【連載】ウクライナ問題の正体(寺島隆吉)

第2回 きょう世界は変わった!! ロシアによるウクライナ「ドンバス2カ国」の承認

寺島隆吉

アメリカのバイデン大統領にしてみれば、今まで脅迫すればプーチンは必ず一歩退いて妥協案を出してきたのだから、このまま圧力を強めれば退くと思っていたのかも知れません。しかし、結果としてはウクライナからドンバス2カ国を失うだけに終わったようです。

というのは、ウクライナに「ミンスク合意」を守らせていれば、少なくともドンバスの2カ国は「高度な自治権」を得たとしても、ウクライナの一部として存続することが可能だったのに、ロシアによる「ドンバス2カ国の独立国」承認となれば、この2カ国はウクライナからの分離がほぼ確定したことになるからです。

ミンスク合意を破ったのは誰。https://jp.sputniknews.com/20220221/10223493.html

 

たとえクリミアのようにドンバスにロシアへの併合が認められていないとしても、この承認で「ドンバス2カ国のウクライナからの分離は確定した」とみるべきでしょう。

言いかえれば、ポール・クレイグ・ロバーツ( PCR:Paul Craig Roberts、経済学博士)元財務次官が下記のブログで言及したように、「アメリカ時間2月21日午後4時、きょう世界は変わった!」のです。

もちろん、この動きを受けて、アメリカ=NATO諸国はロシアへの経済制裁を強めるでしょう。そして日本政府も同調を求められるでしょうが、ロシアにたいする武力攻撃にまで踏み出す度胸がバイデン政権にあるかどうか。その度胸があったとしても、その戦争に勝てるかどうか。

なぜならアフガニスタンで、高度な武器を持たないタリバン勢力にたいしてすら地上戦で勝てなかったのですから、高度な武器をもつロシア軍と地上戦を闘ったとしても勝てるはずはありません。

シリアでもアメリカ軍は、アサド政権を守っていたロシア軍と戦って勝ったことはないのですから。

だとすれば、アメリカ=NATO軍に残されているのは、核兵器による攻撃以外にないかも知れません。

アメリカの意向を受けて、シリア政権の軍事基地をミサイル攻撃をしていたイスラエルも、その大半をロシア製の「地対空ミサイル」で打ち落とされているのですから。

しかし核戦争はヨーロッパ全土を廃墟にする可能性があります。それどころか、ロシアによるミサイル攻撃はアメリカ本土にすら達する能力をもっています。

他方、アメリカは宇宙ロケットすら、今までロシア製ロケットエンジンを借りて宇宙に飛び出してきたのですから、核戦争に勝つことは極めて難しいでしょう。だからこそ、ロシア国境近辺の属国にアメリカのミサイル基地をつくってきたのですから。

要するに、今日「世界は変わった!!」のです。アメリカの「終わりの始まり」は加速を増したようです。

(寺島隆吉著『ウクライナ問題の正体1—アメリカとの情報戦に打ち克つために—』の第1章から転載)

 

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寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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