サイボウズ青野社長酷評のマイナカード、河野大臣は見直すか(後)
政治マイナカード中止を提案する一方で、青野社長は、次のようにしてスマホ全員配布の進め方やメリットも語っていた。
「8割の人はスマホでいいとして、残り2割の人はどうするか、ですね。僕の意見としては、残りの2割の人にもスマホを配ればいいと思います。プラスチックのカードをもらっても、何にもできません。けれど、スマホであれば、災害時に情報を送れるし、プライバシー情報を解禁してもらえれば、どこにいるのかもわかる。
スマートウォッチで心拍数もわかる。高いレベルの国民向けサービスが作れます。[中略]デジタルによって、僕たちの生活はもっともっとよくできるので、スマホをインフラとして配る。スマホをべースにした社会を作れ、というのが、僕の意見です。あの[マイナ]カードには意味がないです」。
武蔵野政治塾の対談では、橘氏が「カード1枚に自分の情報が全部入り、それを国が管理するのは嫌だと考える人もいる」と問題提起をしたのを受け、青野氏が海外の事例を挙げて説明していく場面もあった。
「ルールを決めて運用すべきです。自分の情報を預ける場合、僕が知りたいのは、僕の情報に誰が何の目的でアクセスしているかです。エストニアという国はデジタル国家として知られていますが、情報を預けると、誰がいつ、どんな目的でそれにアクセスしたか、履歴が全部わかるようになっています。だから、おかしなことに使われていたら文句を言えます。それなら安心して、情報を預けられます。
日本のマイナンバーはそうなっていません。ルールもない。運用もしっかりしていない。そんなところに情報を預けるのは怖いです[中略]ヨーロッパは、はるかに厳しいです。GDPR(一般データ保護規制)というのがありまして、それを守らないといけない」
このことについても、河野大臣の囲み取材で聞いてみた。
──「欠陥もある」と青野社長は仰っているのですが、「他人がアクセスした履歴を見ることができない」という欠陥についてはどう考えているのか。
河野大臣:「マイナンバーカード、マイナポータルからいろいろな情報を誰が見たかは確認できる」。
河野大臣は問題ないと答えたが、冒頭の週刊新潮の記事は、河野大臣推奨のマイナカード“常時携行”のリスクを指摘。「現行のマイナンバーカードには異なる目的を持つ機能が乱暴に放り込まれ、“持ち歩いてよい機能”と“大切に管理すべき機能”とがごちゃ混ぜになってしまっています」(『超ID社会』の著者で「情報システム学会」常務理事の八木晃二氏)という専門家の声を紹介。
「カード盗難で簡単に突破」という小見出しとともに、「これ[多段階認証が常識であること]を考えれば、マイナカードを使用した認証セキュリティレベルはあまりに脆弱」という警告も発していた。「問題なし」と答えた河野大臣の“安全宣言”が本当に正しいのか。海外並のセキュリティレベルになっているのかを検証することが必要だ。
あわせて、5月のスマホ搭載を機に現在方式からスマホ全員配布方式へ転換していくのか否かも注目される。河野大臣の首相適格性をチェックする判断材料にもなりそうなマイナカード。今後の河野大臣の言動から目が離せない。
(「NetIB-News」より転載)
〇ISF主催公開シンポジウム:加速する憲法改正の動きと立憲主義の危機~緊急事態条項の狙いは何かのご案内
https://isfweb.org/post-17487/
〇ISF主催トーク茶話会:羽場久美子さんを囲んでのトーク茶話会のご案内
https://isfweb.org/post-17295/
※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。