「法的秩序が崩壊した」東電福島事故
核・原発問題トリチウム汚染水の海洋投棄は被曝防止/環境保護の誠実な精神を放棄したものです。岸田内閣の原発回帰の前提精神です。人権擁護の精神的退廃と称すべき事態が一挙に噴出しました。今回はトリチウム汚染水海洋投棄の背景をご報告いたします。
(事故以来9年間で何と63万人の異常な過剰死亡)
厚労省の人口動態調査によると、年齢別死亡率データは、弱年層(0才~19才)と老年層(60才以上)は2010年以前に比較して過剰死亡が63万人も認めらます。逆に体力のある青年壮年層(20才~59才)は、56万人の長寿化が認められます。粗死亡率(年々の死亡者を人口で割る)からは7万人程度しか死亡増加が見えませんが、年令別死亡率を見ると大変な状況です(矢ヶ﨑克馬・小柴信子:次回報告)。
公的機関を含む医療・統計現場が、健康的異変を一切語らない異常事態です。
単に「人権に基づく誠実な医療視線」が崩壊しただけではありません。被曝問題全般を通じた法的崩壊が「知性の退廃」として急展開したのです。
(法により定められた精神/手順を無視した政府の原発事故対策)
民主党菅内閣は、様々な分野で、特に被曝防護に於いて、「憲法」条項、市民に対する放射線防護基準を明示している「炉規法」、労働安全衛生法、電離放射線障害防止規則(電離則)、原子力災害の際の「原子力災害対策特措法」、「原子力緊急事態宣言」等々の精神を生かさず無視し、住民を放射線から防護すること(基本的人権)を破壊する方向で「原子力緊急事態宣言」を大権として行使しました。災害救助法等の立法理由にも原発事故に言及した記述がないことも深刻な事実です。
憲法や法律で市民を保護し権利を保障している事柄は、国あるいは地方自治体に履行義務があります。日本政府/福島県は義務を放棄し、逆に法律規定に反する諸施策をしております。
根底には主権者住民を愚民視する基本的人権感覚の欠如が上げられます。
(約束無視の数々)
下記は、日本政府/福島県が行なった無法のホンの一例です。
- 法律による住民の被曝防護基準1ミリシーベルト/年を放棄しました。
20ミリシーベルトが長期適用された。被曝防護の逆。 - 「20mSv」は文科省の通知として発出。原子力災害対策会議のきちんとした会議での決定無し。国会にも諮っていない。制定ルールの冒涜
- 原子力災害対策現地本部から特措法違反の「立地町」排除。事故対策避難訓練にも決定的に反する対策内容/組織。地方自治法そのものを破壊する施策。対処ルールの冒涜。
- 虚言による「心理学的対応」。山下俊一等の御用専門家を動員して、安定ヨウ素剤不要論や、「100ミリシーベルト安全論」等々、被曝被害軽視の大キャンペーン。 被曝防護の逆。
- 被曝防護に対する政治責任の放棄。特に内部被曝防止の長期視点に立つ公的具体策は皆無。棄民。
- 法定義の無視。環境の放射能汚染の定義は「空気吸収線量」。しかし、政府の現実適用は定義の60%(生活時間を仮定した実際上の被ばく線量(屋外8時間、屋内16時間;屋内線量は屋外の40%と仮定))を適用。線量認知方法での虚偽。
- モニタリングポストの表示値は実際の約半分(矢ヶ﨑等の測定)(測定器の指針の違法的調整の疑いあり)。測定という科学手段による背信行為。
- 「放射能汚染廃棄物」基準、100Bq/kgから8000Bq/kgへの引き上げ。被曝防護の逆。
- 緊急スクリーニングの国際的基準(OIL4)の不遵守。被曝防護の逆。
- 緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)のデータ不開示。愚民視(基本的人権感覚の欠如)による。
- 安定ヨウ素剤の不配布:甲状腺被ばくの物理的手段の放棄、愚民視。
- 避難者への差別 チェルノブイリでは自主避難者も強制的避難者も全く同等に処遇された。それに対し、日本では明確な差別化(規制区域外避難者(自主避難者)と規制区域内避難者を差別/分断)。生活権/居住権等々に差別が激しく現れている。人権感覚の欠如。
(原子力産業史上異常な「核産業擁護」)
原発事故後5年(1991年)で策定されたチェルノブイリ法は周辺3国に於いてほぼ同内容であり二つの法律からなります。「社会保護に関する国家法」と「汚染地域の法制度に関する国家法」です。チェルノブイリ法の前文を紹介することで日本の異常さが浮き立ちます。
(社会的保護に関するウクライナ国家法)チェルノブイリ激甚災害被災者に対する実効性ある福祉システムの構築のために、あらゆる財源、膨大な物資と先端科学を総動員する必要がある。
チェルノブイリ原発事故により被災した市民の憲法上の権利の実現、および被災者の生命と健康保護のため、放射性物質により汚染されたゾーンの区別とその判定手順、汚染地域での居住、就労の条件、被災者の社会的保護の基本条項を規定した法律である。法の目的は被災者を保護し、地域的な放射能汚染の結果発生した、関連する医療問題と社会問題を解決することである 。
これに対し日本の関連法全てに「憲法上の権利」等人権/権利に関する明文化はありません。「子ども被災者支援法」には基本的人権に関わる条文はありますが、具体的適用条件は一切無く、適用は行政府に一切が委ねられました。それ故安倍自民党内閣によって一切が骨抜きにされました。
日本では諸措置が人権に基づく基盤を欠いたのです。
医療で言えば、医療基準が崩壊し、一切の医薬投与が打ち切られた様なものです。
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1943年出生、長野県松本育ち。祖国復帰運動に感銘を受け「教育研究の基盤整備で協力できるかもしれない」と琉球大学に職を求めた(1974年)。専門は物性物理学。連れ合いの沖本八重美は広島原爆の「胎内被爆者」であり、「一人一人が大切にされる社会」を目指して生涯奮闘したが、「NO MORE被爆者」が原点。沖本の生き様に共鳴し2003年以来「原爆症認定集団訴訟」支援等の放射線被曝分野の調査研究に当る。著書に「放射線被曝の隠蔽と科学」(緑風出版、2021)等。