【連載】横田一の直撃取材レポート

サイボウズ青野社長酷評のマイナカード、河野大臣は見直すか(前)

横田一

「『マイナンバーカード』の設計不良」と銘打った特集記事(5ページ)を出したのは、2月22日発売の週刊新潮。旗振り役の河野太郎・デジタル担当大臣に喧嘩を売るような内容で、サブタイトルは「『河野太郎』に騙されるな ポイントで駆け込む前に考えたい」。

見出しの隣には、河野大臣がマイナカードを使ってお酒を買って利便性をアピールした写真(後述する1月31日のコンビニ視察)を掲載する徹底ぶり。毎日新聞の世論調査で岸田首相を抑えて「首相になってほしい人」1位を続ける河野大臣に対して、疑問を投げかける内容になっていたのだ。

コンビニでマイナカードの利便性をアピールする河野大臣

 

実は、ソフトウェア開発のサイボウズ(株)の青野慶久社長も、非効率なマイナカードの抜本的見直しを訴えていた。2022年12月10日の第4回「武蔵野政治塾」では、次のように、週刊新潮の記事を先取りするかのような、河野大臣への失望感も述べていたのだ。

「マイナンバーはいいから、マイナンバーカードは止めませんか、と言っているんですが、いったん走り出すと、止まらない感じですね。菅[義偉]さんが総理になったとき、[マイナカード見直しの]改革をやってくれるのかなと思ったんですがダメでした。デジダル庁ができて、改革派の河野さんが大臣になったのでまた期待したけど、河野さんは、さらにアクセル踏んで、投入される税金がどんどん増えていく。非効率なものは、止めようよ、と言っているんです」。

「政治に復活の息を吹き込む」ことなどを目指して2022年8月に設立された[ 武蔵野政治塾」は、前川喜平・元文科省事務次官をはじめとする著名人を呼んだイベントを定期的に開催。「政治を変えたい経営者たち」と銘打った第4回では、同政治塾事務局長のポールトゥウィンホールディングス(株)の橘民義会長と青野社長が対談し、マイナカードや選択的夫婦別姓を改革すべき政治課題として取り上げていたのだ。

しかし河野大臣は普及のアクセルを踏むばかりで、マイナカードを見直す兆しはまったくない。1月31日には四ツ谷駅近くのコンビニを視察。マイナカードを読み取り機器に差し出すことで、酒とたばこをセルフレジで購入できることを実体験、店員の年齢確認が不必要になる利便性をアピールしてみせたのだ。

直後の囲み取材でも河野大臣は「(待ち時間は)まったくなかった」とストレスなしで購入できたことを強調したが、読み取り機器は運転免許証にも対応可能で、マイナカード取得で新たな利便性向上になるわけではない。非効率なマイナカード普及推進のためのパフォーマンス的視察(税金の無駄使い)にしか見えなかったが、せっかく機会なので青野社長の疑問をぶつけてみた。

──「マイナンバーカードよりもスマホの全員配布の方が利便性が高い」とサイボウズの青野社長が代替案を言っているが、このまま進める考えなのか。

河野大臣:「5月11日からまずアンドロイドにスマホ搭載が決まるので、そこはしっかりと進めていきたいと思う」。

この方向性自体は青野社長と同じだが、それならマイナカードを止めて一気にスマホ全員配布へと移行してしまえばいい。青野社長は先の武蔵野政治塾で、現行方式の設計不良点を挙げたうえで、次のようにスマホベース方式への転換を訴えていた。

「スマホの普及率8割の時代に、なぜプラスチックの[マイナ]カードなのか。しかも、そのカードを送ればいいのに、自治体に申請させる、なんてことをしている。自治体の窓口の人、大変じゃないですか。しかも、10年ごとに更新しなければならない(電子証明書は5年)。

しかも、暗証番号を忘れたら、再設定が必要で、また役所に行かなければならない。ちょっと待てよ、いま、僕たち、仕事を減らそうとしてがんばっているのに、なんでそんなことをしているのか。

しかも[中略]何兆円もかかっているそうですよ。もう、これはいったんやめて、スマートフォン・ベースのもっとライトなものにしてほしい。[中略]利便性が低くて、使いにくいから、みんな作らないわけでしょう。解決すべきは、そちらなのに、ポイントをあげるとかやっている。利便性の低いカードを無理やり配るのはなぜなんですか。それでお金を儲けている方がいらっしゃるのか」。

(「NetIB-News」より転載)

 

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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