安倍元首相ドキュメンタリー映画『妖怪の孫』、監督が制作秘話など語る(中)
政治3月17日に新宿ピカデリーなどで全国公開される映画『妖怪の孫』(内山雄人監督)の先行上映会が2月23日に東京都内で開催された。
A級戦犯容疑者(後に不起訴)となりながら首相の座にまで上り詰めた“昭和の妖怪”こと岸信介・元首相と、その孫の安倍晋三・元首相に斬り込むドキュメンタリー映画。
上映会後には、企画プロデューサーを務めた元経産官僚の古賀茂明氏、東京新聞の望月衣塑子記者と内山監督が対談、亡くなった映画プロデューサー・河村光庸氏の思いを受け継いで完成に至った制作秘話をはじめ、銃撃事件後も続く“アベ政治”などについて語り合った。
司会者:
本当にそうですよね。「パンケーキ(を毒見する)」の時もそうですけれども、新宿ピカデリーに人がすごく集まっていて、それが口コミで広がって行ったというのがある。今日は写真もOKにしているので、今日、見た感想をぜひ、皆さんで広めていただいて。
内山氏:
前回もそうですが、ちょうどこのタイミングでツイッターが凍結されたのです。もし凍結される力がある方がいたら、凍結していただいて、また盛り上がる。
望月衣塑子氏:
(前略)私もインタビューをさせていただいたウメさんという安倍さんの乳母に非常に食い込んでいて、ものすごい数のオフレコ集が映画のなかに出てきますけれども。幼少期からおじいさんを越えようとしてきたのだなとわかる。(中略)
これからの岸田政権を動かしていく原動力の元になるものが、岸さんであり、安倍さんであることを改めて痛感しました。本当に良かったです。(中略)
メディアの問題も取り上げていて、軍拡偏重になっていく状況なんかを見ると、まったく同じだと感じた。監督が最後に葛藤するシーンがある。最後、迷う姿は監督らしい。あれを入れた意義は?
内山氏:
取材する側がリスクを背負うことがある。出ていただいた方への思い、覚悟を伝えないといけない。自分事にならないのかと考えていた。終わり方が何となくぼんやりしているという評が出た。自分でも格好悪さもあったが、思いをぶつけてみた。家族だけの社内チェックを受けた。妻は編集者。涙ぐんだりした。家族は納得してくれた。(中略)
望月氏:
しかし亡くなってもなお、そんなに萎縮、忖度をするのか。私はビックリする。単に安倍さんが怖いのか。背景が怖いのか。私は、安倍さんが亡くなって少しは世の中が宏池会的な穏健派になるのかなと思ったら、今はもっとひどいですよね。
古賀氏:
それはアメリカも同じだと思いますけれども、要するに安倍さんがいわゆる岩盤支持層である非常に硬い右翼の支持層を固めてしまったわけですよね。国民全体からすれば、1割くらいだと思うけれども、いま投票率がものすごく低いですからね。5%でも非常に大きいです。その支持を失うと、やはり当選できないかもしれない。あるいは、岸田総理からいえば、やはり(自民党国会議員の)数が減るかもしれないので、その支持を取り付けないといけない。その層を一番取っているのが安倍派ですから。だから(岸田首相は)安倍派に忖度せざるを得ないというかたちになっている。
だから岸田さんが本当に何を考えているのか。岸田さんは何も考えていないと思いますけど、どうやってもそこ(安倍派と岩盤支持層)を無視するとか、そこを怒らせることはできない。
トランプも力が落ちてはいるけれども、それでも一定の支持層をがっちりとつかんでいる。日本も同じだなと。そういう意味で、僕は「妖怪の孫」というタイトルはすごく良かったなと思っていて、安倍さんがいなくなった。岸さんも関係ないのだけれども、引き続き、その影響力はずっと続いていると。このまま行くと、日本を変えていく。今、大きく変わろうとしていますけれども。
望月氏:
それを変えていくために統一地方選があるのだけれども、こういうドキュメントが出てくると、今日も鈴木エイトさんがきて見ておられると思うのだけれども、これがまた年末、年を超えて、最近またミヤネ屋でエイトさんの姿を見たのですが、ちょっと(旧統一教会問題について)メディアが収束気味です。
古賀氏:
やはり統一教会の報道が基本的に被害者の問題になったのです。「被害者救済の法律をつくれ」と。「それが甘い」とか。そこに集中してしまって、一番大事な、自民党とどういう関係だったのか。それで、どういうふうに政策が歪められたのかというところにはいかないのです。萩生田さんとか。萩生田さんは政調会長ですよ。驚くべきことですよ。だけど、そういうところについては新聞やテレビはやらないのです。(中略)
2015年に「I am not ABE.」をやった。安倍さんはトンでもないと言った。それは正しかった。それから、あのときに一番言いたかったのはマスコミが変わってしまったということです。
ガンジーの言葉を出して、とにかく、あなたたちがやっていることは無駄なことの連続かもしれないが、それをやらなくなると自分が変えられてしまうのですよという言葉を出して、それは古館さんにも伝えた。それが今のマスコミが変われない。
そのまま続いてしまっているなというふうに思うので、やはり、そこに気が付いてほしい。日本のマスコミ統制はたいしたことはない。殺されるわけではない。海外ならみんな殺されたり、牢屋に入れられたりする。せいぜい、僕も庭に頭を割られたハクビシンの死体を投げ入れられたりとか、家を停電させられたり、というのはあったけど、決して体を傷つけられたり拘束されたりしたことはない。
(つづく)
(『Net IB-News』より転載)
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安倍元首相ドキュメンタリー映画『妖怪の孫』、監督が制作秘話など語る(前)
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1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。