自民党内「反岸田」に〝解散〞のブラフ、防衛増税・原発推進 岸田文雄「強権」の裏
政治・ポスト岸田不在で〝菅義偉待望論〞
このような状況を察知してか、菅前首相の動向が注目され始めた。
1月10日発売の文藝春秋2月号に「派閥政治と決別せよ」と題した菅氏のインタビュー記事が掲載された。その中で、国民の声が政治に届きにくい要因の1つに派閥の存在があると指摘したうえで、「私が総理大臣の時には、派閥の推薦は受けずに人事を決めていました」と語っている。
返す刀で「(岸田首相は)派閥とうまく付き合いながら人事を決めていると思います。岸田総理は未だに派閥の会長を続けていますが、小泉純一郎元総理も安倍晋三元総理も、総理大臣の時は派閥を抜けました」と述べ、今もなお派閥の領袖に居座り続けている岸田首相に、派閥離脱を突きつけた格好だ。
その菅氏は同18日にラジオ日本の番組に出演。岸田首相が防衛費増額のための増税方針を表明したことは「突然だったんじゃないか」と語り、「たとえば行政改革とかいろんなことを示したうえで、できない部分は増税させてほしいとか、そういう議論がなさすぎだ」とあからさまに批判した。
昨年から囁かれていた“ポスト岸田”で、自民党内で菅待望論が沸き起こっていた。それは各派閥の領袖の顔ぶれを見れば一目瞭然だ。麻生太郎副総裁(志公会、54人)、茂木敏充幹事長(平成研究会、54人)、二階俊博元幹事長(志帥会、43人)、森山裕選対委員長(近未来政治研究会、7人)といった面々がいるが、最大派閥の清和会(97人)は、安倍元首相亡き後の後継が未だ決まっていない。
会長代理の塩谷立元文科相が引き継ぐかと思われたが、まとまらず会長の座は空席のまま。その中でも清和会会長の座に1番近いのが、萩生田光一政調会長だと目されている。
麻生・二階氏の2人はネームバリューがあるものの、ともに80歳を超える高齢で、派閥外からは人望が薄い。森山氏は最小派閥であるとともに知名度も薄い。茂木氏も派閥以外での党内の評判はよくない。つまり、ポスト岸田が不在なのだ。そんななか、無派閥でありながら前首相だった菅氏が再び脚光を浴びてきたのである。
「官僚の操縦法を熟知し、安倍政権時は官房長官として支え、1年間の短命ではあったがデジタル化などの政策実現に手腕を発揮したとして菅さんの株が上がったところに、ポスト岸田として彼を担ごうとする動きも重なった。岸田首相は、防衛増税での動きを見てもわかる通り、財務省の思惑のままに動いている。当初は再登板に消極的だった菅さんだが、かつての官僚支配に戻った岸田政権に対して怒り心頭となり、反旗を翻したとしてもフシギではない」(無派閥の自民党中堅衆院議員)。
・維新は菅前首相とも連携か
さらに、菅氏との関係が深い日本維新の会の動きも興味深い。1月18日、立憲民主党と維新は党首会談を行ない、「安易な増税に反対」などのテーマで通常国会でも連携することを確認した。昨秋の臨時国会に続き、共闘して政権に対峙するという。
しかしその前日、維新は自民党とも憲法改正や安全保障政策などで協力していくことを確認。与党でもなく野党でもない、“ゆ党”と呼ばれていた維新の面目躍如といったところなのだろうか。
「維新はもともと、立憲との共闘は臨時国会のみとのスタンスだった。というのも、現在の維新の最重要課題は統一地方選だからです。現在450人の地方議員を1.5倍の600人にするという数値目標を掲げているなかで、敵対する立憲と通常国会でも手を組むというのは保守の票が逃げてしまいマイナスになるという判断があったから」(永田町関係者)。
しかし、実際は立憲と手を組んだ。そのウラには自民党との共闘もあったからだという。
「維新は統一地方選で与党・野党関係なく是々非々の姿勢を貫く政党のイメージをアピールしたかったのでしょう。しかも、維新はもともと、安倍・菅政権と距離が近かった。菅氏と連携して岸田降ろしの一翼を担えれば、政党のイメージアップにも繋がるとの判断に加え、菅氏が返り咲いた際には連立入りの可能性も出てくる」(前出・永田町関係者)。
岸田政権発足以降、これまでにないような低調ぶりが続く国会で、本当に先送りできない問題は、岸田首相自身のことなのかもしれない。しかし、平和国家を投げ捨てる暗愚の現首相とはいえ、彼に政権を渡した前任者の名前が後継にあがるなど、この国は行き着くところまで来た感は否めないだろう。
解散の有無よりも自民党内の政局が焦点の1年となりそうな気配である。
(月刊「紙の爆弾」2023年3月号より)
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黒田ジャーナル、大谷昭宏事務所を経てフリー記者に。週刊誌をはじめ、ビジネス誌、月刊誌で執筆活動中。