秘密漏洩事件を利用し「軍国日本」定着へ:特定秘密保護法と憲法9条自衛隊
社会・経済政治防衛秘密と憲法9条
自民党政権は、自ら主張していた専守防衛が9条解釈の限界だとする見解すらかなぐり捨て、自衛隊の海外派兵をも可能としてしまった。
もともとの自衛隊法には、防衛秘密の規定は存在しなかった。2001年の改正で96条2の規定が新設。前述したように、それこそが、特定秘密保護法の防衛秘密規定そのものである。
憲法9条は戦力不保持を宣言しているため、そもそも防衛という概念は存在しないはずであった。しかし、政府による「解釈改憲」の進行とともに、「自衛権は国家としての固有の権利だ」との認識に基づき、専守防衛論を一般化させた。
それでも、自衛隊はあくまでも防衛のために存在するのであり、戦争のためのものではない。防衛秘密という概念は2001年以来の新しい概念であるため、その分析が十分になされているとはいいがたい。そこで、筆者なりにその分析を進めるべく、1つの試論を提示してみたい。
防衛秘密には、防衛的秘密と攻撃的秘密が存在する。防衛的秘密は日本が侵略されないための秘密であり、漏洩すれば他国を利することになる情報である。それに対し、攻撃的秘密とは、仮想敵国を想定し、その国の戦力を分析した情報である。敵基地を攻撃する場合には絶対に必要なものであろう。
この攻撃的秘密は、前述した10の防衛秘密のうち、少なくとも「ロ.防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報」と「ハ.ロに掲げる情報の収集整理又はその能力」が該当する。また、「イ.自衛隊の運用又はこれに関する見積もり若しくは計画若しくは研究」や「ニ.防衛力の整備に関する見積もり若しくは計画又は研究」についても、ロやハを含む範囲においては攻撃的秘密に当たるだろう。
このような視点に立てば、憲法9条の専守防衛論で認められる防衛秘密は防衛的秘密に限られるべきであり、攻撃的情報は収集されてはならない。しかし、防衛秘密の規定は抽象的なものだから、その範囲が解釈によりどんどんと広げられる危険性がある。
1月23日、岸田首相は施政方針演説の中で、防衛力増強、防衛費の増額に触れ、「今回の決断は、日本の安全保障政策の大転換ですが、憲法・国際法の範囲内で行なうものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての我が国の歩みを、いささかも変えるものではない」と述べた。しかし、そこに具体的内容はない。安保政策の大転換が憲法9条の下で許されるのかが問われているのである。
岸田演説に現れているように、自公政権は、憲法9条よりも日米安保を重視し、共同して軍事作戦を行なおうとしてきた。このような姿勢を支持するのか否かが、先に挙げたマスコミの姿勢の違いに現れたのであろう。
しかし、残念ながら、それらの中には、憲法9条の文字は見当たらない。安全保障を担うのは自衛隊という軍隊であり、防衛秘密を持っているのも自衛隊である。今回の漏洩事件は日本の軍国化を示す一端であり、防衛秘密は憲法9条に違反しているとの観点から徹底的に闘っていこうではないか。
(月刊「紙の爆弾」2023年4月号より)
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「ブッ飛ばせ!共謀罪」百人委員会代表。救援連絡センター代表。法学者。関東学院大学名誉教授。専攻は近代刑法成立史。