戦需国家・米国への隷従を具現化する改定三文書、世論操作と情報統制で進む対米一体化の「戦争準備」
安保・基地問題・日米武力行使の一体化
すでに令和5年に入ったが、世界を分断して統治する米国の覇権戦略は露骨さを増している。わが国もすでに、その中に組み込まれつつある。
日米安保体制は真の世界平和に寄与しない。改定三文書閣議決定の翌日、2022年12月17日付の産経新聞は、日米共同の有事対処計画を報道した。連合司令部が常設されれば、日本側の武力行使条件「存立危機事態」の認定以前から米軍が始めた攻撃と一体化する可能性がある。平時の「日米武力行使の一体化」も、わが国の主権を超える統治行為が頻発しよう。
米国は自国利益を自由・民主の美名で覆い隠し、超戦需国家として戦争犯罪を繰り返しながら、不処罰をいいことに、わが国を徒に不義のアジア有事に巻き込もうとしている。
その策謀を排するために、自主的な外交戦略・体制を作らねばならない。対症療法的な視点で防衛力を打ち出すのではなく、政治が積極的に周辺諸国との外交や対話を築いていくことである。そうすれば、必然的に米国に貢ぐ必要がなくなる。
しかし、「日本もNATOに入るべき」と、国内は狼少年だらけである。ゼレンスキー大統領が国会で中継演説をすると議員たちが拍手喝采した。政治主導の同調圧力の最たるものだ。それに抗えばロシアの手先だとか、陰謀論者扱いされる。ウクライナ情勢を通じて、そういう図式が国内にもう出来上がっている。
改定三文書は戦略状況の変化を強調するが、肝心の情報は米国からしかもたらされない。真に戦略的に考えるなら、こういうことこそ変えなければならないだろう。
2022年9月に米国で開かれた国連総会では、バイデン大統領が岸田首相の肩に手を置いてなにか語りかけていた。「まぁ、言ったことはちゃんと実行しろよ。あんたは頼りないから」とでも言っているようだ。他国の首相の肩に、しかも首近くに手を置くこと自体、大変不遜である。
これに対し岸田首相は、改定三文書をもって「やりました」との結果報告のため1月、通常国会前に訪米した。それに先駆けて、ゼレンスキー大統領も電撃訪米。まるで参勤交代だ。
「中国の脅威」の台頭は、日本の国内世論誘導にチャンスとなっている。ロシアの軍事行動も、長期化するほど米国の利益は増す。
・主張し続けることの重要性
西側的価値観に飲み込まれないということが、今年、ますます重要なテーマとなる。そのためには、やはりアジアの連帯こそが重要だろう。
わが国にアジア主義は戦前からあった。それは西欧の栄光に対抗するための、アジア連帯を求める思想だった。ただしその中で、日本が主導権をとるべきだという、自国優位の併合論的なアジア主義にはまってしまった。その化けの皮が剥がれたのが、戦前の失敗だった。
日本の軍部が非戦略的に行なってしまった侵略的行為の戦後処理を丹念にやっていくことが必要だ。愛国的な検証と清算が必要である。昔の行為を棚上げして、もう一度アジアのリーダーシップなどと口にしても、誰も相手にしないだろう。
フィリップ・デービッドソン元米インド太平洋軍司令官は、「2027年に到来しうる習近平体制の節目」を挙げ、「中国はそれまでに台湾に侵攻し、力ずくで併合する展開が一段と現実味を帯びている」と語っている。ならば政治・外交こそが、リスク回避のために動くべきだ。しかし、当事者をおいて、予想屋を優先しているのだ。
米国の軍産複合体の路線にのせられてはならない。私は1990年代のユーゴスラビア解体劇、2003年のイラク解体劇、2006年のリビア解体劇など「仕掛けられた戦争」を現地に行って体験してきた。その仕掛けと構図は変わらない。今、北東アジアで緊張状態を戦需国家が作っている。
その裏には巧妙な広告代理店がいる。ヒル・アンド・ノウルトン社による、クエート大使の娘を使った「ナイラ証言」がイラク戦争を惹起したのは有名だ。
ペルシャ湾に大量の原油が流出したとき、アメリカはイラクが流したと、油まみれの水鳥の映像とともに発表したが、実はアメリカがイラクの石油精製施設に撃ち込んだミサイルが原因だったということが、後になってわかった。ネット技術が進んだ現代、視覚効果を用いたプロパガンダはさらに容易いものとなった。
今が正念場だ。今の日本の自公体制にあって、対米従属戦争国家への流れを転換するのは容易ではない。そのなかで、言論統制に抗して発信し続けるということが、一つの対抗手段にはなり得る。山上徹也容疑者がとった手段を批判するのであれば、そうではない方法で、一石を投じる手段をわれわれは持たなければならないだろう。
一水会としては、まずフロントレクチャリズムという手法を重視している。政治家や官僚、ジャーナリストなど、心ある人々との連帯だ。鳩山由紀夫元首相は憂国の政治家である。そうやって核を作りながら、現実的な手段として選挙も想定して声を上げていきたい。
同時に日米合同委員会の情報開示を求めるなどの活動も継続しているが、最終的には自公政権の対米従属ぶりをひっくり返さなければならない。様々な仕掛けをもって弾圧がどんどんやってくる。それに抗していかねばならないのだ。
2022年末には宮台真司・東京都立大学教授が何者かに襲撃された。どのような動機かはまだわからないが、体制側が、強く主張する人間に対する脅しの材料としてこの種の事件を利用する可能性がある。
体制側の矜持のなさに、真に抵抗する力が怯んではならず、主張を続けることが、ますます重要となってくるだろう。
また民族派としては相互尊重の重要性も、同時に強調しておきたい。そして、民族自決の精神とわが国の自主外交権を取り戻すことである。その意味でこそ、レコンキスタが必要であると思っている。
(月刊「紙の爆弾」2023年2月号より)
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民族派団体・一水会代表。月刊『レコンキスタ』発行人。慶應義塾大学法学部政治学科卒。「対米自立・戦後体制打破」を訴え、「国際的な公正、公平な法秩序は存在しない」と唱えている。著書に『対米自立』(花伝社)など。