ウクライナ戦争を煽るヌーランド米国務次官:イーロン・マスク氏の呟きを知れ!
国際騒ぎの広がり
ヌーランド発言はさらなる騒動を巻き起こす。TheKremlinYapというアカウントが2月18日にTwitterにアップしたビデオで、ロシアのジャーナリスト、イゴール・コロチェンコ氏は、米国がウクライナによるクリミア攻撃を支持することによってレッドラインを越えたと主張するのである。
最初に紹介したマスク氏のツイートには、2月19日付の「ニューズウィーク」の記事が添付されている。その記事において、このTheKremlinYapのアカウントにおいてアップされたビデオが紹介されているのだ。こうして、マスク氏はヌーランド氏の行った2月16日の発言に注目するように促していることになる。
ヌーランド氏の論理構成では、クリミアはウクライナの領土のままであり、クリミア奪還はウクライナの安定化のための最低限の条件だということになる。
彼女の頭には、自分がナショナリストを煽動して「さまざまな違法武装集団の代表者を訓練」した過去の記憶などまったくないようにみえる。悪いのはあくまでロシアのプーチン大統領であり、自分たちがクーデターをも仕組んだ事実についてはまったく眼中にないかのようだ。
なぜマスメディアは報道しないのか
このマスク氏の指摘について、欧米諸国や日本のマスメディアは無視を決め込んでいる。自分たちにとって、あるいは、自分の国家にとって不都合な情報は報道しないという姑息なやり方を取り続けている。ノルドストリームを爆破させたのがバイデン大統領であるという情報を隠蔽しているのと同じやり口だ。
2014年の「ウクライナ危機」当時、ヌーランド氏主導のあからさまなクーデターについて論じたのが拙著『ウクライナ・ゲート』であった。当時、いま日本のテレビに頻繁に登場している「専門家」はほぼ全員、この著作を無視した。こうした「似非専門家」は、いまのウクライナ戦争を2014年時点と結びつけて論じようとしない。そして、プーチン大統領だけを「悪人」と決めつけている。
それはまったくの間違いだ。プーチン大統領が「悪」であるのはたしかだが、ヌーランド氏も相当に悪辣なのである。この事実に気づいてほしいと思って、マスク氏は、“Nobody is pushing this war more than Nuland”とツイートしたのだと思う。どうか、彼の想いに気づいてほしい。
マスク氏への露骨な批判
米国が恐ろしいのは、こうしたマスク氏に対して露骨な批判が展開されていることだ。ヌーランド氏およびその夫ロバート・ケーガンと親しい関係をもつ「ワシントン・ポスト」は2023年2月22日に、「ロシアのプロパガンダがツイッターのブルーチェック認証を買っている。
この認証は、主に米国のウクライナ支援に反対する彼らのツイートが、より目立つようになることを意味している」という記事を公表している。「イーロン・マスク氏の買収が政治的な誤報の拡散を加速させている」として、マスク氏によるツイッター買収とその後の有料認証モデルの導入がロシアの息のかかった誤報(ミスインフォメーション)の拡散に一役買っているという、批判記事になっている。
マスク氏への批判は的を射ているかもしれない。しかし、それだからといって、マスク氏によるヌーランド氏への批判がまったく間違っているということにはならないだろう。
私が不可思議に思うのは、ヌーランド氏のような好戦的な人物がなぜ批判されないのかということである。自分の失敗で失われたクリミアを奪還しようと考えること自体が間違っている。
戦争を長引かせているのは、ヌーランド氏のプーチン大統領への復讐心なのではないか。そんな「私怨」で何十万もの人々が死に、何百万人もの人が難民化しているとすれば、ヌーランド氏のような人物を一刻も早く唾棄しなければならないのではないか。
彼女を擁護し、その問題点を読者に伝えることさえしないマスメディアは批判されるべきではないか。こんな人物がバイデン政権の中枢にいるかぎり、ウクライナ戦争の終結は遅れ、世界が第三次世界大戦という奈落に向けてまっしぐらに落ちてしまうのではないか。私はそう危惧している、マスク氏と同じように。
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1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士。評論家。 著書:(2024年6月に社会評論社から『帝国主義アメリカの野望:リベラルデモクラシーの仮面を剥ぐ』を刊行) 【ウクライナ】 『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社、2023)、『復讐としてのウクライナ戦争』(社会評論社、2022)『ウクライナ3.0』(同、2022)、『ウクライナ2.0』(同、2015)、『ウクライナ・ゲート』(同、2014) 【ロシア】 『プーチン3.0』(社会評論社、2022)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(同、2016)、『プーチン2.0』(東洋書店、2012)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店、2009)、『ネオ KGB 帝国:ロシアの闇に迫る』(東洋書店、2008)、『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社、2005)、『現代ロシアの経済構造』(慶應義塾大学出版会、2004)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書、2003)などがある。 【エネルギー】 『核なき世界論』(東洋書店、2010)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局、2007)などがある。 【権力】 『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016)、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet、2013)などがある。 【サイバー空間】 『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法規制のゆくえ』(社会評論社、2019)がある。 【地政学】 『知られざる地政学』〈上下巻〉(社会評論社、2023)がある。