ノルドストリームを爆破させたのはバイデン大統領!?:ウクライナ戦争がいかに歪んだ戦争であるかを知ってほしい
国際なぜ爆破したのか
バイデン大統領はなぜノルドストリーム1とノルドストリーム2を爆破したのか。ハーシュ氏は、バイデン大統領が爆破を決断した理由について、「欧州が安価な天然ガスパイプラインに依存する限り、ドイツなどの国々は、ウクライナにロシアに対抗するための資金や武器を供給するのをためらうだろうと考えたのだ」と説明している。
要するに、この2つ(4本)のパイプラインを利用不能にすることで、ドイツがロシア産天然ガス輸入をできなくすることで、ドイツの対ロ依存関係を完全に解消させ、同時に、その代替として、米国のシェールガスを液化したガス(LNG)を輸入するように仕向けることで、ドイツを米国の顧客に取り込もうとしたのである。
ノルドストリーム1およびノルドストリーム2をめぐって、米国政府や議会は長く、このプロジェクトそのものを潰そうとしてきた。その変遷については、拙稿「制裁をめぐる補論:『復讐としてのウクライナ戦争』で書き足りなかったこと 〈下〉」(https://isfweb.org/post-14462/)において詳しく紹介したので、そちらを参考にしてほしい。
ハーシュ氏の記事への反応
このハーシュ氏の記事に対する反応として、ホワイトハウスは2023年2月8日、ハーシュの投稿を否定した。国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソン報道官は、「これは全くの虚偽であり、完全なフィクションである」と述べた。米国務省の報道官も同じことを言った。CIAの報道官もホワイトハウスの否定に同調し、この報道を「完全な虚偽」だとした。
これに対して、ロシア外務省は、2022年ノルドストリーム海底ガスパイプラインを破壊した爆発にアメリカが関与した疑惑について答える必要がある、とのべている。今後、ドイツ政府やノルウェー政府がどのような反応をみせるか、注目される。
好戦的なバイデン大統領、サリバン大統領補佐官、ブリンケン国務長官、ヌーランド国務次官
私は、基本的にハーシュの主張が正しいと思う。きわめて具体的な記述がその信憑性を裏付けている。ロシア軍はこれまで背後にイギリスがいるとしてきたが、もっとも怪しいとみられていたアメリカ政府が首謀者であれば、爆破事件をすっきりと説明できる。
ウクライナ戦争に対するNATOの結束に向けた一里塚になるだけでなく、米国のLNGの供給先を長期にわたって確保できるという一石二鳥の「快挙」こそ、ノルドストリーム爆破であったのだ。
だが、これがアメリカ政府の仕業であったことが暴露された以上、米国政府がいくらそれを否定しようと、事実そのものを覆い隠すことはできない。
プーチン大統領がただちに、この爆破をロシアへの宣戦布告と受け止め、アメリカへの直接攻撃に踏み切ることはないだろうが、今後、ウクライナで苦戦がつづく場合に、核兵器をウクライナに使用するハードルが低くなったことはたしかだろう。アメリカの「悪」に、ロシアの「悪」で対抗してもかまわないという気持ちになっても何の不思議もない。
もっとも注目されるのは、ドイツ政府の今後である。バイデン犯人説に傾くことはないだろうが、ドイツ国民はバイデン政権に強い疑いの目を向けることになるだろう。
最後に、日本のマスメディアの報道に注意してほしい。この大ニュースをどう報道するかにマスメディアの使命がかかっているように思われる。日本のマスメディアがこの大ニュースをネグるとすれば、もう日本のマスメディアは終わりだろう。いち早く、このニュースを報じているこのサイトの価値が高まるだけかもしれない。
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1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士。評論家。一連のウクライナ関連書籍によって2024年度「岡倉天心記念賞」を受賞。 著書:(2024年6月に社会評論社から『帝国主義アメリカの野望:リベラルデモクラシーの仮面を剥ぐ』を刊行) 【ウクライナ】 『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社、2023)、『復讐としてのウクライナ戦争』(社会評論社、2022)『ウクライナ3.0』(同、2022)、『ウクライナ2.0』(同、2015)、『ウクライナ・ゲート』(同、2014) 【ロシア】 『プーチン3.0』(社会評論社、2022)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(同、2016)、『プーチン2.0』(東洋書店、2012)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店、2009)、『ネオ KGB 帝国:ロシアの闇に迫る』(東洋書店、2008)、『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社、2005)、『現代ロシアの経済構造』(慶應義塾大学出版会、2004)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書、2003)などがある。 【エネルギー】 『核なき世界論』(東洋書店、2010)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局、2007)などがある。 【権力】 『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016)、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet、2013)などがある。 【サイバー空間】 『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法規制のゆくえ』(社会評論社、2019)がある。 【地政学】 『知られざる地政学』〈上下巻〉(社会評論社、2023)がある。