と同類の輩がいたのだ。
「新聞社は政治家と統一教会との関係を追及するだけでなく、社内調査をしてチヨダクラブに出入りしていた記者を特定すべきだろう『官界』は20年前、チヨダクラブも25年前まではあった。当時30代だった記者は、今も社内にいるはずだ」(同前)。
霞が関の官僚や広告代理店にも、統一教会シンパがいるのだろう。前出の朝日新聞のスクープ記事も、仕組まれた可能性だってあるのだ。
統一教会が「世界日報」や「世界思想」といった媒体で「スパイ防止法」の制定を主張していることは知られるが、日本でスパイ防止法が制定されたら、海外情報機関に協力していた彼らこそ、摘発されるに相応しい。
海外メディア勤務を経て、フリーライターとして活躍中。