検察が特別抗告を断念、袴田さんの静岡地裁での再審開始が決定
メディア批評&事件検証冤罪を晴らす春の吉報が日本列島に吹いた。袴田事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審(裁判やり直し)を認めた東京高等裁判所(大善文男裁判長)の決定について、検察が不服として特別抗告をする期限日である2023年3月20日、東京高検は特別抗告を断念した。これにより静岡地裁での再審開始が確定した。
東京高裁が再審(裁判やり直し)決定の中で、あえて捜査機関による証拠捏造にまで踏み込んで指摘した異例の判断は、時間稼ぎにしかすぎない往生際が悪い検察の特別抗告の姿勢を正すためだったのかもしれない。
特別抗告の期限日を前に同年3月18日には、再審(裁判のやり直し)に関する法律の改正を訴えるシンポジウムが東京都内で開かれた。同シンポジウムでは、70年以上にわたり一度も改正されていない再審法を主要テーマに、再審法改正を訴える弁護士などが参加して、証拠開示に関する精度が明確でないことや検察による抗告が冤罪被害者を救済する妨げになっている実態などを訴えた。
会場では、2014年に静岡地裁で再審開始を決定して袴田さんを釈放した村山浩明昭元裁判長が意見を述べ、東京高検が特別抗告を検討していることについて「ありえない」と初めて公の場で批判した。さらにこうも検察に異例の牽制を行った。
「これで抗告をすれば、まったく理由がないのではないかと思う。高裁の裁判官は色がわからなかったとでも言うのかなと思って。私はもし、袴田事件で抗告をしたら検察の特別抗告は法律で禁止しなければいけない。という意見がもっともっと高まると思う」。
一方、滋賀県日野町で1984年に酒店経営の女性(当時69)が殺害され、手提げ金庫が奪われた強盗殺人事件の「日野町事件」で、無期懲役が確定し、服役中に病死した阪原弘元受刑者(75)の再審開始を認めた同年2月27日の大阪高裁の決定に対し、大阪高検は抗告期限だった3月6日に判決内容を不服として最高裁に抗告した。
被告の死後に遺族らが請求した「死後再審」決定に対する高検の抗告によって再審開始の可否が再び争われ、さらに長期化する見通しだ。
私も思う。検察による最近の特別抗告は只の嫌がらせで、本当に真実探求のためとは思えないほど醜いし、目に余る。法律で抗告を禁止しなければいけない事態に入ったと言っても過言ではない。
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独立言論フォーラム(ISF)副編集長(国内問題担当)。1956年、長崎県五島市生まれ。1978年朝日新聞社入社。西部本社報道センター次長、鹿児島総局長、東京本社特別報道部長代理などを経て2021年に退職。鹿児島総局長時代の「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』をめぐるスクープと一連のキャンペーン」で鹿児島総局が2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞などを受賞。著書に『「違法」捜査 志布志事件「でっちあげ」の真実』(角川学芸出版)などがある。