米軍吸収で自衛隊が核戦争部隊に、「安保3文書」の日本が米国に約束した「宿題」
安保・基地問題・究極の目的は日本の「代理〝核〞戦争国」化
最後に残された「厳しい宿題」、非核3原則の見直しの議論はすでに昨年から始まっているが、この「宿題」の究極の目的について考えてみたい。折木良一・自衛隊元統合幕僚長は文藝春秋2022年4月号に「『専守防衛』『非核3原則』を議論せよ」との論文を発表。ここで「核持ち込み」容認を説いた。
そしてバイデン政権が2022年10月末に米核戦略見直し(NPR)を発表した際、日本への「核の拡大抑止の提供」を保証したことに伴い、日本テレビ系の「深層ニュース」に出演した兼原信克・同志社大学特別客員教授(元内閣官房副長官補・元国家安全保障局次長)は「非核3原則の見直し」の必要性について事細かに説いた。
兼原氏は「日本が米国の核の傘の提供を受けられるようにするためには“核持ち込み”を認めるべき」だと、これまで以上に強く主張したのである。
その根拠として第1に、米国は戦略核(大陸間弾道弾ICBM)を日本のためには使ってくれないことを挙げた。米国本土が核報復攻撃を受け、核戦争の場になるような戦略核の提供はありえないからだ。
ゆえに日本に提供される「核の傘」は、米国として「使える核」、米国に被害の及ばない核ということになる。つまり、日本からミサイルを発射できる戦術核となると結論づけた。
第2に、その具体化として「核搭載のF35の飛来や常駐、戦術核弾頭トライデント搭載の戦略原潜の寄港などを認める」ことなどを兼原氏は述べた。真の狙いは「自衛隊の地上配備型中距離ミサイルに核搭載を可能にすること」にある。
以上をまとめれば、第1に米国の提供する「核の傘」は日本国内の戦術核配備以外にないこと、したがって第2に日本から発射すれば中国・朝鮮に届く中距離ミサイルを自衛隊に配備し、これに「戦術核」搭載を可能にすること。ゆえに「核持ち込み」を認めるべきだということだ。
要するに「日本本土を戦術核の基地にする」、これを「自衛隊が担う」、これが米国の狙いだということだ。
何のことはない、米国本土が核戦争に巻き込まれないで日本列島を核戦争の最前線にするための、実に虫のいい「拡大抑止の提供」ではないか。
ここから導き出される結論は、米国の究極の狙い、すなわち「日本を代理“核”戦争国にすること」! まさにこれだ。兼原氏は「被爆国として非核の国是を守ることが大事なのか、それとも国民の生命を守ることが大事なのか、国民が真剣に議論すべき時が来た」との二者択一論で国民に覚悟を迫った。
こんな国民愚弄の詭弁を弄してまで「非核」の国是放棄を説くのは、それだけ米国が日本の「代理“核”戦争国」化実現に焦っていることの証左ではないだろうか。
・自衛隊「統合司令部」に米軍将官が常駐
森本氏は前述の番組で、「安保3文書」明記の自衛隊の「矛」化により従来の日米の役割分担が変わる、ゆえに早急に日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改訂が必要になると述べた。
これとの関連で「国家安全保障戦略」改訂で重要な変更があった。それは従来「統合幕僚監部」が持っていた3軍指揮命令権を、新設の自衛隊「統合司令部」に委譲することだ。
ここで注目すべき変化は、この自衛隊「統合司令部」に米インド太平洋軍の将官が常駐配置されることだ。有事にはインド太平洋軍が作戦指揮権を持つための布石といっていい。
この日米軍事「統合」で有事に自衛隊は米軍指揮統制下で戦争することになる。“核”は米軍から借り受ける「核共有」だから、実質上も自衛隊「スタンドオフミサイル部隊」は米軍指揮下の「中距離“核”ミサイル」部隊=“核”戦争部隊になる。このことが示すのも、これまで述べてきた通り、日本が米軍指揮下の代理“核”戦争国になるということにほかならない。
これが米国の求める究極の「対中対決“最前線”を担う日本」のあり方だ。
森本氏が言及した今後、改訂されるであろう新ガイドラインは「安保3文書」の「宿題」実現を日本に「対米義務」として行なわせるものになる。米軍指揮下の自衛隊が対中代理“核”戦争を担う。これを日本が「同盟義務」として「自主的に」実行させられる。このことが今年以降、日本政府に課せられる「厳しい宿題」だ。
米国も「厳しい」と認識する通り、日本の非核の国是を崩すのは簡単ではない。ということは、日本人が「代理“核”戦争国」化の危険性を非核の国民世論に訴え、「安保3文書」実行阻止の闘いに転換できる絶好のチャンスとすることもできるということではないか。
いまは「米国についていけばなんとかなる」時代ではなくなったことは、誰もが感じている。香田洋二元海将は防衛力整備計画を「子どもの思いつきかと疑う」とまで言い切った。日本の政財界、自衛隊支配層も現場感覚で「何かおかしい」と感じ始めている。しかし彼らには米国の理不尽な「宿題」を押し返す力はない。
いま防衛費倍増、増税の軍拡に反対する声が国民の間で上がり始めている。ましてや非核の国是を放棄してまで「代理“核”戦争国」になる「覚悟」を迫られて、これに唯々諾々と従う日本人はいないはずだ。
国民の大きな力で理不尽な「宿題」を突き返す。そのような闘いが起こることを「遠くて近い」ここピョンヤンの地から心より願っている。
(月刊「紙の爆弾」2023年3月号より)
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1947年生まれ。同志社大学で「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕。よど号赤軍として渡朝。「ようこそ、よど号日本人村」(http://www.yodogo-nihonjinmura.com/)で情報発信中。